

宛名が書いてある紹介状でも、写しをカルテに入れ忘れるだけで全額返戻になります。
診療情報提供書(いわゆる紹介状)には、保険診療報酬として料金が定められています。通常の紹介を目的とした文書は「診療情報提供料Ⅰ(情Ⅰ)」として250点、つまり2,500円相当です。患者の自己負担は保険の適用割合によって異なり、3割負担の方ならおよそ750円になります。
セカンドオピニオンを目的とした文書は「診療情報提供料Ⅱ(情Ⅱ)」として500点(5,000円相当)が設定されており、3割負担で約1,500円の自己負担となります。2つの区分があると覚えておけばOKです。
いずれも「月1回」が算定の上限で、同じ患者を同じ月に同じ医療機関へ2回紹介しても、2回分を算定することはできません。ここを見落とすと査定につながります。
算定要件として必ず確認したいのは以下の点です。
| 区分 | 点数 | 算定上限 | 主な目的 |
|---|---|---|---|
| 診療情報提供料Ⅰ | 250点 | 月1回 | 他院への通常紹介 |
| 診療情報提供料Ⅱ | 500点 | 月1回 | セカンドオピニオン |
| 連携強化診療情報提供料 | 150点 | 月1回 | 紹介先から紹介元への報告 |
| 診療情報等連携共有料 | 120点 | 3か月に1回 | 医科歯科間の照会・情報共有 |
料金のルールは点数だけではありません。診療情報提供料Ⅰを算定した月から3か月以内に、同一の医療機関に対して診療情報等連携共有料を算定することはできないというルールも存在します。医科歯科連携を積極的に行っているクリニックは特に注意が必要です。
参考:診療情報提供料の体系と算定要件の詳細(厚生労働省ウェブサイト)
保険診療の理解のために(厚生労働省)
「保険が使えない場面では自費で請求できる」という認識は、大まかには正しいです。ただし、具体的にどの場面が自費OK・NGかを整理しておかないと、トラブルや不正請求につながります。
自費徴収が認められる代表的な場面は以下の3つです。
一方、以下のケースでは自費徴収できません。厳しいところですね。
「自費なら何でも取れる」ではありません。自費徴収できる根拠を明確にしておくことが原則です。もし院内の文書料金規程が未整備の場合は、この機会に整備しておくことをおすすめします。
参考:宛名なし文書の保険外扱いと自費徴収の可否についての公式Q&A
保険診療Q&A 405 診療情報提供書について(京都府保険医協会)
算定要件を理解していても、日常業務の中でうっかり見落としてしまうパターンがあります。個別指導で繰り返し指摘されている事例をもとに整理します。
① カルテへの写し未添付
患者に渡した診療情報提供書と同じ内容の写しを、診療録(カルテ)に添付することが算定要件の一つです。写しがない場合、交付したかどうか証明できないため、査定対象になります。電子カルテならスキャンデータの添付でも対応可能ですが、後から追加したことが分かる形になっていると別の問題になることもあります。写しは当日中に添付するのが基本です。
② 同一医療法人内の別院への算定
同じ医療法人が運営する別のクリニックや病院への紹介状には、診療情報提供料Ⅰは算定できません。「特別の関係にある医療機関」への算定は認められていないためです。意外ですね。グループ内の施設紹介は日常的に行われますが、その分の算定を続けていると、個別指導での指摘対象になります。
③ FAX・Eメールのみで交付した場合
文書をFAXまたはEメールで送信しただけでは、診療情報提供料は算定できません。患者本人に文書を「交付」することが必須です。紙で手渡すか、持参してもらうという流れが前提になります。電子的な共有は利便性が高いですが、算定の観点からは注意が必要です。
④ 紹介先が「特定の先生宛」でなくても算定は可能だが、宛先施設名は必須
「どの科の先生か」まで決まっていなくても、施設名さえ明記されていれば算定は可能です。ただし施設名そのものがない「宛名なし」は対象外です。これは混同されやすいので注意に注意です。
⑤ 同月に同じ医療機関への複数回の算定
同月内に同じ患者を同じ医療機関に再度紹介しても、算定は月1回が上限です。複数の疾患で複数の科への紹介であれば、施設ごとに算定できますが、同一施設への複数回算定は査定されます。月1回が条件です。
| NGパターン | 理由 |
|---|---|
| カルテに写し未添付 | 交付の証明ができない |
| 同一医療法人内への算定 | 「特別の関係」で算定不可 |
| FAX・メールのみ送付 | 文書の「交付」がない |
| 宛名なし(施設名未記載) | 保険算定の対象外 |
| 同月・同施設への複数算定 | 月1回が上限 |
参考:個別指導での指摘事項(歯科)の詳細
保険診療確認事項リスト(歯科)令和7年度改訂版(厚生労働省)
歯科では保険診療と自費診療が同じ患者に対して行われるケースが珍しくありません。インプラントや審美補綴など、自費処置を受けている患者さんに紹介状を作成する場面も出てきます。この場合の料金の扱いは、少し複雑です。
まず基本的な考え方として、患者が「保険診療のみを受けている」場合は、通常通り診療情報提供料Ⅰ(250点)を保険算定できます。問題は混在ケースです。
「保険診療と自費診療を同日・同一初診期間に並行して行っている」場合、自費診療部分については保険診療費も全額自己負担となる「混合診療の禁止」原則が絡んできます。ただし、歯科の場合は一定範囲内で混合診療が許容されており(選定療養など)、診療情報提供書の算定に直接影響しないケースも多くあります。
つまり患者の状況次第です。純粋に自費診療のみの患者に対する紹介状は保険算定できず、自費文書料を徴収します。保険診療も受けている患者への紹介状は、紹介の根拠となる疾患が保険診療の対象であれば、保険算定が可能です。
自費文書料として徴収する場合、料金設定は医院ごとに任意で決められます。ただし、一般的な相場として1,000円〜3,000円程度が多く見られます。料金設定はあらかじめ院内掲示・ウェブサイトで告知しておくことがトラブル防止につながります。これは使えそうです。
東京都医師会の公式見解でも、「自費診療に伴う診療情報提供料は算定できる」としており、自費診療中であっても診療行為に伴う情報提供については算定可能な場合があることが示されています。
参考:保険外負担と診療情報提供の関係についての整理
保険外の患者負担について(東京都医師会)
歯科には、診療情報提供料の基本点数に加算できる項目があります。多くの歯科スタッフが知っているようで、実は算定し忘れていることが多い部分です。
歯科医療機関連携加算(100点)
医科の保険医療機関が歯科医療機関に対して患者を紹介する際に、以下の2パターンで加算できます。
加算1・加算2はいずれも100点です。この加算を知らないまま算定していない医科クリニックは、年間で考えると相当の算定漏れになります。歯科側としても、医科との連携を強化することで患者への情報提供の質が上がるというメリットがあります。
診療情報等連携共有料(120点・3か月に1回)
2024年度改定で整備されたこの区分は、医科歯科間の「照会」や「情報共有」を評価したものです。診療情報提供料Ⅰのような「紹介」ではなく、治療中の患者情報を双方向でやり取りする場面で算定できます。
連携共有料は3か月に1回が算定の上限です。注意点として、同月に診療情報提供料Ⅰを算定した場合、その月から3か月以内は同一医療機関への連携共有料は算定できません。これを知らずに両方算定すると査定されます。
医科歯科連携の取り組みは患者の全身管理にもつながるため、積極的に活用したい区分です。算定機会を逃さないためにも、医科との連携フローを院内で整備しておくことが重要です。
参考:医科歯科連携で算定できる報酬の体系
医科歯科連携で算定できる診療報酬とは?(デンタルサポート)
算定ルールを頭では理解していても、日常業務の中での漏れは起きやすいです。特に診療情報提供書は、算定のタイミングが通常の診療報酬とは異なるため、気づかないうちに月を越えてしまうこともあります。ここでは実務で使えるチェックポイントをまとめます。
【作成時のチェック】
【自費徴収時のチェック】
【レセプト記載時のチェック】
これらを毎月のレセプト作業前に確認するだけで、返戻・査定リスクを大きく減らすことができます。チェックリストを印刷して受付・算定スタッフと共有しておくと、ミスの見落とし防止に役立ちます。
電子カルテシステムによっては、診療情報提供料の算定漏れを自動でアラートしてくれる機能を持つものもあります。算定管理に不安を感じているクリニックでは、システム面の見直しも選択肢の一つです。
個別指導は、診療情報提供料に関する指摘を毎年継続して行っています。「知らなかった」では済まない場面が出てきます。日頃から算定の根拠を確認する習慣を作ることが、リスク管理の基本です。
参考:歯科個別指導での診療情報提供料の指摘事例
歯科の診療情報提供料の留意事項(歯科 弁護士.com)