

チモシーをケージに入れてあるだけで、うさぎは食べ過ぎてしまいます。
うさぎを飼い始めると、多くの方がペットショップや飼育本で「チモシーは食べ放題で与えてください」という言葉を目にします。これは正しい基本方針なのですが、「置いてあるから大丈夫」と安心してしまうのは少し危険です。
大切なのは、置いてある量ではなく「実際に食べている量」です。うさぎは遊び半分に牧草を引っ張り出して床に落としてしまうことがよくあります。気づいたらケージの下に大量のチモシーが溜まっていた、という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
専門家によると、体重1kgのうさぎが1日に食べることが望ましいチモシーの量は、最低15g以上、理想としては100g以上とされています。100gというと非常に多く感じますが、直径20cm程度の片手鍋に山盛りにした量がおよそ100gです。軽くてかさばるのがチモシーの特徴なので、意外なほどのボリュームになります。
体重別の目安をまとめると以下のとおりです。
| 体重 | 最低ライン(体重×1.5%) | 理想的な量 |
|------|------------------------|-----------|
| 1.0kg | 15g | 100g以上 |
| 1.5kg | 22g | 100g以上 |
| 2.0kg | 30g | 100g以上 |
| 3.0kg | 45g | 100g以上 |
大型種でも小型種でも、理想は100g以上とされています。体重が重くなれば最低ラインも上がりますが、上限はありません。チモシー(イネ科牧草)は食べ過ぎによる健康被害がほぼないため、積極的に与えて問題ありません。
つまり「食べられるだけ与える」が基本です。ただし「置いてあるだけで食べているか確認しない」は問題です。毎日どのくらい消費されているかを目で見て確認する習慣をつけましょう。
参考情報として、うさぎ牧草の専門農家・うさぎ畑が公開している量の目安ページが非常に分かりやすくまとめられています。
うさぎ畑:牧草を食べる量の目安と100gがどれくらいの量か解説
https://rabbitfarm.jp/bokuso/?p=458
「うちの子はちゃんと食べているかな?」と思ったとき、最も手軽に確認できるのがうんちの状態チェックです。これはとても実用的な方法で、動物病院やうさぎ専門店でも推奨されています。
健康的なチモシーを十分に食べているうさぎのうんちには、次のような特徴があります。
- 🟤 大きさ:直径約1cm(500円玉の縁の太さ程度)
- 🟤 形:少しつぶれた球体で、繊維がよく絡まっている
- 🟤 色:濃い茶色〜こげ茶色
- 🟤 数:1日100〜300個程度
反対に、チモシーが足りていないときのうんちのサインは以下のとおりです。
- ⚠️ 小さくてコロコロしている
- ⚠️ 形が不揃いでいびつ
- ⚠️ 毛が連なった数珠状のうんちが出る
- ⚠️ 1日の個数が明らかに少ない
うんちが小さいということですね。これは腸の動きが十分でない可能性のある、見逃せないサインです。
特に注意したいのが「つながったうんち」です。毛が絡まって連なって出てくる状態は、腸内の繊維質が不足しているときに起きやすい現象です。放置すると胃腸うっ滞(うっ滞)のリスクが高まるため、見つけたらすぐにチモシーの量と質を見直しましょう。
うんちチェックは朝の掃除のタイミングが最適です。前日夜から朝までの間に出たうんちを観察することで、食事の状態を把握しやすくなります。
うさぎのうっ滞の初期症状と対処法についての詳細。
チモシーには「1番刈り」「2番刈り」「3番刈り」という種類があり、これは刈り取りの順番を指しています。同じチモシーに見えても、それぞれ特徴がかなり異なります。
1番刈り(ファーストカット)は、その年の最初の収穫で、春〜初夏に刈り取られます。茎が太くて硬く、繊維質が豊富なのが最大の特徴です。硬い茎をしっかり噛むことで歯が自然に削られ、歯のトラブルを予防することができます。健康な成うさぎへのメインの牧草として最適とされており、専門家の多くが「まずは1番刈りから与えてみてください」と推奨しています。
2番刈り(セカンドカット)は、1番刈りの後に再び伸びたものを収穫します。葉の割合が多く、茎が細くて柔らかいのが特徴です。1番刈りを嫌がるうさぎや、高齢で噛む力が弱くなったうさぎに向いています。ただし、繊維量は1番刈りより少ないため、健康な成うさぎが2番刈りだけを食べ続けると歯の摩耗が不十分になるリスクがあります。2番刈りは補助的に使うのが原則です。
3番刈り(サードカット)は最も柔らかく、嗜好性(食いつき)が高いのが特徴ですが、繊維量はさらに少なくなります。食欲が落ちたとき、食いつきを上げたいときに少量混ぜる使い方が向いています。
さらに「シングルプレス」「ダブルプレス」という加工の違いもあります。
| 種類 | 硬さ | 特徴 |
|------|------|------|
| シングルプレス | 硬め | 茎の形が残る。歯に良い刺激。クズが少ない |
| ダブルプレス | 柔らかめ | 茎がつぶれて食べやすい。シニアや偏食気味の子に |
硬い牧草が苦手な子の場合、まずダブルプレスを試してみると食いつきが変わることがあります。これは使えそうです。
1番刈りと2番刈りの特徴比較について詳しく解説している動物病院の記事。
https://www.namiki-vet.com/2021/02/13/ウサギ小話19話-牧草の種類2/
チモシーの摂取量が少ない状態が続くと、うさぎの体には深刻なリスクが生じます。特に多く報告されているのが「不正咬合」と「胃腸うっ滞」の2つです。
不正咬合は、歯が正しい方向に削れずに伸び続け、噛み合わせが崩れる病気です。うさぎの歯は一生伸び続ける「常生歯」という構造になっているため、硬いチモシーをしっかり噛むことで常に削れていく必要があります。牧草を食べる量が減ると噛む回数が少なくなり、歯が十分に削れません。その結果、歯が伸びて口の中を傷つけたり、食欲不振につながったりすることがあります。
不正咬合の治療費は、切歯(前歯)の処置で1回あたり2,000〜5,000円程度、臼歯(奥歯)の処置で麻酔が必要な場合は1回あたり1万〜数万円かかることもあります。さらに臼歯の不正咬合は繰り返すことが多く、生涯にわたって定期的な治療が必要になるケースも少なくありません。痛いですね。
チモシーを毎日しっかり食べてもらうことが、この高額な治療費を防ぐ最大の予防策です。
胃腸うっ滞は、腸の動きが止まってしまう非常に危険な状態です。うさぎの胃腸は常に動き続けていなければならない特性を持っており、繊維不足になると腸の動きが滞ります。半日以上うんちが出ない、ぐったりして動かない、ごはんに興味を示さないなどの症状が見られたら、すぐに動物病院を受診してください。緊急治療では数万円の費用がかかることもあります。
うさぎの不正咬合の原因と治療に関する詳しい解説。
https://pet-ah.org/case-studies/rabbit/malocclusion
「チモシーを入れているのに食べてくれない」というのは、うさぎ飼い初心者がよく直面する悩みです。実はこの問題、多くの場合は牧草そのものへの拒否反応ではなく、与え方や環境の工夫で改善できます。
ペレットとの与えるタイミングをずらすのは、最もすぐに試せる対策です。ペレットとチモシーを同時に出すと、おいしいペレットを先に食べてしまい、お腹がいっぱいになったあとにチモシーが残ります。その間にチモシーの香りが飛んで、食べる気が起きない状態になるのが典型的なパターンです。ペレットを与えてから2〜3時間後にチモシーを交換する、またはペレット前にチモシーだけを食べる時間を作る、と食べる量が増えやすくなります。
チモシーの鮮度と保管方法を見直すことも重要です。チモシーは開封後、湿気や時間の経過とともに香りが弱まります。うさぎは香りに非常に敏感で、同じ銘柄のチモシーでも「ロット(生産ロット)が変わった」だけで食べなくなることがあるほどです。購入したら密閉袋に移し、日の当たらない涼しい場所で保管してください。大袋をまとめ買いしている場合は、3ヶ月以内に食べ切れる量を購入するのが目安です。
複数の種類を試してみることも、食べる量を増やすうえで効果的です。1番刈りが硬くて嫌がる子には、1番刈りのダブルプレスや2番刈りを少量混ぜてみる。チモシーそのものが苦手な場合は、オーツヘイやイタリアンライグラスといった別のイネ科牧草を合わせてみる。牧草入れの位置を変えてみる(トイレの近く、水の近くなど)のも、実は意外と効果があります。
乾燥野菜やハーブを「ふりかけ」として活用するのも一つの手です。チモシーに乾燥パセリや乾燥コリアンダーなどを少量混ぜると、香りが加わって食いつきが変わることがあります。ただし「おやつ」の量が増えると本末転倒になるため、ほんの少量に留めることが条件です。
アニコム損保が動物ライターと共同でまとめた、チモシーを食べないときの対策まとめ。
https://www.anicom-sompo.co.jp/usagi/4494.html