スズメノテッポウの除草剤は麦作で選び方が変わる

スズメノテッポウの除草剤は麦作で選び方が変わる

スズメノテッポウに効く除草剤を麦作で正しく選ぶ方法

毎年同じ除草剤を使っているのに、スズメノテッポウが減らない。


📌 この記事の3つのポイント
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スズメノテッポウは麦作最大の強害雑草

全国の麦作付面積の約19%(約5万ha)に発生。九州では麦作付面積の65%で確認されており、放置すると大幅な減収につながります。

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「除草剤抵抗性」が全国に拡大中

ハーモニーDF(SU剤)を連年使用すると抵抗性を獲得したスズメノテッポウが出現します。効かなくなったら農薬ローテーションと耕種的防除の組み合わせが必須です。

土壌処理剤+茎葉処理剤の体系防除が基本

播種後すぐの土壌処理剤と生育期の茎葉処理剤を組み合わせることで、発生初期から終期まで確実にカバーできます。


スズメノテッポウとはどんな雑草?麦作への影響を知る

スズメノテッポウ(学名:Alopecurus aequalis)は、東北以南の麦作圃場に広く発生するイネ科の一年草です。草丈は15〜40cm程度で、先が細長い穂を持ちます。名前の由来は、その細い穂の形が「雀の鉄砲」に見えることから来ています。


冬から春にかけて生育するため、麦の栽培期間とほぼ重なります。これが麦作においてスズメノテッポウが「強害雑草」と呼ばれる最大の理由です。


農林水産省の調査によると、麦生産ほ場で最も発生が多い雑草はスズメノテッポウで、全国の麦作付面積の約19%、約5万haのほ場で確認されています。特に九州では麦作付面積の約65%という高い割合で発生が報告されており、問題の深刻さがわかります。


スズメノテッポウが麦作に与える被害は主に3種類です。


- 生育競合による減収:麦と栄養・光を奪い合い、大幅な収量低下を引き起こします
- 収穫作業の妨げ:茎がしなやかなため、繁茂するとコンバインに絡みつき、作業効率が著しく落ちます
- 品質の低下:麦粒と混入することで、出荷品質に影響する場合があります


繁茂がひどい圃場では、農研機構のデータによると、スズメノテッポウの個体数が1㎡あたり数千〜2万個体に達するケースも確認されています。管理を放棄したり、翌年の麦の作付けを断念したりする農家が出るほどの深刻な問題です。


つまり、早期の発見と適切な防除が収益を守る鍵です。


参考:農研機構「除草剤抵抗性を持つ雑草スズメノテッポウの総合防除技術」
https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/karc/030870.html


スズメノテッポウに効く除草剤の種類と麦への使い方

スズメノテッポウの防除に使われる除草剤は、大きく「土壌処理剤」と「茎葉処理剤(生育期処理剤)」の2種類に分けられます。それぞれの特徴と使いどころを理解することが、防除を成功させる第一歩です。


土壌処理剤は、播種後に土壌表面に散布し、雑草が出芽してくるタイミングで効果を発揮するタイプです。スズメノテッポウに対して有効な主な土壌処理剤には以下のものがあります。


- トレファノサイド乳剤・粒剤(トリフルラリン):定評ある定番剤。ただし、一部の圃場では抵抗性を持った系統が出現しています
- ゴーゴーサン乳剤(ペンディメタリン):トリフルラリン剤と並んで広く使われる土壌処理剤
- ボクサー乳剤(プロスルホカルブ):抵抗性スズメノテッポウにも一定の効果が期待できます
- バンバン乳剤(エスプロカルブ・ジフルフェニカン):SU抵抗性スズメノテッポウへの効果が比較的高いと評価されています
- リベレーターフロアブル(ジフルフェニカン・フルフェナセット):麦播種後から麦3葉期まで使用でき、抵抗性系統にも優れた効果を発揮します


茎葉処理剤(生育期処理剤)は、雑草の葉に直接散布して枯らすタイプです。代表的なのがハーモニーDF(チフェンスルフロンメチル)で、スズメノテッポウの2〜3葉期までに散布すると高い効果が期待できます。


土壌処理剤が基本です。


ただし、土壌処理剤は散布にムラがあると効果が落ちます。土壌表面を均一に散布できるよう、播種後できるだけ早く、土壌が適度に湿っているタイミングで処理するのがポイントです。砕土が不十分だと薬剤が均一に土壌に行き渡らず、防除効果が大幅に落ちるので注意が必要です。


参考:BASF「小麦に有効な除草剤と防除の基本」
https://minorasu.basf.co.jp/80384


除草剤が効かない!スズメノテッポウの「抵抗性」問題を解説

「ハーモニーを毎年使っているのに、今年はスズメノテッポウがまったく減らない」という声は、近年の麦作農家にとって深刻な問題です。これはスズメノテッポウが特定の除草剤に対して「抵抗性」を獲得したためです。


除草剤抵抗性とは、本来はその薬剤で防除できていたものが、遺伝的な変異によって効かなくなることをいいます。スズメノテッポウには現在、次の3種類の抵抗性系統が確認されています。


- トリフルラリン剤(ジニトロアニリン系)に抵抗性を持つタイプ
- チフェンスルフロンメチル剤(SU系・ハーモニーDF)に抵抗性を持つタイプ
- 上記の両方に抵抗性を持つ「二重抵抗性」タイプ


意外ですね。


最も広く問題になっているのがSU剤(スルホニルウレア系除草剤)への抵抗性です。九州北部を中心に抵抗性スズメノテッポウが蔓延しており、ひどい圃場では1㎡あたり数千〜2万個体が発生し、収穫放棄に追い込まれるケースも報告されています。東海地方でも同様の被害が広がっており、全国的な問題になりつつあります。


抵抗性かどうかを見分けるポイントは、「正しいタイミングで除草剤を散布したのに、スズメノテッポウだけが生き残っている」という状況です。このような場合は、使用する除草剤の成分系統を変えることを検討する必要があります。


ハーモニーDF(SU剤)の連年使用は要注意です。製品ラベルにも「本剤を連年施用するとスズメノテッポウに効果が劣ることがある」と明記されており、有効な薬剤とのローテーション使用が推奨されています。


同じ成分系統を使い続けると抵抗性が広がります。これが基本の考え方です。


参考:農林水産省「除草剤抵抗性スズメノテッポウの総合防除」フォーラム資料
https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/boujyo/attach/pdf/161215_forum-9.pdf


抵抗性スズメノテッポウへの総合防除体系と麦播種のコツ

除草剤だけに頼る防除はもはや限界です。農研機構が開発した「総合防除技術」では、耕起方法と除草剤を組み合わせることで、抵抗性スズメノテッポウでも安定的に防除できることが実証されています。


この技術の核心は、「土の中の種子の量を減らしてから、薬剤を効かせる」という発想の転換にあります。具体的な手順は以下の通りです。


🔶 浅耕播種を活用した防除手順(九州・関東地域の目安)


| ステップ | 時期の目安 | 作業内容 |
|---|---|---|
| ① 浅耕起 | 水稲収穫後すぐ | 耕起深5cm程度でスズメノテッポウ種子を発芽させる |
| ② 非選択性除草剤散布 | 麦播種2〜3週間前 | 発芽したスズメノテッポウを枯らす(グリホサート等) |
| ③ 浅耕播種 | 11月下旬〜12月 | 深耕せず種子を表層に出さないまま麦を播種 |
| ④ 土壌処理剤散布 | 播種後すぐ | 新規土壌処理剤をできるだけ速やかに処理 |


ポイントは「下層の種子を表層に出さない」ことです。深く耕起すると、土中深くに眠っていた大量のスズメノテッポウ種子が表面に出てきて一斉に発芽してしまいます。深く耕すほど良いというのは、スズメノテッポウ対策では逆効果になります。


晩播(播種時期を遅らせること)も有効な対策です。九州では通常11月20日頃が麦の播種適期ですが、12月5〜10日ごろに遅らせるだけで、その間に発芽・除草できるスズメノテッポウの量が増え、圃場内の種子数を大幅に減らせます。


また、大豆との輪作も非常に効果的です。大豆を栽培した翌年の圃場では、水稲後に比べてスズメノテッポウの発生量が明らかに少なくなることが農研機構の試験で確認されています。発生の多い圃場には優先的に大豆を作付けするのがおすすめです。


農研機構のデータでは、総合防除技術の導入3年目には、スズメノテッポウの発生が問題にならない水準まで低下した圃場が確認されています。これは使えそうです。


参考:農研機構「麦の浅耕播種・不耕起播種を活用した除草剤抵抗性スズメノテッポウの総合防除マニュアル」
https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/files/foxtail_IM.pdf


スズメノテッポウ対策で家庭菜園の麦を守る/小規模畑での実践法

大規模農家でなく、家庭菜園や小規模な畑で麦を育てているケースでも、スズメノテッポウの被害は油断できません。除草剤の選択肢や使い方は、大規模農業と異なる部分もあるので注意が必要です。


まず知っておきたいのは、除草剤には「登録農薬」として使用できる作物・場所が定められているという点です。農薬取締法により、ラベルに記載された作物・使用場所以外での使用は違法となります。自宅の庭や小規模な菜園では、農業用に販売されている除草剤をそのまま使えない場合があります。


小規模な麦作・家庭菜園向けの現実的な対策としては、次のような方法が有効です。


- 手取り除草の徹底:スズメノテッポウは種子が熟す前(出穂前)に抜き取ることで、翌年以降の発生を大幅に抑えられます。1株の成熟種子数は数百粒にのぼるため、穂が出る前の除去が最も効率的です
- マルチング(黒マルチ)の活用:光を遮ることで発芽を抑制できます。特に麦の畝間への活用が効果的です
- 家庭菜園向け除草剤の活用:「ネコソギ」シリーズなど、非農耕地用除草剤は使用できる場所が限定されます。畑作物が植えられている場所への使用は不可なので注意してください


小規模でのスズメノテッポウ対策は、除草剤よりも「穂が出る前に抜く」が基本です。


また、家庭菜園では近隣の農地から種子が飛散してくるケースもあります。周囲の状況を確認しながら、早期発見・早期除草を年間サイクルで実践することが長期的な発生抑制につながります。


📌スズメノテッポウの見分け方チェックポイント


| 特徴 | 詳細 |
|---|---|
| 発生時期 | 10月〜翌6月(冬から春が生育のピーク) |
| 草丈 | 15〜40cm(はがきの縦幅の1〜2.5枚分が目安) |
| 穂の形 | 細い円柱形(直径5〜6mm、長さ数cm)でスリムな外見 |
| 発生場所 | 水田跡・転換畑・排水の悪い場所に多い |
| 特徴的な行動 | 踏みつけに強く、放牧地や道端にも多発 |


参考:みんなの農業広場「麦作強害雑草『抵抗性スズメノテッポウ』の効果的防除法」
https://www.jeinou.com/technology/2014/06/06/094000.html