

CHUMSのロゴはペンギンではなく、日本で絶滅危惧種に指定されている野鳥です。
アカアシカツオドリ(学名:Sula sula)は、カツオドリ目カツオドリ科に属する大型の海鳥です。全長は約64〜76cmで、翼を広げると約143cmにもなります。これはA4用紙を横に並べた場合、約10枚分に相当する大きさです。カラスよりひと回り以上大きい体格を持ちながら、カツオドリの仲間の中では最も小さい種でもあります。
全身は白色の羽毛で覆われており、翼の先端部分だけが黒くなっています。顔には羽毛がなく赤い皮膚が露出し、目の周りは青みがかった灰色をしています。そして何より目を引くのが、その名のとおり鮮やかな赤色の足です。くちばしは淡青色から青紫色で、全体的に独特の色彩を持つ美しい海鳥といえます。
日本では環境省のレッドリストで絶滅危惧IB類(EN)に指定されています。生息地は主にインド洋・大西洋・太平洋の熱帯および亜熱帯の海域で、日本国内では南西諸島・硫黄列島・小笠原諸島に少数が飛来します。北海道の利尻島や茨城県内陸部での保護記録もあるほど、まれに広範囲に姿を現すことがある海鳥です。
| 項目 | 詳細 |
|------|------|
| 学名 | Sula sula |
| 英名 | Red-footed Booby |
| 全長 | 約64〜76cm |
| 翼開長 | 約143cm |
| 体重 | 約0.94〜1.07kg |
| 保全状況(日本) | 絶滅危惧IB類(EN) |
| 寿命 | 野生で20年以上 |
なお、亜種は3種が知られており、日本に飛来するのは主に亜種アカアシカツオドリ(Sula sula rubripes)です。この亜種はインド洋と太平洋中部・西部の島々で繁殖します。日本南部や台湾には主に6〜10月の夏鳥として飛来することが多いことが記録されています。
参考:アカアシカツオドリの分類・分布・生態の詳細情報(Wikipedia)
アカアシカツオドリ - Wikipedia
2017年6月、東京都が小笠原諸島の南硫黄島において、アカアシカツオドリの集団繁殖を国内で初めて確認したと発表しました。これは日本の野鳥観察史において非常に重要な出来事です。これが重大な発見といわれる理由はシンプルで、それまで日本国内では集団営巣地の存在が確認されていなかったからです。
南硫黄島は東京から約1,200km南に位置する無人島で、自然環境保全地域に指定されており一般人の立入は制限されています。人が近づけない崖の上の巣を、小型無人機(ドローン)を使って空撮したことで、少なくとも4巣以上の営巣が確認されました。これは太平洋西部における本種の集団営巣地の最北端の記録ともなっています。
つまり最北端の繁殖地が日本にあるということです。
この南硫黄島での繁殖確認以前にも、八重山列島の仲御神島(なかのうがんじま)では1975年と1977年に繁殖が記録されています。同島は1972年に「仲の神島海鳥繁殖地」として国の天然記念物に指定されており、毎年若齢鳥を中心に数羽〜10羽程度が飛来します。ただし天然記念物の指定はセグロアジサシなど他の海鳥の繁殖地としてであり、アカアシカツオドリの繁殖例は指定後に確認されたものです。
繁殖地を守る上で深刻な課題もあります。ドブネズミやクマネズミなどのネズミ類が繁殖地に侵入した場合、卵への捕食被害が発生するリスクがあります。特に木登りが得意なクマネズミの侵入は個体群に深刻な影響を与えると考えられており、現在も南硫黄島へのネズミ侵入監視が最重要の保護課題となっています。
参考:南硫黄島でのアカアシカツオドリ繁殖確認の詳細(環境省関連・海鳥保護サイト)
アカアシカツオドリ|絶滅危惧IB類(EN) - アホウドリの日
アカアシカツオドリの最大の特徴は、名前の由来にもなった鮮やかな赤い足です。この赤い足が持つ役割については、求愛行動で相手を引きつけるためという説が最も有力とされています。赤い足は健康状態のバロメーターでもあり、色が鮮やかなほど状態の良い個体として認識されると考えられています。また足には血管が豊富に走っており、卵を温めるための体熱を伝える機能も担っています。親鳥は足の上に卵を乗せて直接体温を伝えながら抱卵するのです。
食性は動物食で、主に魚類や軟体動物(イカなど)を食べます。海中に飛び込んで獲物を捕らえるスタイルが特徴で、なんと約30メートルの深さまで潜ることができます。上空から鋭い目で水中の魚を発見すると、槍のように垂直に急降下して海中に突入します。このダイブの精度を高めるために、鼻孔は開閉可能な構造になっており、水中に入る瞬間に完全に閉じることができます。
空中でのスピードも驚異的です。エサを求めて最長約150kmもの距離を飛行することができ、海面を跳躍しているトビウオを空中でキャッチすることもあります。夜間は海中で青白く光るイカの群れに向かって飛び込むこともあるという、なかなかたくましい一面も持っています。
繁殖の特徴も面白いポイントです。アカアシカツオドリは周年繁殖(一年中繁殖できる)する種で、メスは15カ月ごとに卵を1個産みます。卵は青色無斑で大きさは約6〜7cm。雌雄が交代で抱卵し、抱卵期間は42〜46日です。ヒナは孵化から100〜144日で巣立ちますが、巣立ち後も数カ月は親鳥から食物を与えられます。
繁殖率が低いのが正直なところです。
しかし寿命が野生で20年以上と長く、繁殖率の低さをその長命さで補っている生存戦略をとっています。生後2〜3年で性成熟を迎えます。また、他のカツオドリ仲間が岩場や地面に巣を作るのに対して、アカアシカツオドリは低木の樹上に枯れ枝を組み合わせた巣を作るという独自のスタイルを持っています。これはカツオドリ科の中で珍しい習性です。
参考:アカアシカツオドリの生態詳細(ナショナルジオグラフィック日本版)
アカアシカツオドリを日本で観察するためのメインルートは、東京・竹芝桟橋から出港するおがさわら丸での航路観察です。東京から父島まで約1,000kmを24時間かけて結ぶこの航路は、海鳥観察の絶好のフィールドとして多くのバードウォッチャーに親しまれています。
ただし、おがさわら丸の通常航路でアカアシカツオドリが必ず見られるかというと…そうはいきません。カツオドリ(Brown Booby)は船についてくることが多いですが、アカアシカツオドリは出会えたらラッキーな存在です。見られたとしても1〜2羽のことが多く、確認できずに終わる乗船者も少なくありません。
確実に多数のアカアシカツオドリを観察できるのが、小笠原海運が毎年実施する「硫黄三島クルーズ」です。南硫黄島付近はアカアシカツオドリの繁殖地に近く、多数の個体が船についてくることで知られており、航路バードウォッチャーの間では「アカアシカツオドリのパラダイス」と呼ばれています。このクルーズは年1回の運航のため、参加できれば非常に貴重な体験となります。
🐦 アカアシカツオドリを観察できる主な場所(日本国内)
- 小笠原航路(おがさわら丸):夏季(6〜10月)を中心に飛来確認あり
- 硫黄三島クルーズ:南硫黄島付近でまとまった数を観察可能
- 八重山列島・仲御神島周辺:毎年若齢鳥の飛来が記録されている
- 父島・母島周辺の洋上:ホエールウォッチングボートから目撃例あり
観察時のポイントも知っておくと役立ちます。飛んでいるときは足の赤色がわかりにくいため、船のマストや岸壁に止まった個体を見るほうが赤い足を確認しやすいです。若い個体は足の赤みが薄く、ピンクがかった色をしています。成鳥の白色型は全身白く翼先が黒いため、他のカツオドリより識別しやすい点は初心者にも助かるポイントです。
参考:おがさわら丸での海鳥観察の詳細情報
おがさわら丸24時間の過ごし方 バードウォッチャー編 - 小笠原村観光局
アウトドアブランド「CHUMS(チャムス)」のロゴをご覧になったことはあるでしょうか?黒白の愛らしいフォルムをした鳥のイラストで、多くの方が「ペンギンかな」と思っているかもしれません。しかし実は、このロゴのモデルこそがアカアシカツオドリなのです。CHUMSのタグには「ペンギンと呼ばないで!」という文言が書かれているほどで、ブランド側も「ペンギン誤認」を把握しているようです。
CHUMSはアカアシカツオドリを英名の通称「ブービーバード(Booby Bird)」と呼んでいます。この「Booby(ブービー)」という言葉は、南米の漁師が「bobo(間抜け)」と呼んでいたことに由来します。人を恐れず船に近づいてきたり、止まって動かなかったりする様子が「間抜け」に見えたからだといわれています。その人懐っこさがむしろ愛嬌として受け入れられ、ブランドのマスコットとなったわけです。
CHUMSが誕生したのはアメリカで、ガラパゴス諸島周辺にも生息するアカアシカツオドリと縁が深い海洋文化圏のブランドです。日本でも大変人気が高く、アウトドアシーンで頻繁に目にするロゴです。
このロゴの鳥を知ると、野鳥観察の入り口が広がります。
2019年には小笠原海運創立50周年を記念して、CHUMSとおがさわら丸のコラボ商品が登場しました。本物のアカアシカツオドリが観察できる小笠原航路の客船と、アカアシカツオドリをロゴに持つブランドのコラボレーションは、野鳥好きにとって「これ以上ないマッチング」として話題を呼びました。
🛍️ CHUMSの公式サイトにも、アカアシカツオドリについての説明ページ「WHO IS BOOBY」があります。お子さんと一緒にブランドロゴの意味を調べてみると、自然への興味を深めるきっかけになるかもしれません。
参考:CHUMSブランドとアカアシカツオドリの関係について
CHUMS(チャムス)公式サイト
アカアシカツオドリは、環境省のレッドリストで絶滅危惧IB類(EN)に分類されています。絶滅危惧IB類とは「絶滅の危険性が増大している種」のうち、特に危険度が高い段階を指します。絶滅危惧の区分はIA類(ごく近い将来に絶滅の危険性が極めて高い)、IB類(IA類ほどではないが将来に絶滅の危険性が高い)、II類の順に並んでおり、アカアシカツオドリはその2番目に深刻なカテゴリに位置します。
繁殖地保護が最優先課題です。
日本国内での主な脅威は、繁殖地へのネズミ(クマネズミ・ドブネズミ)の侵入です。木の上に巣を作るアカアシカツオドリの卵や雛は、木登りが得意なクマネズミにとって格好の標的となります。南硫黄島は現在、自然環境保全法のもとで全域が立入制限地区に指定されており、人的な管理によって繁殖地の保全が図られています。また小笠原諸島全体は2011年にユネスコの世界自然遺産に登録されており、国際的な注目も集まっています。
世界的な視点では、沿岸開発による生息地の喪失と漁業による食料源の奪取が主な脅威として指摘されています。卵も含めて食用とされることがあり、かつては乱獲により生息数が減少した歴史もあります。
私たちが直接できることとして、まず考えられるのは野鳥の情報を正確に広めることです。アカアシカツオドリが日本に生息する絶滅危惧種であることを知っている人は非常に少なく、「CHUMSのロゴの鳥」という身近な切り口から興味を持ってもらえれば、自然保護への意識が一歩広がります。
野鳥観察を楽しむ際には、日本野鳥の会が定めるマナーを守ることも大切です。繁殖期(6〜10月)には特に巣に近づきすぎず、双眼鏡や望遠鏡を使って距離を保って観察しましょう。双眼鏡は8〜10倍のものが海鳥観察には扱いやすく、船上での使用にも適しています。
📌 野鳥観察の基本マナーや観察ポイントは、日本野鳥の会の公式サイトで確認できます。
参考:日本野鳥の会による野鳥保護活動・マナーの情報
公益財団法人 日本野鳥の会 公式サイト
参考:環境省によるアカアシカツオドリの絶滅危惧種情報
環境省 生物多様性センター - 絶滅危惧種情報