

ダンゴムシを丸くするとカルシウムが不足して体が弱くなります。
「ダンゴムシの足って何本?」と子どもに聞かれたとき、「たくさん」とごまかしていませんか?実は、答えは「成長の段階によって違う」という少し面白い話が隠れています。
大人のダンゴムシの足は、左右7本ずつ、合計14本です。体の胸部に7節あり、それぞれの節から左右1本ずつ足が生えています。これは一見多そうに感じますが、エビやカニも甲殻類仲間として同じような体の構造を持っています。
いっぽうで、生まれたばかりの赤ちゃんダンゴムシの足は12本しかありません。胸部の体節が1つ少ない状態で生まれてくるのです。この「足が12本の時期」のダンゴムシを専門用語で「マンカ(manca)」と呼びます。
つまり「14本が正解」という答えも「12本が正解」という答えも、どちらも間違いではないということです。成長段階で数が変わる、というのが正確な答えです。
足の数は以下のようにまとめられます。
| 成長段階 | 足の数 | 体節数(胸部) |
|---|---|---|
| 赤ちゃん(マンカ期) | 12本(6対) | 6節 |
| 成虫(大人) | 14本(7対) | 7節 |
これは近い仲間のワラジムシやフナムシ、ダイオウグソクムシにも共通している特徴です。「ダンゴムシ目(等脚類)」全体でこの12本→14本の変化が共通して見られます。意外と一般的な現象で、ダニも幼生時代は6本足、大人になると8本に増えます。
足が12本から14本に増える理由は「体節が増えるから」が基本です。
ダンゴムシの足が増えるのは、脱皮のタイミングです。脱皮を通じて体節が1つ増え、それに伴って足も左右1本ずつ、合計2本追加されます。これが「足の数が増える」という現象の正体です。
脱皮の仕方そのものも、他の生き物とはひと味違います。カブトムシやセミのように一気に全身の殻を脱ぐのではなく、ダンゴムシは体の後ろ半分を先に脱ぎ、数日たってから前半分を脱ぎます。この2段階の脱皮を「biphasic molting(バイフェイジック・モルティング)」とも呼びます。
前と後ろで脱皮のタイミングをずらすのには理由があります。脱皮直後の殻はとても柔らかく、外敵に対して無防備になります。もし全身を一気に脱いでしまうと、そのあいだ体全体がむき出しになってしまいます。前後に分けることで、常に体の半分は硬い殻で守られた状態を維持できるのです。
これは使えそうです。自然界の賢い生き残り戦略ですね。
脱皮のタイミングを見かけたときに、前半分と後半分で色が違うダンゴムシに出会うことがあります。これはちょうど「後半分は脱ぎ終わったけれど、前半分はまだ古い殻のまま」という状態です。もし見つけてもそっとしておいてあげてください。脱皮の最中は体がとても弱く、触ると脱皮に失敗してしまうことがあります。
また、脱皮したあとの殻はそのままにせず、自分で食べてしまいます。殻にはカルシウムやタンパク質が豊富に含まれており、次の脱皮のために貴重な栄養として再利用しているのです。この習性は他のダンゴムシが脱いだ殻を食べることにも及びます。無駄がない、とも言えますね。
ダンゴムシは生まれてから約1年かけて、7回前後の脱皮を繰り返しながら成虫になります。7回の脱皮のうち特定のタイミングで体節が追加され、足が12本から14本になるというわけです。
「ダンゴムシは昆虫だ」と思い込んでいる方は非常に多いのですが、これは大きな誤解です。昆虫の定義は「足が6本・体が頭・胸・腹の3部に分かれている」という点にあります。ダンゴムシの足は最大で14本もあるので、昆虫の定義にはまったく当てはまりません。
正確にはダンゴムシは「節足動物門 > 甲殻亜門 > 軟甲綱 > 等脚目 > ワラジムシ亜目」に分類されます。エビやカニと同じ甲殻類の仲間で、陸上生活に適応した珍しい存在です。甲殻類の多くは水中で暮らしていますが、ダンゴムシは陸上生活に完全に適応しています。これは等脚類の中でもきわめて特殊な進化といわれています。
足の数で生き物を比べると、以下のようになります。
足が14本もあることで、ダンゴムシは足を数本失っても安定して歩き続けられるというメリットがあります。これは命に直結する生存戦略で、敵に足をつかまれたとき、あえて足を自分から切り離して逃げることもできます。切り離した足は次の脱皮のときに再生することが多く、驚くべき回復力があります。
「昆虫だから足は6本」という知識は正しいですが、「庭で見る虫はみんな昆虫」と思っていると落とし穴があります。ダンゴムシやクモ、ムカデなどは昆虫ではないので、子どもに「ダンゴムシは昆虫じゃないよ」と教えてあげると喜ばれるはずです。
昆虫と甲殻類の違いが気になる方は、京都市青少年科学センターの解説ページが参考になります。
京都市青少年科学センター:ダンゴムシはエビやカニと同じ甲殻類の仲間という解説ページ
「ダンゴムシは益虫だから放っておいてもいい」と思っている方もいますが、数が増えすぎると話が変わってきます。これは正確には半分だけ正解です。
ダンゴムシは落ち葉や枯れた植物を分解して土に戻す「分解者」としての働きがあります。この点では確かに庭の土を豊かにしてくれる益虫といえます。しかし問題は、食欲旺盛なダンゴムシが有機物ならほぼ何でも食べてしまう点にあります。腐った葉だけでなく、発芽したばかりの柔らかい新芽や苗の茎まで食べてしまうのです。
コマツナ・キュウリ・ナスなど家庭菜園で育てる野菜の多くが、ダンゴムシの食害を受けやすいと報告されています。特に被害が集中するのは「種まき直後から発芽して間もない時期」です。この時期の苗は茎が細く柔らかいため、ダンゴムシに一晩で根元から食いちぎられることがあります。
大量発生の目安として注意が必要です。
このような状況が続くなら、増えすぎのサインです。一度に約100匹前後の赤ちゃんを産むダンゴムシは、条件がそろえば一気に数が増えます。湿った落ち葉が溜まる場所や、植木鉢の下に隠れ場所がある環境は特に大量発生しやすいです。
庭での被害を防ぐために、落ち葉や枯れ草をこまめに取り除いて隠れ場所を減らす、植木鉢の下に専用の台を置いて地面との隙間を作らないようにするといった環境整備が有効です。農薬を使わずに対処したい場合は、コーヒーかすや木酢液を土の表面に散布する方法も効果があります。ただし、完全に排除しようとするより「増えすぎないように管理する」くらいの考え方が土の健康のためにもよいでしょう。
家庭菜園でのダンゴムシ対策については、ダスキンの解説記事が詳しくまとめられています。
ダスキン:ダンゴムシが大量発生したときの植物への被害と対策まとめ
子どもがダンゴムシを拾ってきたとき、「気持ち悪い、捨ててきて」と言う前に、少し立ち止まってみてください。ダンゴムシは観察するほど面白い生き物で、知っておくと子どもへの説明がぐっとスムーズになる豆知識がたくさんあります。
まず触角に関する豆知識です。ダンゴムシの触角は「4本」あります。よく「2本」だと思われていますが、長い触角2本と、付け根のすぐそばに小さな触角が別に2本あります。長い触角は周囲の状況を感知し、短い触角は主に匂いを感知するためのものです。
次にオスとメスの見分け方です。ひっくり返して確認するのが確実ですが、簡単な目安として覚えておくと便利です。
また、ダンゴムシには「交替性転向反応」という面白い習性があります。右に曲がったら次は左、左に曲がったら次は右、というように方向を左右交互に変えながら進む習性です。この習性のおかげで、敵から逃げるときにUターンして追いかけてくる敵の前に戻ることなく、確実に遠くまで逃げられます。これを利用してダンゴムシ迷路を作るのが夏休みの自由研究として人気があり、厚紙とスポンジだけで簡単に作れます。
ダンゴムシの飼育はとても手間がかからないのもポイントです。100円ショップで買えるプラケースに腐葉土を3〜5cm敷いて、枯れ葉と水を入れるだけで十分な環境ができます。エサはキャベツやニンジンなどの野菜くずでOKで、金魚の餌を少し加えるとカルシウムやタンパク質の補給になります。霧吹きで週に数回土を湿らせることを忘れなければ、3〜5年生きることもある長生きなペットになります。
飼育の際に気をつけたいことは以下の通りです。
ダンゴムシは命の不思議を間近で観察できる生き物です。足が12本から14本に増える脱皮の瞬間を観察できれば、それだけで立派な自由研究になります。「虫は苦手」というお母さんにとっても、ダンゴムシは臭いも鳴き声もなく、手を洗えば触ることもそれほど苦ではない、育てやすい小さな生き物です。
子どもの知的好奇心に応えるために、ダンゴムシの秘密を親子で一緒に探ってみてください。
ダンゴムシの飼育の詳しいポイントについては、昆虫芸人・堀川ランプさん監修のるるぶKidsの記事も読みやすくまとまっています。