
でん粉は、植物の地下茎や種子から作られる炭水化物の粉の総称です。米、小麦、とうもろこし、じゃがいもなど、様々な植物から抽出されます。でん粉は植物にとって重要なエネルギー源であり、人間の食生活においても欠かせない栄養素となっています。
でん粉の主な種類には以下のものがあります。
これらのでん粉は原料によって性質が異なり、料理の用途によって使い分けられています。例えば、コーンスターチはお菓子作りに、片栗粉は中華料理のとろみ付けに、葛粉は和菓子に多く使用されています。
片栗粉の名前の由来は、もともとユリ科の多年草である「カタクリ」の鱗茎から採取されていたことに由来します。カタクリの鱗茎からでん粉を取り出して乾燥させたものが本来の片栗粉でした。
しかし、明治時代頃からカタクリの自生が減少したことにより、代わりにじゃがいも(馬鈴薯)から採れるでん粉が使われるようになりました。じゃがいもから採れるでん粉は、カタクリから採れるでん粉と似た性質を持ち、しかも収穫量が多く安価に生産できることから、原材料の切り替えが進んだのです。
現在市販されている片栗粉のほとんどは、じゃがいもを原料とした「馬鈴薯でん粉」です。パッケージには「馬鈴薯でん粉」と表記されていることが多いですが、一般的には「片栗粉」という名称で親しまれています。
でん粉と片栗粉の栄養成分を比較してみましょう。片栗粉(馬鈴薯でん粉)の栄養成分(100gあたり)は以下の通りです。
一方、コーンスターチや葛粉などの他のでん粉と比較すると、片栗粉はカロリーや糖質が若干低いことが特徴です。以下は100gあたりの比較表です。
でん粉の種類 | カロリー | 糖質 |
---|---|---|
片栗粉 | 338kcal | 89.9g |
コーンスターチ | 363kcal | 94.9g |
葛粉 | 356kcal | 94.2g |
タピオカ | 354kcal | 93.8g |
また、小麦粉と比較すると、片栗粉はたんぱく質や脂質がほとんど含まれていないという特徴があります。
種類 | カロリー | 糖質 | たんぱく質 | 脂質 |
---|---|---|---|---|
片栗粉 | 338kcal | 89.8g | 0.1g | 0.1g |
小麦粉 | 349kcal | 80.3g | 8.3g | 1.5g |
片栗粉の主成分は炭水化物(でん粉)で、体内に入るとブドウ糖に変換され、エネルギー源となります。炭水化物をエネルギーに変えるにはビタミンB1が必要なので、豚肉やうなぎ、大豆などビタミンB1が豊富な食材と一緒に摂取するのがおすすめです。
でん粉の最も重要な特性の一つが「糊化(こか)」です。糊化とは、でん粉に水と熱を加えることで粘度が増し、のり状になる現象を指します。この特性が料理のとろみ付けや食感の改良に活用されています。
各種でん粉の糊化温度と特性を比較すると。
でん粉の種類 | 糊化温度 | 粘度 | 透明度 | 冷めた時の変化 |
---|---|---|---|---|
片栗粉 | 56~66℃ | 強い | 無色透明 | 粘度が低下する |
コーンスターチ | 62~72℃ | 弱い | 白濁 | 粘度が持続する |
葛粉 | 70~80℃ | 非常に強い | 高い透明度 | 弾力が出る |
タピオカでん粉 | 60~70℃ | 中程度 | やや透明 | もちもち感が出る |
片栗粉は比較的低温(約60℃)で糊化するため、短時間の加熱でとろみがつきます。また、冷めると粘度が低下する特性があるため、温かいうちに食べる料理に適しています。一方、コーンスターチは冷めてもとろみが持続するため、冷たいデザートなどに向いています。
でん粉の粒子の大きさも特性に影響します。片栗粉は粒子が大きく、コーンスターチは小さいという違いがあります。粒子が大きいほど糊化しやすく、強いとろみがつきますが、粒子が小さいほど口当たりが滑らかになります。
でん粉と片栗粉の特性を理解すると、料理によって最適な使い分けができるようになります。ここでは、料理のタイプ別に最適なでん粉の選び方を紹介します。
1. とろみ付けに使う場合
2. 揚げ物の衣として使う場合
3. 肉や魚の下処理として使う場合
4. お菓子作りに使う場合
それぞれのでん粉の特性を活かした使い分けで、料理の完成度が格段に上がります。
でん粉に関する興味深い現象として、「中白障害(シロタ)」があります。これは主にサツマイモの蒸切干(干しいも)の製造過程で見られる現象で、製品の中央部が白色不透明化して硬くなり、商品価値が大きく低下する問題です。
この現象は、でん粉含有率の比較的高い品種で発生しやすく、低でん粉品種や低糊化温度品種では発生が少ないことが研究で明らかになっています。中白部分は正常部分に比べて水分含量が低く、でん粉の糊化不良や蓄積不足が関与していると考えられています。
特に「タマユタカ」という品種では、塊根肥大期の土壌乾燥によって収穫した塊根の含水率が低下すると中白の発生が顕著になります。これは土壌乾燥に伴う塊根の水分低下が蒸煮時のでん粉糊化不良を招き、障害の発生を助長するためと考えられています。
この現象は、でん粉の性質と水分の関係を示す興味深い例であり、でん粉を含む食品の品質管理において重要な知見となっています。家庭での調理においても、でん粉を使う際は適切な水分量を確保することが、良い仕上がりのためのポイントになります。
片栗粉などのでん粉でとろみをきれいにつけるには、いくつかのコツがあります。これらを押さえることで、ダマのないなめらかなとろみが実現できます。
1. 水溶き片栗粉の作り方
片栗粉は料理に直接加えるとダマになりやすいため、あらかじめ水で溶いておくことが重要です。
2. 水溶き片栗粉の加え方
3. 加熱のポイント
4. 料理別のとろみの調整
5. 失敗した場合の対処法
これらのコツを押さえることで、プロのようなきれいなとろみを実現できます。特に中華料理や和食のあんかけ料理では、とろみの質が料理の完成度を大きく左右するので、ぜひマスターしてください。
片栗粉を切らしてしまった場合や、より適した食感を求める場合には、他のでん粉や粉類で代用することができます。ここでは、代用品とその使い分けのポイントを紹介します。
【とろみ付けの代用品】