

万木かぶは、滋賀県高島市の万木(ゆるぎ)地区が原産とされ、表皮が紅く果肉が白いのが特徴です。
産地では「9月に種をまいて11月に収穫」し、その後は12月半ばまで漬け込み作業が続く、という季節のリズムで動きます。
この「秋の立ち上がりに種→晩秋に収穫」という流れは、カブ類が冷涼な気候を好むことと整合していて、家庭菜園でも再現しやすいスケジュール感です。
万木かぶに限らず、カブは生育適温が15~20℃前後で、暑さと乾燥に弱い一方、寒さには比較的強い性質があるとされています。
参考)カブ 適期に間引きを行う
そのため、種まきの時点で「土が乾く・表面が熱くなる」条件を作ってしまうと、発芽が不揃いになったり、生育ムラが出たりしやすくなります。
逆に、気温が落ち着く時期に、土の水分を保って発芽を揃えると、その後の間引き・追肥の判断が一気に楽になります。
参考)小カブ【地植え】の育て方|KINCHO園芸
料理する人の視点では、収穫のタイミングが味と用途を分けます。産地の話として、万木かぶは漬け上がると中まで紅色に染まり、歯ごたえが良いことが語られています。
この「漬けて良い食感」は、取り遅れてスが入る前に収穫していること、そして下処理(干しや漬け込み)に向く状態で出荷・加工していることの裏返しでもあります。
家庭で再現するなら、収穫後は“すぐ食べる分”と“漬けに回す分”を分け、漬けに回す分は鮮度の良いうちに段取りを組むと、万木かぶらしさが出やすいです。
カブは直根が太るタイプなので、基本は直まきが推奨され、移植すると又根になりやすい点に注意が必要です。
また、種まき後は発芽まで土を乾燥させない管理が重要で、発芽後は間引きと土寄せを進めていきます。
この「乾かさない→間引く→土寄せ」は、根菜の品質(形と太り)を決める工程なので、料理目的でも最優先で押さえたい部分です。
間引きは、段階を踏んで株間を広げていくのが一般的で、最終的には大きく育てるほど株間を取ります。
参考)カブの育て方・栽培方法|失敗しない栽培レッスン(野菜)|サカ…
園芸情報では、間引きの時期を本葉の枚数で区切り、最終的な株間を小カブで約10cm、中カブで15~20cm、大カブで30~40cm程度とする目安が示されています。
万木かぶは在来系の赤かぶとしてしっかりしたサイズ感で扱われることが多いため、最終的に15~20cm以上の余裕を確保する考え方が相性良いです(品種や土の肥沃度で調整)。
間引きの“料理的メリット”は明確で、間引き菜の段階から食べられることです。産地でも「かぶも美味しいが、葉っぱも刻んで食べてほしい」と語られています。
間引き菜を無駄にせず、さっと茹でて和え物に回す、炒めて香りを出すなど、葉を使い切る前提で栽培すると、結果的に株間確保もためらわなくなります。
つまり、間引き=ロスではなく“収穫の前倒し”と捉えると、根の肥大に必要な判断が速くなり、最終的なかぶの出来も良くなりやすいです。
カブ栽培では、間引きと合わせて追肥を行う説明が多く、間引き後に土寄せをして株元を安定させる流れが紹介されています。
また、栽培上は窒素過多が品質に影響する注意点があり、赤かぶ系では「窒素過多だと色上がりが悪くなるので注意」といった指摘も見られます。
万木かぶは紅色が魅力のひとつなので、葉を茂らせる方向に肥料が寄りすぎないよう、追肥量は“効かせ過ぎない”発想が扱いやすいです。
料理する人向けに言い換えると、肥料設計は「葉の量」だけでなく「根のきめ・甘さ・色」に関係します。赤かぶ系の色づきが肥料バランスでブレるという話は、最終的に漬物の見た目にも影響します。
参考)伝統野菜や固定種の種の通販|野口のタネ・野口種苗研究所
産地レポートでは、万木かぶはこの地域で作るときれいな紅色になる、土壌との相性が良いのだろう、という趣旨の発言が掲載されています。
家庭で完全再現は難しくても、「水分管理で発芽を揃える」「株間を取る」「追肥を控えめにする」という基本を守ることで、家庭でも“紅さの納得感”は出しやすくなります。
意外に見落とされがちなのが、“土の表面状態”です。カブは種が小さいため、畝の凹凸や乾湿の差で発芽不揃い・生育ムラが起きやすい、という指摘があります。
参考)https://www.takii.co.jp/tsk/bn/pdf/20000833.pdf
料理の段取りで言えば、ムラが出ると収穫がバラけて「小さいのに硬い」「大きいのにスが入りかけ」などが混ざり、調理時間が読みにくくなります。
畝の表面を丁寧にならす、石を取り除く、覆土を薄く均一にする、といった地味な作業が、最終的な“火入れの均一さ”に直結すると思っておくと、やる気が続きます。
万木かぶは漬物としての人気が高く、産地では収穫後に洗って干し、葉を巻きつけて樽で漬け込み、約20日~1か月ほど重石をかける、という作り方が紹介されています。
この工程の要点は「干して、表面水分を飛ばし、漬け込み中に味を入りやすくする」ことにあります。
家庭で同じレベルの樽漬けは難しくても、“軽く干す/冷蔵庫で半日ほど乾かす”など、余分な水分を抜く発想を入れるだけで、浅漬けの水っぽさが減りやすいです。
加熱調理では、滋賀のレシピとして「万木かぶをコンソメで軽く炊いてから焼き、照り焼きソースをからめ、粉山椒で仕上げる」料理が紹介されています。
参考)万木かぶの照り焼きステーキ 山椒風味|レシピ集
これは、いきなり焼くより先に下茹で(下炊き)を入れて中心まで火を通し、表面だけ香ばしくする設計で、根菜が大きめでも失敗しにくい手順です。
さらに粉山椒を合わせることで、甘さ・香ばしさ・スパイス感が立ち、赤かぶ系の“野性味”が上品にまとまります。
また産地では、薄切りにして昆布やゆず皮と一緒に浅漬けにする食べ方を「あちゃら漬け」と呼ぶ、という話も出ています。
薄切り浅漬けは、漬け込み時間が短くて済む一方、切り方と塩の当て方で食感が大きく変わるため、“厚さを揃える”ことが最大のコツになります。
料理のバリエーションを増やしたい場合は、「浅漬け(薄切り)」「照り焼き(厚切り)」「本格漬け(干し→重石)」の3ラインに分けると、同じ万木かぶでも飽きにくいです。
独自視点として強調したいのは、「皮の紅」と「葉」の扱いを、最初から料理設計に組み込むことです。産地レポートでは、万木かぶは表皮が紅く果肉が白く、漬け上がると中まで紅色に染まることが特徴として語られています。
つまり、皮の周辺にある色素の層が、漬ける工程で“中へ移る”ことで、見た目のごちそう感が出ます。
ここから逆算すると、皮を厚くむきすぎると、漬物の“紅の伸び”が弱くなりやすいので、漬け用途は特に「皮を薄く扱う」発想が効きます。
葉については、産地の方が「葉っぱも細かく刻んで食べてほしい」と語っており、根と同格の食材として扱われています。
料理人目線でのおすすめは、葉を“分離して保管”し、根は根で使い、葉は葉で使うことです。根に葉を付けたままだと水分が葉へ逃げやすいので、調理まで時間が空くなら早めに切り分け、根は乾燥しすぎないように管理し、葉は鮮度勝負で早めに使うとロスが減ります(一般論として葉物の劣化が速い)。
そして、葉の苦み・辛みが気になる場合は、さっと茹でて水気を切り、細かく刻んで漬物に混ぜると、産地の“葉も食べる”文化に寄せつつ、食べやすさも上がります。
もう一歩踏み込むと、万木かぶの「料理の再現性」を上げる鍵は、栽培で“間引き”を躊躇しないことです。間引きは根の肥大を促す重要な作業だとされ、適期を逃さず行うよう勧められています。
間引きを早めに決め、株間を確保すると、根のサイズが揃いやすくなり、薄切り・厚切り・下炊きのいずれでも火入れ時間が読みやすくなります。
結果的に、料理がうまくいくほど「来年も同じ種で育てよう」となり、種選びや播種の精度も上がっていく——この循環を作れるのが、料理する人が万木かぶの種に向き合う最大の強みです。
滋賀県高島市の原産・特徴・漬け込み工程の参考(産地レポート)
https://shigaquo.jp/report/1871.html
照り焼きステーキ(下炊き→焼き→照り焼きソース→粉山椒)の参考(レシピ)
万木かぶの照り焼きステーキ 山椒風味|レシピ集