

「チョットコイ」と鳴くコジュケイは、実は外来種で日本の在来野鳥ではありません。
コジュケイの声を聞いたことがある人は多いですが、「地鳴き」と「さえずり」の区別まで意識している人は少ないかもしれません。実はこの2つ、鳴く目的がまったく違います。
「さえずり」とは、繁殖期にオスが発する特別な声のことです。主な目的はメスへの求愛と、縄張りを宣言することです。コジュケイの「チョットコイ!チョットコイ!」という大きく高らかな声がまさにこれで、春から初夏(5〜7月)の繁殖期に特によく聞かれます。全身を天に向けて震わせるようにして鳴く姿が記録されており、体全体を使った主張であることがわかります。
一方で「地鳴き」は、繁殖期以外も含めて日常的に使われる声です。仲間との連絡・警戒・居場所の確認などに用いられ、派手なさえずりに比べて地味で短い声が多いのが特徴です。コジュケイの場合、「ピーア ピーア」「コッコッコッ」「クワッ クワッ」などの短い声が地鳴きにあたります。
これが基本です。
| 種類 | 代表的な声 | 主な目的 | よく聞く季節 |
|---|---|---|---|
| さえずり | チョットコイ、ビッググイ | 求愛・縄張り宣言 | 春〜初夏(5〜7月) |
| 地鳴き | ピーア、コッコッ、クワッ | 仲間との連絡・警戒 | 通年(特に秋〜冬) |
この表のように、鳴き声の「役割」を知っておくと、今聞こえた声がどういう状況なのかをすぐに判断できるようになります。散歩中に声が聞こえたとき、「あの声はさえずり?それとも地鳴き?」と意識してみると、野鳥観察がぐっと深まります。
さえずりは繁殖期のオスのみが鳴くのに対し、地鳴きはオスもメスも、一年中使います。これが大きな違いです。
参考:鳥の鳴き声の用語解説(千葉県立中央博物館)
https://www.chiba-muse.or.jp/NATURAL/special/sound_sample_box/html/glossary.html
コジュケイは少なくとも4〜5種類の声を状況に応じて使い分けることが知られています。地鳴きだけに絞っても、複数のパターンがあります。意外ですね。
まず最もよく聞かれる地鳴きが「ピーア ピーア」という声です。これは仲間同士が移動中や採食中に互いの居場所を知らせるために使われると考えられています。声が低めで、遠くまで届くような太い響きが特徴です。ヒヨドリの「ピーヨ」に似ている部分がありますが、コジュケイの地鳴きの方がより重厚です。
次に「コッコッコッコ」という短い連続音があります。これはコジュケイが地面を歩きながら、グループの仲間と連絡を取り合うときに出す声です。ニワトリのコッコッという声に少し似ていますが、素早くテンポが速めです。複数の個体が同時に出すと、群れ全体で会話しているようにも聞こえます。
さらに「クワッ クワッ」「ビャーッ」という大きめの声は、驚いたときや外敵を感じたときの警戒声として機能していると見られます。草むらに隠れていたコジュケイが人の気配を感じた瞬間に突然「ビャーッ」と叫んで飛び立つことがあり、これを初めて聞いた人は多くが驚くと言われています。
つまり地鳴きは「生活の声」です。
注意が必要なのは、「ピーア」という声はアオゲラやオオタカの鳴き声にも似ているため、聞き間違えるケースがあるという点です。バードウォッチング初心者がコジュケイの地鳴きを猛禽類と見間違えることも珍しくありません。声が聞こえた後に「コッコッコッ」と続く場合はコジュケイの可能性が高いです。これだけ覚えておけばOKです。
参考:バードリサーチ さえずり検索 コジュケイ
コジュケイの鳴き声で最もよく知られる「チョットコイ!」のさえずりがピークを迎えるのは、繁殖期の5〜7月です。この時期、オスは早朝から日中にかけて何度も繰り返し鳴き続けます。
その音量はかなり大きく、「早朝からコジュケイに起こされた」という声がSNSや質問サイトにも複数投稿されています。YouTube上には「コジュケイの鳴き声が早朝からうるさくて寝ていられない」というタイトルの動画まで存在するほど、その声の存在感は強烈です。全長わずか27cm(ハガキの長辺ほど)の小さな体から出る声とは思えない音量です。
一方で、地鳴きは時期を問わず一年中聞かれます。特に秋から冬にかけては、さえずりが少なくなる分、「ピーア ピーア」などの地鳴きが比較的多く聞かれるようになります。この時期に林の中から声がした場合は、地鳴きである可能性が高いと考えてよいでしょう。
コジュケイは竹林や雑木林、草むら、農耕地周辺に生息し、地面を歩きながら餌を探します。警戒心が非常に強く、声はすれども姿が見えないことで有名な鳥です。「声はすれども姿は見えず」の代表格と言われることもあります。
厳しいところですね。
声が聞こえてくるのは地面から1〜2mほどの藪の方向が多く、そっと近づいても姿が見えないまま声だけが聞こえ続けることが大半です。もしコジュケイの姿を確認したいなら、じっとして動かないことが最善策です。動くと音に気づいてさっと草の中へ逃げ込んでしまいます。
| 季節 | 聞こえやすい鳴き声 | 状況 |
|---|---|---|
| 春(3〜4月) | さえずり始まり | 繁殖準備期、声量が増し始める |
| 初夏(5〜7月) | チョットコイ(大音量) | 繁殖期ピーク、朝から盛んに鳴く |
| 夏〜秋(8〜10月) | 地鳴き中心 | 巣立ち後、家族群れで行動 |
| 冬(11〜2月) | ピーア・コッコッ | 5〜6羽の群れで採食しながら連絡 |
「チョットコイ チョットコイ」という聞きなしはとても有名ですが、コジュケイの声には他にもユニークな聞こえ方があることをご存知でしょうか。
まずコジュケイのさえずりは、正確には「ビッググイ ビッググイ」とか「ピィッピョックワィ ピィッピョックワィ」とも聞こえます。日本語の「チョットコイ」はこの声を日本人が当てはめたものです。英語圏では「People pray(人々は祈る)」と聞こえるとされており、全く違う解釈になっているのは面白いところです。
さらにコジュケイの声は時代劇の効果音としてよく使われており、江戸時代の街並みや山奥の場面のBGMに入っていることがあります。「あ、あの音だ」と聞いたことがある方も多いはずです。ただ実際のコジュケイが日本に放鳥されたのは1919〜1920年代のことなので、江戸時代には存在しなかった鳥です。これは意外ですね。
また、コジュケイの声は他の野鳥に「真似される」こともあります。キビタキ、ガビチョウ、オオルリ、カケス、モズなどが「チョットコイ」に似た声を出すことがあり、バードウォッチングの現場で「コジュケイの声だと思って探したら別の鳥だった」というエピソードは少なくありません。
これは使えそうです。
コジュケイの声を確認する際に役立つのが野鳥専用の鳴き声図鑑やアプリです。「BirdNET」「Merlin Bird ID」などのアプリをスマートフォンに入れておくと、録音した声をリアルタイムで判定してくれる機能があり、散歩中の鳥の声を調べるのにとても便利です。聞こえた声がコジュケイなのか別の鳥なのか、すぐに確かめてみましょう。
なお、「チョットコイ」は繁殖期のオスのさえずりであり、メスはこの声を出しません。散歩中に「チョットコイ」が聞こえたら、それはオスのコジュケイが発している声です。これが原則です。
参考:サントリー日本の鳥百科 コジュケイ
https://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/1426.html
コジュケイは山奥にしかいないイメージを持つ方がいるかもしれませんが、実は都市近郊の公園や住宅地の緑地でも普通に生息しています。「近所の公園で声がした」「自宅の庭の周りから声がする」という報告は、全国各地に見られます。
コジュケイが日本にいるのは外来種として放鳥されたためです。中国中南部原産のこの鳥は、1919〜1920年頃に東京・神奈川などで最初に放鳥され、その後は狩猟鳥としてさらに多数が放されました。積雪の少ない温暖な地域に適応しており、現在は本州中部〜西部・四国・九州の広い範囲で繁殖する留鳥として定着しています。
留鳥ということです。
岩手県より北の東北地方・北海道では積雪が多いため生息が難しく、分布が限られます。裏を返せば、関東以西に住む方なら、近所の雑木林や緑道、竹林のある公園などにコジュケイが暮らしている可能性がかなり高いということです。
生息しやすい環境の特徴は以下の通りです。
コジュケイは地上生活が中心で、枯れ葉の中を歩きながら木の実や種子・昆虫・ミミズなどを食べます。繁殖期は4〜7月で、1度の産卵で7〜10個の卵を産み、メスだけが約17〜18日間抱卵します。孵化したヒナは生まれてから数時間で巣を離れ、親鳥と一緒に地面を歩き始めます。ニワトリのヒナと同じように、非常に早熟です。
コジュケイを実際に観察してみたい場合は、早朝の5〜7時頃に竹林や緑地へ行き、じっと待つのが最善の方法です。声が聞こえてきたら動かず、目線を低くして地面付近を探してみましょう。声がする方向にはいないことも多く、声は竹林を反響して聞こえるため方向感覚がつかみにくい特徴があります。
参考:鳥ペディア コジュケイの鳴き声や特徴・飼育について
https://bird-pedia.com/archives/2074
参考:hinotori-gallery コジュケイの生息地と特徴
https://hinotori-gallery.com/kojukei/