内部被ばく測定方法とは?ホールボディカウンター検査から家庭での対策

内部被ばく測定方法とは?ホールボディカウンター検査から家庭での対策

内部被ばく測定方法

この記事でわかる内部被ばくの測定
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専門機器による直接測定

ホールボディカウンターで体内の放射性物質を正確に検出できます

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バイオアッセイ法

尿や排泄物から放射性物質の量を分析する間接測定法です

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検査施設と費用

全国の医療機関で受けられる検査の実際の流れと料金情報をご紹介

内部被ばくホールボディカウンター測定の仕組み

ホールボディカウンターは、体内に取り込まれた放射性物質を体外から測定する専門機器です。測定時に体内に存在する放射性セシウム137やセシウム134が放出するガンマ線を、高感度の検出器で直接捉えることができるんです。
参考)https://www.qst.go.jp/site/nirs/1448.html

この装置には立位型、座位型、臥位型などのタイプがあり、測定時間は簡易型で1~5分、精密型で10~30分程度かかります。測定中は専用の測定室で検査着に着替え、体表面に放射性物質が付着していないことを確認してから装置内で静止するだけなので、痛みや追加の被ばくは一切ありません。
参考)https://www.env.go.jp/chemi/rhm/current/02-04-17.html

ホールボディカウンターで測定できるのは、体内の放射能量(ベクレル)であり、内部被ばく線量(シーベルト)を求めるには専門的な線量計算が必要です。放射線医学総合研究所が開発したMONDAL3という線量計算ソフトウェアを使用し、国際放射線防護委員会のモデルに基づいて評価されています。
参考)http://www.flhc.or.jp/wbc.html

測定には機器の校正とバックグラウンド補正が必須で、米国規格に規定された標準ファントムを使った精密な校正作業が行われています。​

内部被ばくバイオアッセイ法による測定

バイオアッセイ法は、尿や便などの排泄物中に含まれる放射性物質の量を測定する間接的な方法です。体外計測法では検出できないアルファ線やベータ線を放出する放射性物質の測定に特に有効なんです。
参考)https://www.jaea.go.jp/04/ntokai/houkan/houkan_03.html

この方法では、数日間分の尿や便を採取して分析する必要があります。1回の試料採取では正確な数値が得られないため、継続的なサンプリングが求められます。放射性物質の排出量は個人差が大きく、体調や飲食量によっても変動するため、体外計測法と比べると誤差が大きくなる傾向があります。
参考)https://www.env.go.jp/chemi/rhm/current/02-04-16.html

バイオアッセイ法の最大の利点は、あらゆる種類の放射性物質を測定できる点です。ガンマ線を放出しない核種でも、排泄物中の放射能を分析することで体内摂取量を推定できます。測定結果から摂取量を算出し、最終的に内部被ばく線量を評価する流れになります。
参考)https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_09-04-07-05.html

日本原子力研究開発機構などの研究施設では、体外計測法とバイオアッセイ法を組み合わせて、作業者の内部被ばくモニタリングを実施しています。​

内部被ばく測定できる医療機関と費用

全国の医療機関や検査センターでホールボディカウンター検査を受けることができます。福島県労働保健センターでは3,300円(税込)で検査を実施してり、火曜日と木曜日に完全予約制で対応しています。
参考)https://m-soma-hsp.com/visitor/checkup/wbc.html

検査の流れは、まず問診票の記入から始まり、食生活や屋外滞在時間などを確認します。その後、施設が用意する検査着に着替え、身長・体重を測定してからGM管サーベイメーターで体表面汚染検査を行います。実際のホールボディカウンター測定は立位で2分間行われ、全体で15~20分程度で終了します。​
料金は施設によって異なり、南相馬市の公立病院では6,700円(税込)、岡山医療センターでは2万円となっています。福島県内の住民を対象とした検査は無料で実施されている場合も多く、県の健康調査の一環として提供されています。
参考)https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/wbc-kensa.html

大津赤十字病院では、福島県からの避難者向けに無料で検査を提供しており、第2・4週金曜日の完全予約制で対応しています。検査結果は郵送で通知され、預託実効線量の推計評価が含まれます。
参考)https://www.otsu.jrc.or.jp/outpatient/special-visitor/radiation-measurement/

内部被ばく測定の甲状腺モニター検査

甲状腺モニターは、放射性ヨウ素による内部被ばくを調べる専門的な測定装置です。放射性ヨウ素は甲状腺に蓄積する性質があるため、首の甲状腺部分に検出器を当てて、そこから放出されるガンマ線を測定します。​
測定時間は2~5分程度で、ホールボディカウンターよりも短時間で完了します。2011年3月の福島第一原発事故後、広島大学の研究グループが福島県いわき市や飯舘村などで1,149人の子どもを対象に甲状腺被ばく量を調査しました。
参考)https://www.gakushuin.ac.jp/~881791/housha/details/thyroidscreening.html

その結果、約半数の子どもの甲状腺から放射性ヨウ素による放射線が検出されたものの、甲状腺への被ばく量は最大でも35ミリシーベルトで、健康に影響が出るとされる100ミリシーベルトを大きく下回っていました。​
福島県では現在も継続的に甲状腺検査を実施しており、事故時18歳以下だった県民を対象に無料で検査が受けられます。チェルノブイリ原発事故と比べて放出された放射性ヨウ素は約15分の1と少なく、事故直後の避難や食品規制により体内への取り込みが最小限に抑えられたとされています。
参考)https://fukushima-mimamori.jp/thyroid-examination/outline/purpose.html

内部被ばく測定における家庭での対策と予防

家庭での内部被ばく対策は、放射性物質の吸入摂取と経口摂取の両方を防ぐことが基本です。地表面に残留した放射性物質の再浮遊は時間経過とともに減少していくため、吸入による内部被ばくのリスクは事故直後と比べて大幅に低下しています。
参考)https://www.env.go.jp/chemi/rhm/current/04-03-02.html

日頃の身の回りの衛生管理、特に手洗いや入浴をしっかり行うことが内部被ばくの低減に効果的です。食品からの内部被ばくについては、野生の山菜類やキノコ類がセシウム濃度が高くなる傾向にあるため注意が必要なんです。​
食品中の放射性物質の検査は国が対象品目と検査制度を示し、各都道府県が検査計画を策定して実施しています。検査結果は厚生労働省農林水産省、地方公共団体のウェブサイトで公表されているので、定期的に確認することをおすすめします。​
放射線による健康影響等に関するポータルサイト | 環境省
環境省の公式サイトでは、食品の基準値や被ばく線量の比較などの最新情報が掲載されており、内部被ばくに関する正確な知識を得ることができます。
参考)https://www.env.go.jp/chemi/rhm/portal/

日常生活では、タバコやリン酸肥料、建築材などからも微量の内部被ばくを受ける可能性がありますが、これらは主に吸入による肺からの取り込みです。建築材に含まれるラドンによる被ばくは換気によって低減できるため、室内の適切な換気を心がけることが大切です。
参考)https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_09-01-04-08.html

個人線量計による外部被ばくの測定は可能ですが、内部被ばくの正確な測定には専門機器が必要です。ガラスバッジや電子式線量計などの個人線量計は外部被ばくの評価に使用され、内部被ばくの測定には体外計測法やバイオアッセイ法といった専門的な手法が求められます。
参考)https://www.ene100.jp/zumen/6-5-5

測定方法 対象 測定時間 特徴
ホールボディカウンター ガンマ線を放出する核種 1~30分 体内の放射能量を直接測定
甲状腺モニター 放射性ヨウ素 2~5分 甲状腺に蓄積した放射性物質を測定
バイオアッセイ法 全ての放射性物質 数日間 排泄物中の放射能を分析

内部被ばくの測定には高度な専門知識と精密な機器が必要ですが、日常生活での予防策を実践することで、リスクを最小限に抑えることができます。定期的な検査と正しい知識に基づいた行動が、長期的な健康管理につながります。