減農薬基準とは?特別栽培農産物との違い

減農薬基準とは?特別栽培農産物との違い

減農薬基準の実態と特別栽培農産物

この記事でわかること
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減農薬表示は禁止されている

明確な基準がなく消費者に誤解を与えるため、2004年から表示が禁止されています

特別栽培農産物の基準は50%削減

地域の慣行レベルと比べて農薬使用回数と化学肥料の窒素成分量が50%以下

🛒
表示を確認すれば安心して購入できる

認証マークや栽培履歴の記載をチェックすることで、安全性を判断できます

減農薬基準が存在しない理由

「減農薬」という言葉を見かけたことがある方も多いかもしれませんが、実はこの表示は農林水産省のガイドラインで禁止されているんです。
参考)特別栽培、減農薬は化学肥料が使われている!知っておきたい農薬…

平成16年(2004年)に表示が禁止された背景には、明確な基準が存在しないという問題がありました。削減の比較対象となる基準が不明確で、削減割合も曖昧、さらに何が削減されたのか(農薬の使用回数なのか残留量なのか)も不明確だったため、消費者に誤解を与えるケースが多発していたんです。
参考)https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/pdf/tokusai_qa.pdf

生産者それぞれが独自の基準で「減農薬」と表示していたため、消費者の混乱を招いたことから、農林水産省は「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」を策定し、統一された基準を設けることになりました。
参考)農薬不使用とは?無農薬との違いや表示ガイドラインの定義など農…

特別栽培農産物に係る表示ガイドライン(農林水産省)
こちらの農林水産省の公式ページでは、特別栽培農産物の詳細な基準や各都道府県の慣行レベルについて確認できます。

 

特別栽培農産物の明確な基準とは

「減農薬」に代わって定められたのが「特別栽培農産物」という基準です。特別栽培農産物として認められるには、2つの条件を同時に満たす必要があります。
参考)特別栽培農産物とは、どのようなものですか。|そのまま食べても…

まず1つ目は、節減対象農薬の使用回数が慣行レベルの50%以下であること。節減対象農薬とは、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、植物成長調整剤の有効成分のことを指します。使用回数は、前作物の収穫終了後から当該農作物の収穫終了時までの期間にカウントされるんです。
参考)特別栽培農産物に係る表示ガイドライン - 岡山県ホームページ…

2つ目は、化学肥料の窒素成分量が慣行レベルの50%以下であること。こちらも前作物の収穫終了後から当該農産物の収穫終了時までの期間にいて使用したものが対象となります。​
重要なのは、農薬と化学肥料の両方を削減する必要があるという点なんです。どちらか一方だけを削減しても、特別栽培農産物とは認められません。
参考)特別栽培農産物に係る表示ガイドライン:農林水産省

減農薬基準と慣行栽培の違い

特別栽培農産物の基準を理解するには、「慣行栽培」についても知っておく必要があります。慣行栽培とは、その地域で一般的に行われている標準的な栽培方法のことで、都道府県ごとに作物の種類によって異なる基準が設定されているんです。
参考)慣行栽培とは?メリット・デメリットと特別栽培・有機栽培との違…

慣行栽培の農薬使用回数や化学肥料の使用量は、品目によって大きく変わります。例えば群馬県の基準では、ハウス促成栽培のキュウリの慣行レベルは農薬36回、化学肥料40kg/10aですが、特別栽培ではそれぞれ18回、20kg/10aと半分になっています。
参考)認証対象とする農産物及び化学合成農薬延べ使用成分回数・化学肥…

トマトの場合、ハウス促成で慣行レベルは農薬48回、化学肥料32kg/10aに対し、特別栽培は24回、16kg/10aとなります。このように、作物や栽培方法によって基準値が細かく設定されているんですね。​
各都道府県の慣行レベルは、農林水産省のホームページでリンク一覧が公開されており、消費者でも確認することができます。
参考)意外と知らない特別栽培の基本。補助金は? 農薬使用回数のカウ…

減農薬野菜を選ぶ時の見分け方

スーパーなどで農産物を購入する際、特別栽培農産物かどうかを見分けるポイントがあります。
参考)特別栽培米とはどんなお米?購入する時の見分け方やメリットを解…

パッケージや商品ラベルに「特別栽培農産物」と明記されているかを確認しましょう。さらに詳しい情報として、以下のような表示がされています。​

  • 農薬や化学肥料を全く使用していない場合:「節減対象農薬:栽培期間中不使用」「化学肥料:栽培期間中不使用」と表示されます​
  • 農薬や化学肥料の使用が50%以下の場合:削減割合が具体的に記載されます​
  • 節減対象でない農薬を使用している場合:その旨が明記されます​

また、認証を受けた特別栽培農産物には、都道府県のシンボルマークが入った認証マークが貼られていることもあります。例えば新潟県では独自の認証制度を運営しており、認証マークで識別できるようになっているんです。
参考)新潟県特別栽培農産物認証制度 - 新潟県ホームページ

表示には栽培責任者や所在地なども記載されているため、より詳しい情報を知りたい場合は問い合わせることもできます。​

特別栽培農産物のメリットとデメリット

特別栽培農産物には、消費者にとっても生産者にとってもメリットとデメリットが存在します。
参考)特別栽培農産物とは?メリット・デメリットや有機農産物との違い…

消費者側のメリットとしては、農薬のリスクを減らすことができる点が挙げられます。化学合成農薬や化学肥料の使用が慣行レベルの半分以下に抑えられているため、健康面での安心感が得られるんです。また、野菜本来の味をしっかり感じられるという声も多く聞かれます。
参考)今更聞けない「特別栽培農産物」とは。農産物の表示について徹底…

一方でデメリットもあります。特別栽培は労力や時間がかかるため、人件費や管理コストが高くなり、結果的に市場価格が高騰する傾向にあるんです。一般的な農産物と比べると2割から3割程度価格が高いことが多いため、家計への負担が大きくなる可能性があります。
参考)無農薬野菜はデメリットもあるの?その特徴とは!

生産者側から見ると、農薬を減らすことで害虫や病原菌による被害が発生しやすく、収量が減少したり品質が低下するリスクがあります。土づくりや除草、病気の予防などに多大な手間とコストがかかるため、経営的な負担は大きいといえます。​
また、認証を受けるための手数料も必要です。規模や人数によって異なりますが、書類発行審査費用や実地検査費用、認証審査費用などがかかり、小規模な生産者にとっては負担になることもあるんです。
参考)https://www.accis.jp/document/%E7%89%B9%E5%88%A5%E6%A0%BD%E5%9F%B9%E8%AA%8D%E8%A8%BC%E6%89%8B%E6%95%B0%E6%96%99240501.pdf

減農薬基準を理解して賢く食材を選ぶコツ

「減農薬」という表示が禁止されている今、消費者として知っておくべきポイントをまとめます。
参考)「無農薬」「減農薬」は使えません!(農作物の禁止用語について…

まず、インターネットや店頭で「減農薬」という表示を見かけた場合は注意が必要です。正式な認証を受けていない可能性があるため、表示の詳細をよく確認することが大切なんです。
参考)東海コープ 商品検査センター│欧米の規制と違うのは何故?トラ…

安全性を重視したい場合は、「特別栽培農産物」の表示があるものや、より厳格な基準の「有機農産物(有機JASマーク)」を選ぶことをおすすめします。有機農産物は化学肥料や化学合成農薬の使用を原則として避けており、特別栽培農産物よりもさらに基準が厳しいんです。
参考)有機野菜と無農薬野菜、オーガニック野菜の正しい見分け方まとめ…

ただし、慣行栽培の農産物も農薬取締法によって厳しく管理されており、残留農薬基準をクリアしたものしか流通していません。農林水産省の認可を受けた農薬と肥料だけが使用され、対象となる農産物や使用回数が厳格に定められているため、安全性は確保されているんです。
参考)残留農薬基準値検索システム

価格と安全性のバランスを考えながら、ご家庭の予算や価値観に合った食材選びをすることが、賢い消費者といえるでしょう。

 

特別栽培農産物とは?メリット・デメリットや有機農産物との違い
特別栽培農産物と有機農産物の違いや、消費者目線での選び方について詳しく解説されています。

 

実は「無農薬」という表示も禁止されていることをご存知でしたか。栽培期間中に農薬を使用しなくても、土壌に残っていたり周囲から飛散したりして、農薬が農産物に残ってしまう可能性があるため、消費者に誤解を与えないよう表示が禁止されているんです。
参考)「無農薬」という言葉は使ってはいけない?その理由を解説|清水…

近隣の農場から農薬が風で運ばれたり、水路を共有している場合は水源に農薬成分が入り込んだりする可能性もあります。そのため、完全な「無農薬」は定義が難しく、正式には「農薬:栽培期間中不使用」という表現が使われるんです。​
買い物をする際は、パッケージの表示をしっかりチェックして、認証マークや具体的な削減割合が記載されているかを確認することが大切です。表示の見方を知っておけば、自分や家族の健康を守りながら、納得のいく食材選びができるようになります。

 

特別栽培農産物の制度は、生産者の努力を正しく消費者に伝え、安心して購入できる環境を整えるために作られたものなんです。基準を理解した上で、ご自身が求める食材を見つけてくださいね。​