

皮を剥くと栄養が3分の2近く消えてしまいます。
スーパーで並ぶ一般的なかぼちゃといえば、扁平な円形で濃い緑色の「えびすかぼちゃ」を思い浮かべる方が多いでしょう。赤皮栗かぼちゃはその名の通り、まったく異なる外見をしています。果皮は鮮やかな朱橙色で、形はヘタの部分に向かってきゅっと尖った、玉ねぎやラグビーボールに似た円錐栗型です。
大きさは1個あたり1kg前後が標準。A4用紙の短辺(21cm)ほどの高さで、手のひらにちょうど収まるくらいのサイズ感です。えびすかぼちゃが2〜3kgになることと比べると、明らかにひと回り以上小さいことがわかります。
表面にはうっすらと縦溝が入っており、ツルっとした質感です。皮は薄く柔らかい点も、一般的な黒皮のかぼちゃとの大きな違い。色の濃さとツヤがあるものほど熟している証拠で、ヘタ部分がコルク状に乾燥しているものは追熟が進んで甘みが増しているサインです。
この見た目のユニークさが、料理の彩りとしても高く評価されてきた理由のひとつ。皮の朱色は加熱するとオレンジ色に変化しますが、色抜けではなくカロテノイド色素の自然な変化のため、料理全体を温かみのある明るい色合いに仕上げてくれます。
加賀野菜の品目紹介(金沢市農産物ブランド協会):打木赤皮甘栗かぼちゃの形状・栽培情報・品質基準が詳しく解説されています。
「栗かぼちゃ」という名前から、ホクホクした食感を期待する方は多いです。しかし、赤皮栗かぼちゃは一般的な黒皮栗かぼちゃとは食感が異なります。
果肉は水分量が多く、日本かぼちゃと西洋かぼちゃの中間に位置する「粘質」タイプ。一般的なえびすかぼちゃのようにパラっとほどける粉質ではなく、しっとり・ねっとりとした口当たりです。つまり粘質系の食感が基本です。
甘みは控えめで上品。計測された糖度は約9%とされており、これは甘みが強すぎず、出汁や調味料の味となじみやすい数値です。かぼちゃ特有の青臭さや土臭さがほとんどなく、子どもや「かぼちゃが少し苦手」という方でも食べやすい味わいとして評価されています。
この粘質でしっとりした特性のおかげで、煮物にしても煮汁となじみやすく、煮崩れも起きにくいという調理メリットがあります。また、ミキサーにかけるとクリーミーになりやすいため、スープやポタージュにも非常に向いています。ポタージュ作りで裏ごし不要なほどなめらかになるのは、この粘質ならではの特性です。
| 比較項目 | 赤皮栗かぼちゃ | えびすかぼちゃ(黒皮) |
|---|---|---|
| 皮の色 | 朱橙色 | 濃い緑色 |
| 形 | 玉ねぎ型(円錐栗型) | 扁平な円形 |
| 重さ | 約1kg | 約2〜3kg |
| 食感 | しっとり粘質系 | ホクホク粉質系 |
| 皮の硬さ | 薄くて柔らかい(皮ごと食べられる) | 厚くて硬い |
| 甘さ | 控えめ・上品 | 強め |
赤皮栗かぼちゃは西洋かぼちゃの一種です。西洋かぼちゃの栄養価は高く、βカロテン・ビタミンC・ビタミンE・食物繊維・カリウムを豊富に含んでいます。特にβカロテンの含有量は日本かぼちゃの5倍以上とされており、これは体内でビタミンAに変換され、皮膚や粘膜の健康維持・免疫力アップ・目の健康に役立ちます。
ここで見落とされがちな重要な事実があります。かぼちゃの皮には果肉の約2〜3倍ものβカロテンが含まれているという点です。つまり、皮を厚く剥いてしまうと、せっかくのβカロテンの大部分を捨てていることになります。
赤皮栗かぼちゃは皮が薄く柔らかいため、皮ごとそのまま調理できます。これが栄養の観点からも大きなメリットです。皮ごと食べると、βカロテンのほかビタミンCや食物繊維も余すことなく摂取できます。
また、βカロテンは脂溶性の栄養素のため、油と一緒に調理することで吸収率が高まります。炒め物やオイルを使ったソテー、バターで炒めてからスープにするなどの調理法が、栄養をより効率よく摂れる食べ方です。
これらの栄養素は相互に補い合う関係にあります。特にビタミンA・C・Eは「三大抗酸化ビタミン」と呼ばれ、活性酸素の働きを抑えてアンチエイジングにも効果が期待されています。日々の料理に赤皮栗かぼちゃを取り入れるだけで、食卓の彩りと栄養価の両方を一度に底上げできます。
かぼちゃの栄養(カゴメ):西洋・日本・ペポかぼちゃの種類別栄養成分比較が詳しく掲載されており、βカロテン量の違いの根拠として参考になります。
赤皮栗かぼちゃの旬は7月〜9月頃、夏から秋にかけてです。この時期に最も市場へ出回り、鮮度も風味も最良の状態で手に入ります。
産地として有名なのは石川県金沢市の打木地区です。この品種の正式名称「打木赤皮甘栗かぼちゃ(うつぎあかがわあまぐりかぼちゃ)」は、その地名に由来しています。誕生の歴史をたどると、1916年(大正5年)頃に福島県会津で育成された西洋かぼちゃの走り品種「赤皮栗」が原点です。その後、1933年(昭和8年)に金沢市打木町の篤農家・松本佐一郎氏が会津から種を持ち込み、着果性や色味の良いものを選抜育成しました。戦後に正式に発表された品種です。
その後、京阪市場でも人気を博しましたが、ホクホク食感の「えびすかぼちゃ」が台頭したことで一時は市場から姿を消しかけました。近年の伝統野菜ブームにより再び注目が集まり、加賀野菜のひとつとして認定されています。
「加賀野菜」とは金沢市農産物ブランド協会が認定した金沢市の伝統野菜ブランドのことで、15品目が指定されています。正規の加賀野菜として出荷されるものにはブランドシールが貼られており、品質が保証されています。一方、この品種は固定種(種が一般販売されている)なので、家庭菜園で自分で育てることも可能です。金沢産ブランド品以外にも、ネット通販や直売所で購入できるケースが増えています。
保存性が高いのもメリットのひとつ。丸ごとの場合は風通しの良い冷暗所で1〜2ヶ月の保存が可能で、その間に追熟が進んでさらに甘みが増します。これは、保存中にでんぷんが糖に変換されるためです。すぐ使わなくても、置いておくほど味が深まるのは主婦にとって嬉しいポイントです。
旬の野菜百科(フーズリンク):打木赤皮甘栗かぼちゃの産地・歴史・収穫時期・旬の詳細情報が豊富に記載されており、歴史的背景の参考になります。
赤皮栗かぼちゃは「しっとり粘質」という性質を活かす調理法と、残念ながら逆効果になってしまう調理法があります。この違いを知っておくと、料理の完成度が大きく変わります。
まず覚えておきたいのは、「煮過ぎNG」という点です。煮崩れしにくいとはいえ、長時間グツグツ煮込むと形が崩れ、せっかくの皮の美しい色も褪せてしまいます。煮物にする場合は、「静かに煮含める」感覚が正解です。短時間でさっと火を入れ、あとは余熱で中まで火を通す方法が、色・食感・甘みをすべて保てるコツです。
【煮物】出汁・醤油・みりん・砂糖でシンプルに。薄味に仕上げると赤皮栗かぼちゃ本来の甘みが生きます。煮汁となじみやすいのでしっとり味がしみた仕上がりになります。皮のオレンジ色と果肉の黄色のコントラストが盛り付けを美しくします。
【ポタージュスープ】しっとり粘質の特性が最も活きる調理法がこれです。加熱後にミキサーにかけると裏ごし不要なほどクリーミーに仕上がります。玉ねぎと一緒に炒めてブイヨンで煮てからミキサーへかけ、牛乳または生クリームを加えるだけで、鮮やかなオレンジ色のポタージュが完成します。
【お菓子・スイーツ】クセが少なく上品な甘みを持つ赤皮栗かぼちゃは、砂糖を控えめにしたい健康志向のスイーツにも向いています。加熱してマッシュしたものを生地に練り込めば、パウンドケーキ・マフィン・プリン・チーズケーキ等が鮮やかなオレンジ色に仕上がります。市販のかぼちゃパウダーを使う方法もありますが、旬の時期に生の赤皮栗かぼちゃを冷凍しておくと、コスパよく年間を通じて使えます。
【炒め物・詰め物】小ぶりなサイズを活かして丸ごとくり抜きの詰め物料理にも使えます。余分な甘さが少ないのでチーズやひき肉との相性も良く、洋風の詰め物グラタンにすると見栄えが抜群です。また、油と一緒に炒めることでβカロテンの吸収率が上がるため、きんぴら風の炒め物や天ぷらも栄養面でおすすめの調理法です。
旬の時期(7〜9月)に大量購入して冷凍保存しておくと経済的です。冷凍する場合は種とワタを除いて食べやすい大きさにカットし、生のまま冷凍するか、加熱してマッシュしてから小分けにして冷凍しておくと、いつでもスープやお菓子作りにすぐ活用できます。これが一番賢い赤皮栗かぼちゃの活用術です。
サカイダフルーツ(打木赤皮甘栗かぼちゃの通販・料理情報):しっとり食感の特徴と料理への活用法、成熟日数など実践的な情報が紹介されています。