

ピコドンチーズを加熱すると、甘味が増して酸味が消えます。
「ピコドン」という名前、初めて聞いた方は何のことか想像もつかないかもしれませんね。実はこれ、フランス・南東部で700年以上作り続けられてきた山羊乳チーズの名前です。
名前の由来はオック語(フランス南部の地方語)で「ピリッと辛い」という意味の「ピカン(pican)」にあるとされています。つまりピコドンは「ピリッと辛い小さなチーズ」という意味合いの名前を持つ、ちょっと珍しいチーズなのです。フランスのAOC(現AOP)認定チーズの名前は、ほとんどの場合その産地名が由来ですが、ピコドンは味そのものを名前にした希少な存在です。
見た目はメダルのような平たい丸型で、直径5〜7cm・高さ2cm前後、重さは最低60gと手のひらに軽くのる小ぶりさです。クレジットカード2枚分のサイズをイメージするとわかりやすいでしょう。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 種別 | シェーブル(山羊乳)チーズ |
| 産地 | フランス・ドローム県・アルデッシュ県など |
| AOP取得年 | 1983年7月 |
| 重量 | 最低60g |
| 形状 | 直径5〜7cm・高さ2cmのメダル型 |
| 原料乳 | 山羊の生乳 |
| 熟成期間 | フレッシュタイプは熟成なし〜、AOP規定は最低14日間 |
14世紀にはすでに存在していたとされ、18世紀には農民が税金の一部としてピコドンを納めていたという記録も残っています。それだけこの地域に根付いた生活のチーズだったのです。これは意外ですね。
生産者はフランス南東部に約150軒。小規模農家が山羊を飼育しながら丁寧に手作りしており、完成までの期間はわずか2週間ほどです。牧草やドングリを食べた山羊の乳から作られるため、季節によって味わいにも変化があるのも面白いポイントです。
参考:ピコドン生産者の農場訪問ルポ。オーガニック生産の実態と、ミルクからチーズになるまでの工程が詳しく紹介されています。
小さな丸いチーズ ピコドン — Taste France Magazine
ピコドンの最大の魅力は、熟成の度合いによってまったく異なる表情を見せることです。同じチーズとは思えないほどの変化があります。
フレッシュまたは熟成初期のピコドンは、ほっくりとした甘みとミルクのやさしい香りが特徴です。ヨーグルトを少し固めたような酸味があり、クリーミーで口当たりも軽め。チーズ初心者でも食べやすいのがこのタイプです。
一方、熟成が進むとどうなるか。外皮には自然のカビが薄くつき、内側はしっとりと締まってきます。味わいは凝縮した山羊乳の旨味とともに、名前の由来通りのスパイシーさが出てきます。他のチーズ(白カビや青カビタイプ)が熟成すると内側がとろとろに柔らかくなるのとは対照的に、ピコドンは水分を飛ばしながら乾燥・熟成していく点が大きな特徴です。
つまり熟成の進み方が独特ということですね。
酸味については、シェーブルチーズの中では比較的穏やかな部類に入ります。「山羊チーズ特有の酸っぱさが苦手」という方にも比較的トライしやすいチーズです。熟成が進めば進むほど酸味は落ち着き、代わりにコクと深みが増していきます。
食べ比べが楽しめるのも、ピコドンならではの醍醐味です。
参考:シェーブルチーズとしてのピコドンの特徴・テイスティングコメントが詳しく解説されています。
ピコドン(Picodon)極小シェーヴルチーズ美味しさの秘密 — ワインとチーズの男の台所
ピコドンはそのままでも十分おいしいチーズです。しかし、食べ方を工夫することでさらに違う美味しさが引き出せます。
まずおすすめしたいのは、オーブンで焼く食べ方です。パンをあらかじめ軽くローストし、その上にピコドンをのせてオーブンの上段・上火でこんがり焼き色がつくまで焼くだけ。ポイントは切り口を上にすること。焼くことで酸味が穏やかになり、山羊乳の甘みが際立ちます。これは使えそうです。
次に人気なのがサラダのトッピングです。軽く焼いたピコドンをくずしてグリーンサラダの上にのせるだけで、カフェ風のおしゃれなシェーブルサラダが完成します。ドレッシングはオリーブオイルとレモン汁でシンプルに仕上げると、ピコドンの風味を邪魔しません。
フランスでは定番の食べ方としてハチミツやナッツと合わせるスタイルも人気です。甘みのあるハチミツとピコドンのスパイシーさが絶妙なコントラストを生み出します。ウォルナッツやくるみと合わせるとさらに食べ応えも増します。
カットする際は、中心から放射線状に切るのが正解です。チーズの熟成は外側から進むため、外側と内側では風味・質感がかなり異なります。放射線状にカットすることで、どの一切れも外側と内側をバランスよく味わえます。
ワインと合わせるなら、同じローヌ川流域で作られたサン・ジョゼフなどの白ワインが鉄板のペアリングです。地域の産品同士の組み合わせは味わいのバランスが取れているため、まず失敗がありません。
参考:ピコドンのAOP規定や食べ方、オーブン活用の具体的なコツが書かれています。
ピコドンが山羊乳から作られているという点は、実は健康面でも注目すべきポイントです。牛乳チーズと比べて何が違うのかを知っておくと、日々の食事に取り入れる理由がより明確になります。
山羊乳の最大の特徴は脂肪球のサイズが牛乳より小さいことです。脂肪球が小さいほど消化酵素が作用しやすくなり、胃腸への負担が軽くなります。牛乳を飲むとお腹の調子が気になる方でも、山羊乳チーズなら比較的食べやすいケースがあるのはこのためです。
栄養面では、山羊乳はリン・カルシウム・カリウム・マグネシウムといったミネラルを豊富に含んでいます。特に亜鉛などのミネラルの吸収率は牛乳より高いとされています。ビタミンAやビタミンB2(リボフラビン)も豊富で、肌の健康を気にする方にとってもうれしい成分が多く含まれています。
チーズのカルシウムが条件です。牛乳に含まれるカルシウムの吸収率はすでに約40%と高いですが、チーズに加工することでさらに消化しやすい形に変化します。骨粗しょう症が気になる年代の女性にとって、日常的にチーズを取り入れることは合理的な選択肢です。
ただし、脂質も含まれているため食べすぎには注意が必要です。1日の目安は30〜40g程度(ピコドン1個の約半分〜2/3)を意識すると、食事全体のバランスを崩しません。量に注意すれば問題ありません。
発酵食品であるチーズには、腸内環境を整える乳酸菌の効果も期待できます。毎日の食事にチーズを少量加える習慣は、健康的な食生活のひとつの選択肢として見直されています。
参考:山羊乳チーズの健康メリットや牛乳チーズとの違いについて詳しくまとめられています。
意外と知られていない?ヤギ乳のチーズが良い理由 — geefee
ピコドンは輸入品のため、近所のスーパーではまず見かけません。では、どこで手に入れればよいのでしょうか?
日本国内では主にチーズ専門店の通販や、AmazonまたはRakuten(楽天)のオンラインショップで購入できます。価格の相場は1個(60g)あたり1,100円〜1,950円(税込)程度です。クール便(冷蔵)での配送となるため、送料別で800円程度かかるケースもあります。まとめ買いや他のチーズと一緒に注文すると送料がお得になることも多いので、チェックしてみてください。
購入時には以下の3つのポイントを確認すると失敗が少なくなります。
主要な購入先として「ナチュラルチーズ通販フロマージュ(fromage.jp)」や「チーズ専門店フェルミエ(fermier.co.jp)」は品揃えが豊富で、品質管理にも定評があります。Amazonでも「男の台所」や「東京468食材」といったショップが取り扱っています。
保存は冷蔵庫のチルド室または野菜室(5℃以下)が基本です。ピコドンに限らず、チーズはそのまま冷蔵庫に入れると乾燥が進むため、ラップで包むか密閉容器に入れて保存しましょう。開封後はなるべく早めに(3〜5日以内を目安に)食べ切るのが理想です。
参考:ピコドンを含む複数のシェーブルチーズの価格比較・購入先が確認できます。