

「"セミは1週間しか生きない"は嘘で、実は1ヶ月近く生きる個体がいます。」
セミの成虫は「1週間しか生きられない」という話を、子どものころから聞いてきた方も多いのではないでしょうか。夏の風物詩として知られるセミですが、この「1週間説」は実は正確ではありません。
この誤解が広まった原因は、人間が飼育した場合のデータにあります。セミは木の樹液を口の針で吸って栄養をとる昆虫です。飼育下では適切な木が用意できず、昆虫ゼリーなども食べられないため、3〜5日で餓死してしまうことが多いのです。つまり、「飼ったら1週間で死んだ」という観察が、そのまま寿命の俗説として広がってしまったわけです。
これは根拠のない話でした。
実際、2019年に岡山県立笠岡高校サイエンス部の植松蒼さんが野外調査を行い、アブラゼミ・ツクツクボウシ・クマゼミの3種で10日以上の生存を確認しました。最長記録はアブラゼミで32日間、ツクツクボウシが26日間、クマゼミが15日間という結果です。32日はちょうど1ヶ月程度——これはカレンダー1ページ分に相当します。
つまり「成虫の寿命は1週間」ではなく、実際は2〜4週間程度が正しいということです。
また、大阪市立自然史博物館の調査では、自然状態でクマゼミが1ヶ月生きた証拠が得られており、「世界一成虫で長く生きたことが確認されたクマゼミ」として注目されました。環境さえ整えば、セミはじゅうぶん長く生きられる昆虫なのです。
子どもに「セミの寿命は1週間だよ」と教えてしまう前に、ぜひこの事実を覚えておいてください。
NHK|セミの寿命は1週間ではなく1ヶ月近く生きる個体もいる、高校生の調査が話題に
「世界一寿命の長いセミ」として昆虫の専門家の間で知られているのが、北アメリカに生息するジュウシチネンゼミ(17年ゼミ)です。大阪市立自然史博物館「世界一のセミ展」でも「世界一寿命の長いジュウシチネンゼミ」として紹介されています。
その名の通り、このセミは卵から成虫になるまでにきっかり17年かかります。17年という数字はどのくらいの長さでしょうか。今生まれた赤ちゃんが高校2年生になる年齢です。それだけの時間を土の中でじっと過ごすわけですから、昆虫界ではまさにギネス級の長寿といえます。
一個体の寿命として見れば、昆虫の中でもトップクラスです。
同じく北アメリカには13年ゼミも存在し、これらをまとめて「周期ゼミ(素数ゼミ)」と呼びます。この周期が素数である理由は、天敵との共存戦略に関係しているとされており、日本の研究者たちも精力的に謎の解明を進めています。
一方、日本のセミはどうでしょうか。よく知られた種類の幼虫期間をまとめると以下のようになります。
| 種類 | 幼虫期間(土の中) | 成虫の寿命 |
|---|---|---|
| ツクツクボウシ | 約1〜2年 | 2〜4週間 |
| アブラゼミ | 約3〜4年 | 2〜4週間(最長32日確認) |
| クマゼミ | 約4〜5年 | 2〜4週間 |
| ニイニイゼミ | 約4〜5年 | 2〜3週間 |
| ジュウシチネンゼミ(米) | きっかり17年 | 数週間 |
「セミの一生は7年7日」という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれませんが、7年もかかる日本のセミはほとんどいません。アブラゼミで3〜4年、クマゼミで4〜5年が実際のところです。7年というのは少し大げさな表現ということですね。
大阪市立自然史博物館|世界一のセミ展(世界一寿命の長いジュウシチネンゼミなど紹介)
セミの一生を知ると、あの夏の鳴き声が少し違って聞こえてきます。セミは卵・幼虫・成虫の3段階で一生を過ごします。チョウのようなさなぎの時期がない点が特徴です。
まずメスのセミが木の枝に産卵します。卵は1〜2ヶ月でふ化し、生まれた幼虫は木を伝って地面に落ち、自力で土の中へ潜っていきます。地中では木の根から樹液を吸いながら、数年かけてゆっくりと成長します。これが一生のほとんどを占める時間です。
長い準備期間が終わると、ようやく成虫になります。
幼虫は地上に出てくると木に登り、夜のうちに脱皮して成虫になります。これが「羽化」です。羽化は主に夕方〜夜間(18〜19時ごろ)に行われ、白く透き通った姿で殻から出てくる様子は非常に神秘的です。公園の木でもよく見られるので、夏の夜に懐中電灯を持って観察するのが子どもの自由研究にぴったりです。
羽化した成虫は、オスが鳴いてメスを呼び、交尾・産卵をして一生を終えます。鳴くのはオスだけです。メスは一切鳴きません。あの賑やかな夏の鳴き声は、すべてオスが懸命に行う「求愛活動」なのです。
命をつなぐための短い時間、ということですね。
成虫になってからの行動はすべて子孫を残すためのもので、食べる行為も最小限(樹液を少し吸うだけ)です。エネルギーを使い果たすように鳴き続けるオスの姿は、一生を賭けた行為といえます。
東京環境工科専門学校|セミの一生は短い?鳴き声の秘密や羽化を観察するポイントを解説
これは多くの人が知らない、ちょっと面白い話です。夏の屋外で電話をしていると、周りであれだけセミが鳴いているのに、電話の相手にはほとんど聞こえないことがあります。
理由はセミの鳴き声の周波数にあります。セミの鳴き声は約4,000〜5,000ヘルツという高音域です。一般的な電話回線が伝送できる音の帯域は300〜3,400ヘルツ程度であるため、セミの声はその範囲を超えてしまい、カットされてしまうのです。
これは意外な事実です。
コオロギやスズムシの鳴き声も同様に電話では聞こえにくいとされています。虫の音を電話で伝えようとしても、なかなかうまくいかないのはこのためです。
ちなみに、セミの鳴き声の音量は種類にもよりますが、70〜90dBにもなります。これは掃除機や交通量の多い道路と同じレベルです。近くで一斉に鳴かれると、会話が難しくなるほどの音量になることもあります。
セミの声がうるさくて眠れない、テレビの音が聞こえないという悩みは珍しくありません。このような悩みには、防音カーテンや二重サッシが有効です。内窓の設置は断熱効果もあるため、夏の暑さ対策と音対策を同時に解決できる方法として注目されています。
セミの鳴き声は騒音?夏の高音対策と防音方法(音量の数値や対策が詳しく紹介されています)
セミの生態は、子どもの夏休み自由研究テーマとして非常に優れています。身近な公園や神社でできる観察が多く、特別な道具もほとんど不要です。さらに「1週間説が嘘だった!」という親子での発見は、自由研究に最高のストーリーをもたらします。
おすすめのテーマは3つです。
観察には虫よけスプレーと長袖・長ズボンの着用が必須です。夜間の観察では保護者と一緒に行動することが大前提になります。
自由研究はテーマ選びが肝心です。
セミは日本全国どこでも見られる昆虫であり、研究の参考文献が豊富な点も利点です。観察を通して「1週間説は俗説だった」「成虫は実は1ヶ月近く生きる可能性がある」という結論を自分で導き出せれば、理科的思考力の育成にも大きくつながります。
子どもと一緒に近くの公園へ出かけ、まずは抜け殻を1個探すところから始めてみるのがよいでしょう。ベネッセや学研などの教育系サイトでも羽化観察のワークシートが無料配布されているので、あわせて活用するのがおすすめです。
ベネッセ教育情報|セミの羽化を観察しよう!【小学生自由研究】観察の手順や注意点を解説