

フェンネルの「らしさ」は、甘いリコリス(甘草)系の香りに、スッと抜ける爽やかさ、そして料理の輪郭を締めるほのかな苦味が重なる点にあります。フェンネルシードは特に魚料理の臭み消しに相性がよく、焼き菓子やハーブティーにも使える汎用性があるため、代用を考えるときも「どの料理に入れるか」で最適解が変わります。
フェンネルは部位で役割が変わるのも重要です。葉は仕上げの香り、シードは加熱で香りを立たせる“芯”、株は食感と甘みが役目になりやすいので、レシピの「フェンネル」がどれを指しているかを最初に確認すると迷いません。
また、香りは投入タイミングで印象が激変します。ホール(粒)を油で温めると香りが丸く広がり、パウダーを煮込みに入れると早く出る反面で飛びやすい、という性格があるため、代用品でも「形状(ホール/粉)」と「入れる順番」を揃えると再現性が上がります。
「甘いアニス系の香り」を最短距離で寄せるなら、アニスが第一候補になりやすいです。アニスもフェンネルと同様に香り成分アネトールを含むため、方向性が近く、魚のマリネやパン・焼き菓子などで“それっぽさ”を作りやすいとされています。
ただしアニスは、少量でも前に出やすい(主張が強くなりやすい)タイプです。家庭料理では「いきなり同量」より、まずは控えめに入れて、最後に香りを見ながら追い足しする方が安全です。特にピクルスやマリネのように酸がある料理では、香りが立つ一方で甘さが強調されやすいので、砂糖を少し控える・酸味をほんの少し強めるなど、味の設計もセットで調整するとまとまります。
キャラウェイは、甘さに加えて清涼感が出やすく、酸と相性が良いとされます。ザワークラウトやピクルスなど「野菜の酸味×スパイス」でフェンネルの不在を埋めたい場面で、キャラウェイはかなり使いやすい部類です。
ここで意外と効く小技が「ブレンド思考」です。フェンネルの不在を“1つで完全コピー”しようとせず、例えばアニスで甘い香り、キャラウェイでスッとした抜け、(必要なら)タイムやパセリで清潔感や臭み消し、と役割を分担させると仕上がりが立体的になります。
参考:フェンネルとアニスの違い、代用(アニス・セロリ・キャラウェイ)がまとまっている
https://www.rakuten.co.jp/santarosa/contents/fennelseed/
フェンネルを「野菜(株)」として使うレシピでは、セロリが実用的です。シャキッとした食感と青い香りがあり、スープや煮込み、炒め物で“土台の香味野菜”として置き換えやすいからです。
ただしセロリは、フェンネルの甘いアニス香とは別方向なので、香りまで寄せたい場合は工夫が必要になります。おすすめは、仕上げで少量のアニス(またはキャラウェイ)を足して香りの“上”を作る、あるいはレモンゼストのような柑橘で爽やかさを補うやり方です(入れすぎると別料理になるので、香りは少しずつが鉄則)。
玉ねぎは「甘みの層」を作る役として強い味方です。フェンネルが料理に与える“丸さ”や“ふくらみ”を、玉ねぎのじっくり加熱で代替できます。特にトマトソースや煮込みで、玉ねぎを時間をかけて炒めて甘みを引き出すと、スパイスの不足が目立ちにくくなります。
野菜料理だと、ピクルスやマリネでの代用もよくあります。酸の中で香りを立たせたいならキャラウェイ、甘い香りでまとめたいならアニス、青さや見た目を補うならディル(葉)という組み立てにすると、狙いの方向へ調整しやすくなります。
代用で失敗しやすいのは「同量置き換えの罠」です。フェンネルと似た系統でも、アニスは香りが鋭く、キャラウェイは清涼感が立ちやすいなど“出方”が違うため、同じ小さじ1でも体感が一致しないことがあります。そこで、家庭では次の考え方が安定します。
✅ 基本の考え方(少量→調整)
また、ホール(粒)とパウダーでは香りの立ち方が変わります。ホールは油で温めると丸く広がり、パウダーは一気に出て飛びやすいので、粉の場合は“追い香”向きです。逆に煮込みの最初から粉を入れすぎると、甘い香りが飛んで苦味や薬っぽさだけ残ることがあるため、投入位置の設計が重要になります。
注意点として、体質や状況によってはハーブ・スパイスを控える判断も必要です。フェンネル由来製品は妊娠中・授乳中の大量摂取に注意が必要とされることがあり、ハーブティー等で濃く摂る場合は特に、商品表示や注意喚起を確認し、心配なら専門家へ相談するのが安全です。
検索上位の記事は「代用品の一覧」になりがちですが、実際の料理では“香りをどう立ち上げ、どう残すか”が結果を左右します。ここでは独自視点として、フェンネルを「香りの層(レイヤー)」に分解して再構築する方法を提案します。
フェンネルの体験を3層に分けると、選びやすくなります。
この発想で代用を組みます。たとえば魚料理なら、トップをアニス少量、ミドルをディルやパセリ、ベースをオリーブオイルと塩の設計(下処理でドリップを取る)で支えます。ピクルスなら、トップをキャラウェイ、ミドルをディル、ベースを砂糖控えめ+酸の輪郭で整えると、フェンネルがなくても“完成度が高い別解”になります。
さらに「香りの保持」を狙うなら、油脂を味方につけるのが効きます。アネトール系の香りは油に乗ると感じやすくなるため、ドレッシングは乳化をしっかりさせる、炒め物は最初に弱火でスパイスを温めて香りを移してから具材を入れる、といった手順の工夫だけでも、代用スパイスの少量運用が可能になります。
最後に、クミンについて。見た目が似ていて代用に挙がることがありますが、香りの方向性はかなり違います。エスニック寄りの料理ならクミンを“補強役”として少量使うのは有効でも、「フェンネルの代わり」として同量投入すると別の料理に寄っていきやすいので、使うなら控えめからが無難です。