ボツリヌス菌食材の特徴と予防法

ボツリヌス菌食材の特徴と予防法

ボツリヌス菌と食材

ボツリヌス菌の食材汚染について
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自然界に広く分布

土壌、河川、海水に芽胞として存在し、食材汚染の原因となる

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嫌気性環境で増殖

真空パックや缶詰などの酸素が少ない環境で毒素を産生

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自然界最強の毒性

ボツリヌス毒素は自然界に存在する毒素の中で最も強力

ボツリヌス菌の食材における特徴と分布

ボツリヌス菌は土壌、河川、海水、動物の腸管など自然界に広く分布している芽胞形成菌です。この菌の最大の特徴は、芽胞状態では通常の調理による加熱では死滅しないという点にあります。芽胞は120℃で4分間、または100℃で6時間以上の加熱でなければ完全に死滅しません。
参考)https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/micro/boturinu.html

 

食材への汚染は避けられない現実であり、魚介類の体内や畑で育てた野菜など、あらゆる食材に芽胞が含まれている可能性があります。特に注目すべきは、この菌が嫌気性(酸素を嫌う)であることです。酸素に触れている環境では増殖しませんが、真空パック、缶詰、瓶詰などの密封された食品では活発に増殖し、毒素を産生します。
参考)https://kaigo-postseven.com/185443

 

国際的な研究では、野菜類(ジャガイモ、ニンジン、トマト)からもBacillus属の細菌が検出されており、食材の広範囲な汚染が確認されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10095821/

 

ボツリヌス菌が増殖しやすい食材環境

ボツリヌス菌の増殖には特定の環境条件が必要です。まず、酸素の少ない嫌気性環境が必須で、pH4.6以上(第Ⅰ群菌)、pH5.0以上(第Ⅱ群菌)の条件で発育します。温度については、第Ⅰ群菌が10℃以上、E型菌は3.3℃以上で増殖が可能です。
参考)https://www.city.niigata.lg.jp/iryo/shoku/syokuei/shokucyudokuinfo/botsurinusu.html

 

真空包装辛子蓮根を用いた実験では、10℃、15℃保存では菌の増加が見られなかったのに対し、25℃保存では保存7日後から菌の増殖と毒素が検出され、15日後には大量の毒素産生が確認されました。このことから、温度管理の重要性が明らかになっています。
参考)https://www.fsc.go.jp/fsciis/attachedFile/download?retrievalId=kai20170724bv1amp;fileId=210

 

過去の食中毒事例を見ると、以下のような食品が原因となっています。

  • 自家製の缶詰・瓶詰食品(野菜、果物)
  • 発酵食品(いずし、からし蓮根、ハスずし)
  • 真空パック食品(レトルト類似品)
  • ハチミツ(乳児ボツリヌス症の原因)

興味深いことに、市販のレトルトパウチ食品や多くの缶詰は適切な加熱殺菌が行われているため安全ですが、見た目が似ている容器包装食品でも冷蔵保存が必要なものがあります。
参考)https://www.city.utsunomiya.lg.jp/kurashi/eisei/shokuhin/chudoku/1005522.html

 

ボツリヌス菌食材の毒素産生メカニズム

ボツリヌス菌が食材中で毒素を産生するプロセスは段階的に進行します。まず、芽胞が適切な環境条件(嫌気性、適温、適切なpH)下で発芽し、栄養細胞として増殖を開始します。この際に産生される毒素は、自然界に存在する毒素の中で最強の毒力を持つとされています。
参考)https://www.mhcl.jp/workslabo/hatena/botulinum01

 

毒素の種類はA型からH型まで8つのタイプがあり、人に病原性を示すのはA、B、E、F型です。日本で確認されるボツリヌス症の多くはE型が原因となっています。
参考)https://h-crisis.niph.go.jp/archives/83336/

 

食材中での毒素産生には以下の条件が必要です。

  1. 食品がボツリヌス菌によって汚染されること
  2. 競合する細菌が減少すること
  3. 嫌気条件、適切なpH、水分活性などの条件が整っていること
  4. 10℃以上の温度で長期間保存されること
  5. 喫食前に加熱工程がないこと

この毒素は神経毒として作用し、摂取後通常12~72時間で吐き気、嘔吐、脱力感、視力障害、嚥下困難などの神経症状を引き起こします。重症化すると呼吸麻痺により死亡する危険性があります。
参考)https://www.pref.osaka.lg.jp/o100110/shokuhin/shokutyuudoku/botulinum.html

 

ボツリヌス菌食材の予防と安全管理

ボツリヌス菌による食中毒を防ぐための基本的な対策は、食材選びから保存、調理まで多段階にわたります。まず、新鮮な食材を選び、十分に洗浄することが重要です。土壌由来の芽胞を可能な限り除去するため、特に根菜類や葉菜類は念入りな洗浄が必要です。
参考)https://www.city.kyoto.lg.jp/hokenfukushi/page/0000118425.html

 

保存方法については以下の点が重要です。
温度管理

  • 3℃未満では菌の増殖と毒素産生が阻害されます
  • 自家製の保存食品は必ず冷蔵または冷凍保存
  • レトルト類似食品の保存表示を必ず確認

食品の状態確認

  • 真空パックや缶詰の異常膨張をチェック
  • 開封時の「シュッ」という音や中身の飛び散りに注意
  • 腐敗臭やブルーチーズのような異臭があれば絶対に摂取しない

加熱処理
毒素は熱に不安定で、80℃で30分間、または85℃で5分間以上の加熱により不活性化されます。食べる直前の十分な加熱が効果的な予防策となります。
参考)https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2017/10251312.html

 

亜硝酸ナトリウムなどの食品添加物による予防も効果的で、ハムやソーセージなどの加工食品では広く利用されています。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9C%E3%83%84%E3%83%AA%E3%83%8C%E3%82%B9%E8%8F%8C

 

ボツリヌス菌食材による乳児への特別な影響

1歳未満の乳児におけるボツリヌス症は、成人の食餌性ボツリヌス症とは異なるメカニズムで発症します。乳児の腸内環境は未成熟で、成人と比較してボツリヌス菌の影響を受けやすい状態にあります。
参考)https://h-crisis.niph.go.jp/archives/84331/

 

ハチミツは乳児ボツリヌス症の主要な原因食品として知られており、厚生労働省からも1歳未満の乳児への摂取を控えるよう注意喚起がなされています。ハチミツ以外にも、自家用井戸水や自家製野菜スープが原因とされる症例も報告されています。
参考)https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/f_encyclopedia/clostridium.botulinum.html

 

乳児ボツリヌス症のメカニズムは以下の通りです。

  • 芽胞が乳児の腸管内に到達
  • 腸内で発芽・増殖し毒素を産生
  • 産生された毒素により中毒症状が発現

日本国内での乳児ボツリヌス症は稀な疾患ですが、散発的に報告が続いています。症例の多くでハチミツの摂取歴があり、ハチミツからもボツリヌス菌が検出されることから、原因食品として重要視されています。
参考)https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ha/botulinum/index.html

 

予防策として、1歳未満の乳児には以下の食品を与えないことが推奨されます。

  • ハチミツ
  • ハチミツ入りの離乳食
  • ハチミツ入りの飲料・お菓子
  • 自家製の発酵食品

興味深い研究として、日本の伝統発酵食品である納豆に含まれるBacillus subtilis DG101が、実はプロバイオティクスとしての機能を持ち、健康に有益な効果をもたらすことが報告されています。これは同じBacillus属でも種類により全く異なる性質を示すことを示唆しており、食材と微生物の関係の複雑さを物語っています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10569484/

 

ボツリヌス菌と食材の関係を正しく理解し、適切な予防措置を講じることで、この危険な食中毒から身を守ることができます。食材選びから保存、調理まで、一連のプロセスにおける知識と注意が、安全な食生活の基盤となります。