

たった4週間のトレーニングで、むせる回数が減った高齢者が続出しています。
「最近、父が食事中によくむせるようになった」「お茶を飲むたびに咳き込む」——そんな場面を目にしたとき、多くの人は「年のせいだから仕方ない」と思いがちです。でも、その「むせ」は見逃せない体からのサインです。
嚥下(えんげ)とは、食べ物や飲み物を口から胃まで送り込む一連の動きのこと。加齢によってこの機能が低下すると、食べ物や唾液が誤って気管に入る「誤嚥(ごえん)」が起きやすくなります。そして誤嚥の繰り返しが引き起こすのが、誤嚥性肺炎です。
誤嚥性肺炎は日本人の死因第6位に位置しており、厚生労働省のデータによると高齢者の肺炎のうち7割以上が誤嚥性肺炎と報告されています。深刻なのはその後の経過で、75歳〜89歳で誤嚥性肺炎を起こした方の生存中央値はわずか254日というデータもあります。
金銭的な影響も見逃せません。入院後に誤嚥性肺炎を発症すると、追加的な医療費が平均61.9万円ほど増加し、在院日数も約17日延びるという研究(J-Stage掲載)があります。1件の入院でこれだけの負担が生じるということですね。
こうした背景から、在宅で手軽に取り組める嚥下筋トレーニングの重要性が近年急速に高まっています。その中で医療・介護の現場から注目を集めているのが、嚥下機能トレーナー「ドフィン40」です。
嚥下筋の衰えは病気に付随するだけでなく、加齢・孤独・うつなどの日常的な要因でも進むことがわかっています。つまり「病気がないから大丈夫」ではないということです。
誤嚥性肺炎の統計データ・リスクについての参考情報。
ドフィン40は、台湾の世界的呼吸器メーカー「GaleMed Corp.(ゲルメド社)」が製造し、日本では株式会社東京エム・アイ商会が販売する一般医療機器です。医療機器届出番号(13B2X10072000025)も取得しており、多くの病院で嚥下障害のリハビリに実際に使用されています。
製品の大きさは長さ142.5mm・幅47mm・重さ65gと、スマートフォンより少し小さいサイズ感。ストラップや取扱説明書、ノーズクリップが付属しています。コンパクト設計なのがいいですね。
ドフィンにはソフトタイプの「40」とスタンダードタイプの「80」という2種類があります。2つの違いを整理すると以下のとおりです。
| 項目 | ドフィン40(ソフト) | ドフィン80(スタンダード) |
|---|---|---|
| 負荷範囲 | 0〜40cmH₂O | 0〜80cmH₂O |
| 特徴 | 少ない負荷で細かく設定可能 | 強い負荷で幅広い設定が可能 |
| 向いている方 | トレーニング初心者・高齢者・嚥下に不安がある方 | 継続してきた方・より強い負荷を求める方 |
| 価格(税込) | 12,100円 | 12,100円(同価格帯) |
親の嚥下力低下が気になって購入する場合、多くのケースでドフィン40が適しています。初めて呼気筋トレーニングを始める高齢者には、呼気負荷0〜40cmH₂Oの範囲で細かく調整できるソフトタイプの方が安全に始めやすいからです。
ドフィン40は1本で呼気・吸気の両方をトレーニングできる切り替え式という点も大きなメリットです。呼気と吸気をそれぞれ11段階でダイヤル調整できるため、家族がそれぞれの体力に合わせて設定を変えながら使いまわすことも可能です。これは使えそうです。
3年保証がついていることも、長期的なトレーニングを続けるうえで安心できるポイントです。
ドフィン公式製品情報。
Dofin公式サイト:製品ラインナップ・型番・届出番号など基本情報(ドフィン40・80の仕様)
購入しても正しく使わなければ、効果は半減します。ここではドフィン40の基本的なトレーニング手順を確認しましょう。
まず負荷の設定が最初のポイントです。ダイヤルを回して、自分が吐き出せる最大の力の約7割程度の負荷になるよう調整します。強すぎると続けられず、弱すぎると効果が出にくいので、「少しきつい」と感じる強さが目安です。
吸気トレーニングも同様の要領で行えます。呼気と吸気を切り替えるスイッチがドフィン本体に搭載されているため、1本で両方のトレーニングが完結します。
トレーニング中はノーズクリップを鼻につけて、口だけで呼吸するのが基本です。付属のノーズクリップを使うことで、鼻からの空気の逃げを防ぎ、確実に負荷をかけることができます。
注意点が1つあります。使用後は本体を清潔に保つことが大切です。マウスピース部分に唾液などが付着するため、使用後は流水で洗浄し、陰干しして乾燥させましょう。衛生管理を怠ると雑菌の繁殖につながります。きれいな状態を保つことが条件です。
聖隷クリストファー大学リハビリテーション学部の俵祐一先生も「息を吐く力をつけることは、誤嚥した際の防御力向上という意味でも重要な対策」と語っており、呼気筋トレーニングの重要性はリハビリの専門家から広く支持されています。
ドフィン40の詳しいトレーニング方法・スペックページ。
nebneb.com:ドフィン40の仕様・トレーニング方法・嚥下障害のリスク解説(専門ショップ)
「息を吐くトレーニングがなぜ飲み込む力につながるの?」と疑問を持つ方は多いでしょう。
嚥下に関わる筋肉群には、舌骨上筋群・咽頭筋群・腹筋群などがあります。これらは通常のトレーニングでは鍛えにくく、特に舌骨上筋群は食べ物を飲み込む際にのど仏を引き上げる役割を担う、とても重要な筋肉です。加齢によってこれらが衰えると、食道の入口が十分に開かず飲み込みにくくなります。
呼気筋トレーニング(EMST:Expiratory Muscle Strength Training)は、呼気に抵抗をかけることで腹筋群・呼気筋群だけでなく、舌骨上筋群にも高い負荷をかけられるのが最大の特徴です。その結果として舌骨の前上方移動・喉頭挙上が促され、輪状咽頭筋の開大が改善されます。つまり、飲み込みの安全性が高まるということです。
また、呼気筋の強化は「咳嗽力(がいそうりょく)」も向上させます。これは誤嚥してしまったときに、気道から異物を吐き出す力のことです。誤嚥そのものの予防だけでなく、万が一誤嚥した場合の「防御力」を高める側面でも役立ちます。
日本神経摂食嚥下・栄養学会のコラム(2025年12月)によると、パーキンソン病患者を対象とした複数のランダム化比較試験において、4週間のEMSTによって誤嚥や喉頭侵入のスコアが有意に改善されたと報告されています。さらに、EMST終了後も効果が3カ月間持続したという研究結果もあります。意外ですね。
脳卒中後の嚥下障害患者にEMSTを実施した研究でも、咳嗽機能・嚥下機能・主観的な嚥下困難感の改善が確認されており、専門学会内でも活発に研究が続けられています。
呼気筋トレーニングの臨床的有益性についての参考情報。
日本神経摂食嚥下・栄養学会(JSDNNM):EMST(呼気筋力強化訓練)の現況と臨床的意義(2025年12月最新情報)
ドフィン40は優れた器具ですが、使い始める前に知っておくと安心な注意点があります。
まず、ドフィン40は嚥下機能の低下が軽度〜中等度の方のトレーニング用器具です。すでに嚥下障害が深刻で、食べ物が全く飲み込めないような状態の方は、まず医療機関や言語聴覚士への相談が優先されます。器具を使ったトレーニングが条件です。
呼気筋トレーニングは、身体状態によっては強い負荷がかかることがあります。呼吸器疾患がある方や、術後間もない方は使用前に主治医に確認してください。健康な高齢者が予防目的で使う場合は比較的安全性が高いですが、無理のない範囲で始めることが大切です。
ドフィン40を使ったトレーニングと合わせて効果を高めるために、日常的な口腔ケアも重要です。口腔内の細菌が誤嚥物とともに肺に入ることで起きるのが誤嚥性肺炎のため、毎食後の歯磨きや口腔内の清潔維持が予防につながります。
「嚥下体操」と呼ばれる準備運動と組み合わせるのも効果的です。食事の直前に首・肩・唇・舌を動かすストレッチを取り入れることで、嚥下反射をよりスムーズに引き出しやすくなります。
器具のトレーニングだけでなく、日常生活の習慣全体をセットで見直すことが、誤嚥性肺炎の予防につながります。嚥下体操の参考資料として、健康長寿ネットの解説ページも活用してみてください。
嚥下障害のリハビリテーション基礎訓練についての参考情報。
健康長寿ネット:嚥下障害のリハビリテーション(基礎訓練)—自宅でできる嚥下体操・訓練方法の解説