

肌の保湿といえばヒアルロン酸しか選択肢がない、と思い込んでいませんか?
デルマタン硫酸(Dermatan sulfate、略称DS)は、グリコサミノグリカン(GAG)と呼ばれる硫酸化多糖の一種です。その名前はギリシャ語の「デルマ=皮膚」に由来しており、もともと皮膚から多く発見されたことがこの名の理由になっています。
🔬 化学式と基本単位
デルマタン硫酸の化学構造の最大の特徴は、二糖繰り返し構造にあります。具体的には以下の2種類の糖が交互につながった鎖状の骨格を持っています。
| 構成糖 | 説明 |
|---|---|
| L-イズロン酸(IdoA) | ウロン酸の一種。同じ仲間のコンドロイチン硫酸はD-グルクロン酸を使うが、DSはL-イズロン酸を主に使う点が構造的な最大の違い |
| N-アセチル-D-ガラクトサミン(GalNAc) | アミノ糖の一種で、4位に硫酸基が結合していることが多い |
この二糖が交互に繰り返すことで長い直鎖状の多糖鎖が形成されます。つまり二糖繰り返し構造が基本です。
鎖全体には硫酸基(-SO₄)が結合しており、強い負電荷を帯びています。この負電荷が水分子を引き寄せ、高い保水能力を生み出す源になっています。分子量はおよそ2万〜40万と幅があり、コアタンパク質(タンパク質の軸)と結合してプロテオグリカンという巨大分子を構成するのがデルマタン硫酸の体内での存在形態です。
コンドロイチン硫酸(CS)との関係も整理しておきましょう。
| 名称 | ウロン酸の種類 | 主な存在部位 |
|---|---|---|
| コンドロイチン硫酸A | D-グルクロン酸 | 軟骨・骨 |
| コンドロイチン硫酸B(=デルマタン硫酸) | L-イズロン酸 | 皮膚・結合組織 |
| コンドロイチン硫酸C | D-グルクロン酸 | 結合組織全般 |
デルマタン硫酸はコンドロイチン硫酸Bとも呼ばれます。軟骨成分として知られるコンドロイチン硫酸Aとは、ウロン酸の種類が違うだけでよく似た構造を持っています。意外ですね。しかし、この小さな違い(GlcAかIdoAか)が、体内での機能をまったく異なるものにします。
また、DS鎖は実際には「CS/DSハイブリッド糖鎖」として存在することも多く、D-グルクロン酸とL-イズロン酸が混在した不均一な構造になっています。こうした構造の多様性こそが、デルマタン硫酸に多彩な生理活性をもたらす根拠とされています。
参考:デルマタン硫酸の生合成経路および構造多様性について、学術的な情報が詳しくまとまっています。
コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸の生合成機構(Glycoforum・神戸薬科大学)
デルマタン硫酸は、体内では単体の糖鎖としてではなく、「プロテオグリカン」という形でコアタンパク質に糖鎖として結合した状態で存在しています。プロテオグリカンは、軸となるコアタンパク質に複数のグリコサミノグリカン鎖がブラシ状に結合した巨大分子のことです。
真皮の中でデルマタン硫酸が側鎖として結合しているプロテオグリカンとして代表的なのが、「デコリン」と「ビグリカン」です。
- デコリン:コラーゲン線維の表面に結合し、線維の太さを調節する機能があるとされています。コラーゲン線維を「整列させる接着剤」のような役割を持ちます。
- ビグリカン:細胞外マトリックスの維持に関わり、細胞増殖や分化の調節にも影響すると考えられています。
デコリンがあることで、コラーゲン線維が適切な間隔で並んで整然とした網目構造をつくることができます。コラーゲンが多ければいいというわけではありません。デルマタン硫酸がコラーゲンの「整列係」として働いてはじめて、肌のハリと弾力が生まれるのです。
真皮の細胞外マトリックスは以下のように構成されています。
| 構成成分 | 主な役割 |
|---|---|
| コラーゲン | 真皮乾燥重量の約70%。肌の強度・ハリの土台 |
| エラスチン | 弾力性・伸縮性の維持 |
| ヒアルロン酸 | 1gで6Lもの水(自重の約6000倍)を抱える保水力 |
| デルマタン硫酸 | 真皮グリコサミノグリカンの約25%。コラーゲン線維整列・繊維の維持 |
| 線維芽細胞 | 上記すべてを産生する細胞 |
真皮の基質において、ヒアルロン酸は水を大量に蓄える「タンク」として機能し、デルマタン硫酸はコラーゲンやエラスチンの「支持体・整列係」として機能します。これが基本です。両者はまったく異なる役割分担をしているため、どちらが欠けても肌の状態は乱れます。
また、デルマタン硫酸は皮膚だけでなく、血管壁・大動脈弁・腱・肺など全身の結合組織にも広く分布しています。毛細血管を強化し血行を促進する作用、血液の酸性化を防ぐ作用も報告されています。全身に分布するため、実は肌だけの問題ではないのです。
参考:皮膚の真皮における各成分の役割を管理栄養士の視点からわかりやすく解説しています。
デルマタン硫酸の生合成は、コンドロイチン硫酸(CS)鎖の生合成経路から枝分かれするかたちで進行します。ここが非常に興味深いポイントです。
もともとは「コンドロイチン(Chn)」という単純な糖鎖骨格がつくられます。この骨格はD-グルクロン酸(GlcA)とN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)の二糖繰り返しです。その後、GlcAの一部が「GlcA C5異性化酵素(DS-epi1・DS-epi2)」という酵素によってL-イズロン酸(IdoA)へと変換されます。この変換反応によって、コンドロイチン鎖の一部がデルマタン硫酸の特徴を持つようになります。
💡 ここがポイントです。
この異性化反応は可逆的なため、変換されたIdoAが再びGlcAに戻ってしまう可能性があります。そこで「デルマタン4-O-硫酸基転移酵素(D4ST-1)」がすぐに硫酸化することで、IdoAの逆変換を防ぎ、DS構造が安定します。つまりDS生合成は「異性化→即時硫酸化」のチームプレーで進みます。
このような生合成の仕組みから、自然に「CS/DSハイブリッド糖鎖」が生じます。1本の鎖の中に、GlcAを含むCS型の二糖ユニットとIdoAを含むDS型の二糖ユニットが混在した不均一な構造になるのです。混ざり具合は生物種・組織・年齢によって異なります。
✅ この不均一性こそが生理活性の多様性につながると考えられています。
硫酸化のパターンについても触れておきましょう。デルマタン硫酸の二糖ユニットにはいくつかの種類があり、GalNAcの4位が硫酸化された「iAユニット」が最も多く、さらに硫酸化が進んだ「iBユニット(IdoA 2位も硫酸化)」や「iEユニット(GalNAc 4位・6位が硫酸化)」なども存在します。
| 二糖ユニット | 構造の特徴 |
|---|---|
| iAユニット | IdoA-GalNAc(4-O-硫酸):DS鎖の基本単位 |
| iBユニット | IdoA(2-O-硫酸)-GalNAc(4-O-硫酸):より高硫酸化 |
| iEユニット | IdoA-GalNAc(4,6-O-ジ硫酸):高機能性ユニット |
硫酸化のパターンが変わることで、デルマタン硫酸が結合できるタンパク質の種類も変わります。これが原因で、同じ「デルマタン硫酸」でも組織・年齢によって機能が違うという複雑さが生まれます。
参考:コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸の化学的構造と生合成機構を学術的視点で詳述しています。
コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸の生合成機構(Glycoforum)
加齢に伴い、真皮中のデルマタン硫酸の量は変化します。研究によれば、皮膚中のデルマタン硫酸含有量は60歳前後から急激に低下し、75歳ではさらに減少が続くことが示されています(Longas et al., 1987)。これは、肌のハリ・弾力・保水力の低下と無関係ではありません。
なぜこうした変化が起きるのでしょうか?
皮膚の線維芽細胞は、コラーゲン・エラスチン・グリコサミノグリカン(デルマタン硫酸やヒアルロン酸を含む)を産生する細胞です。成人初期(20代)から線維芽細胞の活動性は少しずつ低下し、コラーゲンの産生量は年間約1.0〜1.5%ずつ減少するとされています。デルマタン硫酸の産生量も同様に低下します。
加齢と肌の変化の関係をまとめると。
| 年齢の目安 | 肌の変化 | 関連する構造 |
|---|---|---|
| 20〜30代 | コラーゲン産生のピーク。肌のハリ・弾力が最も高い | 線維芽細胞が活発に機能 |
| 40代 | コラーゲン産生が年約1〜1.5%ずつ低下し始める | デルマタン硫酸の減少が顕在化 |
| 60代以降 | デルマタン硫酸が急速に減少。しわ・たるみが深刻化 | コラーゲン線維の整列が乱れる |
デルマタン硫酸の構造変化が肌老化に与える影響として特に重要なのは、コラーゲン線維の整列の乱れです。デコリンというプロテオグリカンのコアタンパクにデルマタン硫酸が結合していることで、コラーゲン線維が規則正しく並んだ網目構造を維持しています。デルマタン硫酸が減ると、この整列が乱れ、コラーゲン線維の束が崩れやすくなります。それが肌のたるみやしわへとつながるのです。
デルマタン硫酸が減ると肌が崩れる、ということですね。
閉経後のホルモンバランスの変化(エストロゲン低下)も、真皮のコラーゲン・グリコサミノグリカンの産生に影響します。閉経後15〜18年の間、コラーゲン含有量は年平均2.1%、皮膚の厚さは年平均1.13%ずつ減少するという研究報告もあります。40代以降の女性にとって、デルマタン硫酸の変化を意識することは特に重要です。
参考:デルマタン硫酸を含む真皮成分の役割と加齢による変化をわかりやすく解説しています。
デルマタン硫酸(コンドロイチン硫酸B)は、化粧品成分として「コンドロイチン硫酸Na」という名称で配合されています。40年以上の使用実績があり、医薬部外品原料規格2021にも収載されている安全性の高い成分です。
外用(化粧品として塗る)の効果については、2006年の検証データがあります。1%コンドロイチン硫酸Na配合の化粧水を5名の被験者の顔半分に塗布したところ、60分後の時点で未配合側と比べて有意に皮膚の水分保持能が高い値を示しました。さらにクリームでの試験でも、経表皮水分蒸散量(TEWL)の低下が抑制されており、肌からの水分蒸散を防ぐ効果が確認されています。これは使えそうです。
💡 化粧品選びのポイント
コンドロイチン硫酸Naを含む製品を選ぶ際は、成分表示(全成分表示)を確認します。配合される製品カテゴリは主に以下の通りです。
- 化粧水・美容液
- クリーム・乳液
- フェイスマスク
- ボディケア製品
一方、経口摂取(サプリメント)については、プロテオグリカン含有の健康食品として、皮膚の水分保持・柔軟性の維持に関与する可能性が特許文献などで報告されています。ただし、現時点では外用のほうがメカニズムとして直接的です。
さらに見落とされがちな観点があります。デルマタン硫酸の産生を支える「線維芽細胞の活性化」です。線維芽細胞の機能を維持するためには、以下のような日常習慣が基本になります。
| 習慣 | 理由 |
|---|---|
| 紫外線対策(日焼け止め・日傘) | 活性酸素(ROS)が線維芽細胞を傷つけ、GAG産生を低下させる |
| 抗酸化食品の摂取(ビタミンC・Eなど) | 線維芽細胞の酸化ダメージを軽減する |
| 禁煙・節酒 | 喫煙・アルコールはコラーゲン・GAG産生を加速度的に低下させる |
| タンパク質・ビタミンCを含む食事 | コラーゲン・デルマタン硫酸の材料となる栄養素を補給する |
肌の外側からのケアと内側からのケアを組み合わせることが大切です。デルマタン硫酸そのものの構造を知っていれば、化粧品の成分表示を見たときに「これはコラーゲンの整列を助ける成分だ」と理解できるようになります。成分名を覚えておくだけで、化粧品選びの質が変わります。
参考:コンドロイチン硫酸Naの保湿メカニズムと安全性について詳細なデータが掲載されています。
コンドロイチン硫酸Naの基本情報・配合目的・安全性(化粧品成分オンライン)
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