放射性物質 半減期 一覧|種類と特徴を解説

放射性物質 半減期 一覧|種類と特徴を解説

放射性物質 半減期 種類と特徴

この記事のポイント
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半減期とは

放射性物質が半分に減るまでの時間で、物質ごとに異なる

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主要な放射性物質

ヨウ素131は8日、セシウム137は30年と大きく異なる

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生活への影響

半減期の長さで環境への残留期間や対策が変わる

放射性物質の半減期とは何か

放射性物質の半減期とは、放射線を出す能力が元の半分になるまでにかかる時間のことです。放射性物質は壊変(崩壊)を繰り返して別の原子核に変わり、最終的に安定した物質になると放射線を出さなくなるんです。
参考)放射性物質の半減期|東京都環境局

この半減期は物質の種類によって決まっていて、加熱したり薬品を使ったりしても変えることはできません。例えば、ヨウ素131なら8日で半分になりますが、セシウム137は30年もかかります。半減期が短ければ早く放射能が弱まりますが、短いからといって必ずしも安全とは限らないんです。
参考)半減期 - Wikipedia

半減期の長さは環境への影響期間を左右する重要な要素となります。半減期の10倍の時間が経過すると、放射性物質の量は1000分の1以下にまで減少するため、実質的な影響はほとんどなくなるとされています。
参考)放射性物質の基礎知識——「放射線」「放射能」「半減期」 - …

放射性物質の半減期 一覧表で比較

主要な放射性物質の半減期を一覧で見ると、その差の大きさがよくわかります。東京電力福島第一原子力発電所事故で問題となった放射性物質は、ヨウ素131、セシウム134、セシウム137、ストロンチウム90の4種類です。
参考)環境省_原発事故由来の放射性物質

放射性物質 物理学的半減期 特徴
ヨウ素131 約8日 体内では甲状腺に蓄積
セシウム134 約2.1年 全身に分布
セシウム137 約30年 環境汚染が長期化
ストロンチウム90 約29年 骨に蓄積
ラドン222 3.8日 気体として存在
プルトニウム239 約24000年 非常に長期間残留
プルトニウム238 約88年 アルファ線を放出

医療分野で使用される放射性物質も半減期が様々です。テクネチウム99mは6時間程度、ヨウ素123は約13時間、ヨウ素131は約8日と、用途に応じて適切な半減期の物質が選ばれています。
参考)ラジオアイソトープ(RI) - PDRファーマ株式会社

原子力発電所事故から7年後の時点で、セシウム134は事故当初の約10分の1以下に減少していますが、半減期の長いセシウム137は今後も汚染物質のほとんどを占めると考えられています。​

放射性物質の生物学的半減期と実効半減期

体内に取り込まれた放射性物質には、物理学的半減期とは別に「生物学的半減期」という概念があります。これは呼吸、汗、排泄によって体外に出されることで、体内の放射性物質が半分に減るまでの時間のことです。
参考)https://www.env.go.jp/chemi/rhm/kisoshiryo/attach/20140707mat3-01.pdf

セシウム137の生物学的半減期は、1歳までは9日、9歳までは38日、30歳までは70日、50歳までは90日と年齢によって変わります。物理学的半減期が30年と長いセシウム137でも、50歳の人なら約3か月でその半分は体外へ排出されるんです。​
実際に体内に放射性物質がとどまる時間を表すのが「実効半減期」で、物理学的半減期と生物学的半減期の両方を考慮して計算されます。ヨウ素131の実効半減期は物理学的半減期に近く、セシウム137では生物学的半減期とほぼ同じ値になっています。
参考)https://www.kangenkon.org/houshasen/question01.html

放射性物質 物理学的半減期 生物学的半減期(成人) 実効半減期
ヨウ素131 8日 80日 約7.6日
セシウム137 30年 70日(30歳) 約70日
ストロンチウム90 29年 49年 約18年

生物学的半減期には個人差があり、水分や食物、薬の摂取などで変えることができるのが物理学的半減期との大きな違いです。​

放射性物質の半減期と環境への影響期間

半減期の長さは環境中で放射性物質が残留する期間を決定づけます。福島第一原発事故で放出された主な放射性物質のうち、ヨウ素131は半減期が短いため事故から数か月後にはすでになくなりました。
参考)放射性セシウム汚染灰除染技術

セシウム134とセシウム137による環境汚染では、時間経過による減衰が重要な要素となります。事故当初のセシウム134とセシウム137の比率が1対1だった場合、10年後には放射線量は当初の約24%にまで減少すると推計されています。​

経過年数 セシウム134の減衰 セシウム137の減衰 全体の放射線量
0年 1.00
1年 0.72 0.98 0.79
5年 0.19 0.89 0.38
10年 0.04 0.79 0.24

セシウム137は半減期が30年と長く、その影響が長期にわたって残ることが懸念されています。事故から12年が経過した現在でも、森林地域では土壌の表層部分にセシウム137が残留してり、キノコや山菜などの林産物から検出されることがあります。
参考)Ⅲ-2. フナの環境適応能力に与える影響

河川や海洋への放射性物質の移行も、半減期の長さによって変わります。台風などの大雨イベント時には、土壌に吸着していたセシウム134とセシウム137が河川水中に流出し、通常時の約10倍の濃度に達することが観測されています。
参考)https://bg.copernicus.org/articles/10/6215/2013/bg-10-6215-2013.pdf

放射性物質の半減期を知って生活に活かす方法

半減期の知識は日常生活での被ばく対策に役立ちます。家庭での除染を考える際、雨どいの出口付近や側溝など放射性物質がたまりやすい場所を重点的に測定することが推奨されています。
参考)放射性物質除染マニュアル(家庭用)

食品中の放射性物質については、平成24年4月から新基準が設定され、一般食品で100ベクレル/kg、飲料水で10ベクレル/kg、牛乳と乳児用食品で50ベクレル/kgとなっています。放射性ヨウ素については、半減期が短く既に検出されないため基準値は設定されていません。
参考)食品中の放射性物質の基準値について - 福島県ホームページ

福島県産食品の安全性に関する研究では、事故から5年後の平成28年時点で259品目を調査したところ、放射性セシウムの中央値は0.33ベクレル/kgと日本の規制値よりもはるかに低い値でした。ただし一部の乾燥キノコでは比較的高い値が検出されており、森林環境での蓄積傾向が確認されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6235920/

日常生活で受ける放射線量は年間約4.7ミリシーベルトで、そのうち自然由来が約2.1ミリシーベルト、人工由来が約2.6ミリシーベルトとされています。普通に生活していても宇宙線や大地からの放射線を受けており、これは避けることができません。
参考)放射線・放射能・放射性物質について - 大分県ホームページ

環境モニタリングの結果によると、事故後7年間で大気中の放射性セシウム濃度は10のマイナス1乗から10のマイナス5乗ベクレル/立方メートルまで減少しました。再浮遊係数も時間とともに低下しており、環境中での放射性物質の固定化が進んでいることが示されています。
参考)https://aaqr.org/articles/aaqr-20-11-oa-0636.pdf

環境省が定める除染の基準は、地表1メートルで毎時0.23マイクロシーベルト以上となっています。この数値を超える場所があれば、所有者の判断で除染を検討することができます。​
環境省の放射性物質の半減期に関する詳しい解説
東京都環境局の放射性物質の半減期と放射線量推計
厚生労働省の食品中の放射性物質による健康影響について