

チョロギはシソ科の多年草で、食べるのは地中で育った塊茎(かいけい)部分です。見た目が巻貝のように節が連なるのが特徴で、おせちでは梅酢などで赤く漬けたものを見かけます。赤い「おせちの飾り」扱いに見えても、実際は縁起の意味を背負った食材です。
おせちにチョロギが入る意味としてよく語られるのは、できる限り健康で長生きする「健康長寿(不老長寿)」の願いです。さらに「長老喜」「長老木」「千代呂木」など、“長寿”や“長く喜ぶ”を連想させる当て字が多いこと自体が、縁起物としての根拠になっています。言葉の縁起を食べ物に乗せるのはおせち全体の発想と相性がよく、チョロギはその代表例のひとつです。
参考)https://www.shop.post.japanpost.jp/column/osechi/osechi_chorogi.html
ここで料理する人向けに押さえたいのは、「意味を説明できると盛り付けが決まる」という点です。たとえば、ただの赤い箸休めとして置くのではなく、「長老喜=長寿の願い」を黒豆の横に添えるだけで、食卓での会話が生まれやすくなります。味が主張しすぎない淡泊さも、縁起の“飾り役”に向く理由です。
参考)【おせちの縁起物!】チョロギの特徴やお正月に食べる由来とは
チョロギが黒豆に添えられる定番の形には、意味の“掛け算”があります。黒豆には「まめに働く(勤勉に暮らす)」という願いがあり、そこにチョロギの「健康長寿」を足して、「健康でまめに長く働けるように」というセットの縁起にする、という考え方です。黒い豆に赤いチョロギを添えることで、見た目のコントラストが締まり、重箱の中で目印にもなります。
料理面で見ると、黒豆が甘くねっとり寄りの食感になりやすいのに対して、チョロギはサクサク(またはパリッ)系で、口の中が切り替わります。つまり縁起だけでなく、食感の役割としても相性がよい組み合わせです。おせちの箸休め要員として、甘い→塩気→甘いの流れを作りたいとき、チョロギはかなり便利です。
また、チョロギは「1つの種から多くの塊茎が収穫できる」ことから、子孫繁栄の願いも込められると説明されることがあります。黒豆(勤勉)+チョロギ(長寿・繁栄)で、働き方や家の願いまで含めた“お正月のメッセージ”にできるのが、おせちの面白さです。
参考)https://www.dinos.co.jp/osechi_s/column/chorogi/
おせちに入るチョロギが赤いのは、掘り起こした直後が白っぽい塊茎であるのに対し、梅酢などに漬けて色を移しているからです。赤く染めたチョロギは、黒豆の隣で目立たせる役割がある一方、赤は「魔除け」の色とされる、という説明もされています。料理の色づかいが、そのまま縁起の演出になるわけです。
家庭でやるなら、見た目をきれいにするために「汚れ落とし」と「塩漬け(食感づくり)」が重要になります。チョロギは節が多く、土が残りやすいので、ボウルの中でやさしく振り洗いしつつ、必要なら短時間の下ゆでを挟むと扱いやすいです。塩漬け→塩抜き→梅酢、の流れでパリッとした歯ごたえを狙う考え方は、漬物としてかなり理にかなっています。
参考)真っ赤な縁起物!「チョロギ」の産地や育て方、レシピまで解説 …
さらに、おせちの「詰め方」の観点も押さえると上司チェックに強い文章になります。酢の物系として扱われ、五段重なら二の重に詰める、という目安が紹介されています。大量に主役として入れるより、できた隙間に“赤のアクセント”として入れると、意味も見た目も活きます。
参考:チョロギの赤色(梅酢)や重箱(二の重)など、おせちでの扱い方
https://www.dinos.co.jp/osechi_s/column/chorogi/
チョロギは淡泊でクセが少なく、サクサクした歯触りが特徴とされます。梅酢漬けはユリ根に似た食感と表現されることがあり、加熱するとホクホク寄りにも変化します。つまり「漬物の箸休め」で終わらせず、料理素材として幅を持たせられる野菜です。
調理の方向性は大きく2つに分けると整理しやすいです。
野菜を料理する人向けの実務ポイントとしては、「おせちの中での役割」を決めて仕上げを寄せるのがコツです。例えば、黒豆の横に添える前提なら、梅酢漬けの酸味は強すぎないほうがよく、塩抜きの時間と梅酢の濃さで調整しやすいです。逆に単品で箸休めとして成立させたいなら、梅酢の香りを立てる方向に振るなど、狙いを分けると味がぶれません。
チョロギの名称は諸説あり、中国語由来とする説や、朝鮮語でミミズを意味する語が転じたとする説などが紹介されています。つまり「長老喜」という縁起の良い当て字は、意味の“後づけ”として広まった側面もあり、そこが民俗として面白い点です。料理の現場では、この“言葉の変遷”を一言添えるだけで、食卓の雑談がワンランク上がります。
さらに栄養面では、チョロギの塊茎にスタキオースというオリゴ糖(食物繊維の一種として扱われることもある)が豊富で、乾燥重量で63%程度という記述があります。オリゴ糖は小腸で吸収されにくく大腸まで届き、腸内細菌の餌になることが知られている、とされます。ここまで言えると「縁起だけの飾り」ではなく、食材としての説得力が増します。
最後に“料理人としての独自視点”として提案したいのは、チョロギを「意味のあるガーニッシュ」として設計することです。黒豆の横に“とりあえず赤いもの”として置くのではなく、①長老喜(長寿)②魔除けの赤③サクサク食感、の3点セットを意識して量と位置を決めると、おせちの完成度が上がります。小さな食材でも意味と機能が揃うと、重箱全体の説得力が変わります。