ヤスデ虫の漢字は馬陸、語源と生態の豆知識

ヤスデ虫の漢字は馬陸、語源と生態の豆知識

ヤスデ虫の漢字「馬陸」の由来と生態を知れば怖くない

ヤスデを殺虫剤で全滅させると、庭の土壌が2〜3年で固くなり植物が育ちにくくなります。


この記事でわかること
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ヤスデの漢字「馬陸」の由来

「ヤスデ」という名前は「八十手(やそで)」に由来し、漢字では中国名の「馬陸(ばりく)」が使われています。その意外な由来と読み方をわかりやすく解説します。

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ムカデとの見分け方・違い

同じ多足類でも毒性・動きのスピード・脚の付き方がまったく違います。見分けポイントを知っておくと、家で見かけたときに冷静に対処できます。

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家への侵入を防ぐ実践対策

ヤスデが好む環境を取り除くことが最大の予防策です。落ち葉の撤去・消石灰・木酢液など、今日からできる具体的な方法を紹介します。


ヤスデ虫の漢字「馬陸」の読み方と由来


ヤスデは漢字で「馬陸」と書きます。読み方は「やすで」で、中国語の漢名「馬陸(ばりく)」がそのまま日本に伝わったものです。「馬陸」という字面からは虫のイメージがまったく湧かないため、初めて見ると多くの人が首をかしげます。


この「馬陸」という字が使われるようになった理由は、ヤスデが歩くときのあの独特の動きにあります。何十本もの脚が波打つように順番に動く様子が、「馬の群れが陸を走っている」ように見えたことから「馬陸」の字が当てられたという説が有力です。千葉市中央博物館も、この由来をX(旧Twitter)で紹介しています。


つまり「馬陸」は見た目の漢字です。


一方、「ヤスデ」というカタカナ・ひらがなの名前の語源はまったく別のところにあります。語源由来辞典によれば、「ヤスデ」は「八十手(やそで)」または「弥十手(やそで)」という言葉が訛ったものとされています。「八十(やそ)」は古語で「たくさん」を意味し、「手(で)」は「脚・手足」を指す言葉です。つまり「ヤスデ」という名前そのものが「たくさん脚がある虫」という意味を持っているわけです。


意外ですね。


ムカデの「百足(むかで)」と同じ発想で、脚の多さを名前に込めた命名法です。古くはヤスデのことを「アマビコ(雨彦)」「ゼニムシ(銭虫)」「エンザムシ(円座虫)」などとも呼んでいました。「円座虫」は、驚いたときに体を丸めてエビのような形になる習性からきた名前です。漢字一つをとっても、ヤスデにはこれほど多くの呼び名と歴史があります。


参考(ヤスデの名前の語源・由来について詳しく解説)。
ヤスデ/馬陸/やすで ー 語源由来辞典


ヤスデ虫の生態と世界・日本の種類数

ヤスデは節足動物門・多足亜門・ヤスデ綱(Diplopoda)に分類される生き物です。英語では「Millipede(ミリピード)」と呼ばれ、ラテン語の「千本の脚」を意味する言葉が語源になっています。


世界に約1万種が存在し、日本国内だけでも289種が確認されています(日本分類学連合調べ)。289種というのは、東京都の区の数の約13倍にあたるほど多様です。その中で家周辺でよく見かけるのは「ヤケヤスデ」という種で、体長は2〜3cm程度、褐色の細長い体が特徴です。


ヤスデの体の最大の特徴は「1節に2対(4本)の脚がある」ことです。これが学名「Diplopoda(倍脚類)」の由来でもあります。ムカデは1節に1対(2本)の脚しか持ちませんが、ヤスデはその倍。そのため同じ体長でもヤスデのほうが脚の総数が多くなります。


これは使えそうです。


2021年にオーストラリアで新種として記載されたヤスデの一種(*Eumillipes persephone*)では、なんと1306本もの脚が確認され、現在知られる動物の中で最多の脚を持つ生物となりました(ナショナルジオグラフィック・2021年12月)。脚の数は固定ではなく、脱皮のたびに体節が増えるため、成長するほど増えていく仕組みになっています。


日本最大種は沖縄の「ヤエヤママルヤスデ」で体長約7cm(文庫本の背表紙くらいの幅)。世界最大種のアフリカオオヤスデは最大30cmにも達します。ヤスデの世界はスケールが大きいですね。


参考(ヤスデの分類・種類・脚数について)。
ヤスデ ー Wikipedia


ヤスデ虫とムカデの違い:見分け方のポイント3つ

「家でムカデが出た!」と思ったら、実はヤスデだったというケースは少なくありません。両者は見た目がよく似ていますが、危険度がまったく異なるため、正しく見分けることが大切です。


| 比較項目 | ヤスデ(馬陸) | ムカデ(百足) |
|---|---|---|
| 脚の付き方 | 1節に2対(4本) | 1節に1対(2本) |
| 動きの速さ | ゆっくり | 素早い |
| 毒性 | 噛まない(体液注意) | 毒牙あり・咬傷あり |
| 食性 | 草食(腐葉土・落ち葉) | 肉食(昆虫など) |
| 危険に遭遇したとき | 丸まって防御 | 噛みついて攻撃 |


見分け方は3つ覚えればOKです。


① 脚の生え方を見る:ヤスデは1節から左右に2本ずつ(計4本)脚が出ています。ムカデは1節から左右1本ずつ(計2本)。脚の生え方が「倍」かどうかで判断できます。


② 動きのスピードを見る:ヤスデはのんびりと這い進みます。ムカデは驚くほど素早く走ります。近づいたときにゆっくり動けばほぼヤスデ、猛スピードで逃げたらムカデと思って間違いありません。


③ 反応を見る:ヤスデは危険を感じるとその場で体を丸め、エビのような形になって身を守ります。ムカデは逃げるか攻撃に転じます。丸まるならヤスデが原則です。


ムカデはヒトを噛む危険があり、咬まれると激痛と腫れが数時間続くことがあります。一方、ヤスデは噛みませんが、強い刺激を与えると「キノン・シアン化合物・ヨード・ペンズアルデヒド」などを含む臭液を分泌します。MSDマニュアル家庭版によると、この分泌液が皮膚に触れると熱感・かゆみを引き起こし、目に入ると結膜・角膜が赤く腫れることがあるとされています。触れてしまったときは、石鹸と流水でしっかり洗い流すことが基本です。


参考(ムカデ・ヤスデの医学的リスクについて)。
ムカデやヤスデによる咬み傷 ー MSDマニュアル家庭版


ヤスデ虫は実は益虫?生態系での役割を知っておこう

庭や家周辺でヤスデを見かけると、反射的に駆除したくなる気持ちはよくわかります。しかし、闇雲に全滅させてしまうと、庭の土壌環境が悪化する可能性があります。


ヤスデは「腐食連鎖の分解者」と呼ばれる生き物で、落ち葉・枯れ枝・腐葉土についた菌類を食べ、消化・排出することで有機物を土に戻す働きをしています。この働きによって土壌が団粒構造化し、水はけと保水性のバランスが整った「植物が育ちやすい土」が作られます。ヤスデは土壌形成の担い手なのです。


つまり、庭の益虫という一面があります。


ただし「益虫だからいくらでも増えてよい」ということにはなりません。大量発生すると、家への侵入・悪臭の発生・植物への食害(発芽したばかりの苗を食べることがある)といった問題が起きることがあります。バランスが条件です。


また、ヤスデの活動時期は春(4〜7月)と秋(9〜10月)の2回あり、特に梅雨時は湿気が増えて大発生しやすくなります。「馬陸(ヤスデ)」が「夏の季語」として使われるほど、暑く湿った時期に活発になる虫です。日本に生息するヤスデは夜行性のものが多く、昼間はあまり見かけなくても夜間に活発に動いています。夜にゴミ捨てや庭の水やりをしていて突然遭遇するのはそのためです。


なお、ヤスデの中で特に有名なのが「キシャヤスデ」です。この種は幼虫のまま7年間を地中で過ごし、8年目にようやく成虫となって地表に大量出現します。中部地方の山間部・長野県の小海線沿線では、線路を埋め尽くすほどの大発生が起きたことがあり、ヒカれた個体の体液で車輪が滑って列車が運休するという事態にまで発展しました(1976年昭和51年の事例)。これが「キシャヤスデ」という名前の由来です。つまり「汽車」と「ヤスデ」を合わせた名前なのです。


参考(ヤスデの益虫としての役割と生態について)。
日本にいるヤスデの種類は?特徴や生態、駆除方法を解説 ー フマキラー


ヤスデ虫の家への侵入を防ぐ対策と正しい駆除方法

ヤスデが家の中に入り込む原因のほとんどは、家の周囲の「ヤスデにとって住みやすい環境」です。この環境を整えることが、薬剤を使う前の最優先対策です。


原因として多いのは次の4つです。


- 庭や玄関周りに落ち葉・枯れ枝・プランターの受け皿が放置されている
- 家の基礎部分や外壁に数ミリのひび割れや隙間がある
- 換気口・排水口・ドレンホースが湿気を帯びている
- 雨が続いたあとに地中が水浸しになり、逃げ場を失ったヤスデが外壁を上ってくる


雨の日に急に増えるのはこのためです。


まず取り組むべき対策は「環境整備」です。落ち葉や腐葉土を定期的に取り除き、プランターは受け皿に水が溜まらないようにします。庭の水はけをよくして、ジメジメした場所をなくすことが大切です。日当たりと風通しを確保するだけで、ヤスデの発生数は大幅に減らせます。


次の対策として「消石灰の散布」があります。消石灰の成分である水酸化カルシウムは強アルカリ性を示し、ヤスデが近づきにくくなる効果があります。ホームセンターの園芸コーナーで1袋500〜800円程度で購入でき、家の基礎まわりに一周まいておくだけで効果が期待できます。ただし雨が降ると流れてしまうため、定期的な補充が必要です。


木酢液も選択肢の一つです。木炭を作るときに発生する液体で、独特の燻製臭がヤスデの忌避に使われています。玄関・窓サッシ・排水口周りに薄めて散布するとよいでしょう。小さなお子さんやペットがいる家庭でも比較的使いやすい点がメリットです。


それでも侵入が続く場合は、殺虫剤の出番です。フマキラーの「カダン お庭の虫キラーダブルジェット」のように、200種以上の害虫に対応するスプレータイプの製品が手軽で効果的です。虫の通り道になりやすい場所(玄関ドア周り・外壁の基礎部分・植栽の根元など)にあらかじめ散布しておくと、約1カ月間の予防効果が期待できます(雨や水がかからない条件下)。


駆除よりも「寄せ付けない」が基本です。


なお、家の中で1匹見つけた場合は、素手で触れずに厚手のゴム手袋をつけてから処理するか、殺虫スプレーを使いましょう。ティッシュで直接つまんで捨てようとすると、刺激で分泌液が出てかぶれの原因になることがあります。つぶさずに取り除くことが重要で、もしも皮膚に液体が付着した場合はすぐに石鹸と水で洗い流してください。


参考(ヤスデの家への侵入対策と駆除方法について)。
ヤスデが家の中に…!ヤスデを家に入れないための対策 ー ダスキン


ヤスデ虫に関するよくある疑問Q&A【独自まとめ】

ヤスデについてインターネットで検索されることが多い疑問を集め、まとめてお答えします。日常で気になる場面別に整理しましたので、必要なところだけ確認してください。


Q1. ヤスデは昆虫ですか?


ヤスデは昆虫ではありません。昆虫は脚が6本の「六脚類」ですが、ヤスデは「多足類」に分類される節足動物です。ダンゴムシと同じく、昆虫とは別のグループです。昆虫ではないが原則です。


Q2. ヤスデが大量発生する時期はいつですか?


主に梅雨時(5〜7月)と秋雨の時期(9〜10月)に発生が多くなります。特に長雨の翌日や雨上がりの夜間に集中して目につくケースが多いです。雨上がり後の点検が重要です。


Q3. ヤスデを家に入れないためにできる一番手軽な対策は?


玄関・窓まわりの落ち葉を取り除き、プランターの受け皿の水を定期的に捨てることです。これだけで侵入の「入口」と「誘因」の両方を減らせます。手軽にできる対策ですね。


Q4. 触ってしまった場合、病院に行くべきですか?


皮膚についた分泌液を石鹸と水で洗い流し、かゆみや赤みが続く場合は市販のステロイド外用薬(ヒドロコルチゾン配合のもの)を塗ることで対応できるケースがほとんどです。目に入った場合はすぐに流水で洗い流し、症状が続くようなら眼科または皮膚科を受診してください。MSDマニュアルでも、分泌液への対処として流水での洗浄とステロイドクリームの使用が推奨されています。目に入った場合には注意が必要です。


Q5. ヤスデとダンゴムシはどう違う?


ダンゴムシは「等脚目(甲殻類)」に属する生き物で、エビやカニの仲間です。脚の数は14本(7対)で、外骨格が板状になっていて丸まります。一方、ヤスデは多足類で脚の数が数十〜数百本もあります。どちらも湿った場所を好みますが、まったく別の生き物です。分類がまったく違うということですね。




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