

熊本の雑煮(肥後雑煮)で語られやすいのが、昆布やかつお節だけに寄せない、するめ・煮干しなども含めた「旨味の層」です。水前寺もやし自体はクセが強い食材ではないので、だし側に厚みを作るほど、椀の中で“豆の甘みと歯ごたえ”が輪郭を持ってきます。
だしの考え方は大きく2つに分けると整理しやすいです。
・すまし寄り:昆布+(かつお節/煮干し)で透明感を優先し、うす口しょうゆ+塩で整える(具材の香りが立つ)
参考)びっくりするほど多種多様!あなたのおうちはどんなお雑煮?
・濃厚寄り:昆布+するめ(+鶏)で旨味を引き出し、しょうゆで香り付けする(正月の“ごちそう感”が出る)
参考)九州のお雑煮松本栄文さんの地域の文化を味わう「お雑煮図鑑」
意外に効く小技は「だしを強くしすぎない」ことです。するめや煮干しは長時間で旨味が出る一方、煮詰めると塩気より先に“濃さ”が前に出て、もやしの清涼感が埋もれます。味見は、仕上げ直前に“餅を入れた状態の塩分”で決めるとブレにくいです(餅の存在で体感の塩分が下がるため)。
参考:熊本雑煮の特徴(するめ・昆布出汁、具材に水前寺もやし等)
九州のお雑煮松本栄文さんの地域の文化を味わう「お雑煮図鑑」
水前寺もやし入りの雑煮は、具材が「根菜+鶏+青菜」の構成になりやすく、椀の中で食感が散らばるのが魅力です。一般的な具材例として、鶏もも肉・大根・ごぼう・にんじん・里芋・京菜・しいたけ等が挙げられています。
具材の役割を分けて考えると、味の設計が簡単になります。
・甘み担当:にんじん、里芋(だしが丸くなる)
・香り担当:ごぼう、しいたけ(椀を開けた瞬間の印象)
・旨味担当:鶏もも肉、ちくわ等(正月らしい“だしの芯”)
参考)熊本風雑煮 レシピ 渡辺 あきこさん|みんなのきょうの料理
・清涼感担当:京菜、水前寺もやし(後味を軽くする)
水前寺もやしは「大豆が付いたまま」「全長が長い」点が料理の設計に直結します。つまり、細い具材としてではなく、“一本が主役の具”として場所を取る前提で、他の具材は小さめに切って散らすほうが椀の中がまとまりやすいです。
参考:水前寺もやしの来歴・特徴(湧水利用、25〜30cm、師走の短期流通など)
https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/276400.pdf
水前寺もやしで失敗が起きやすいのは、味付けより「扱い方」です。縁起物として“長さ”が意味を持つため、調理の際に折ったり切ったりしない、という前提がよく語られます。
下茹での目的は2つあります。
・香りの整理:土や藁に由来する香りを落ち着かせ、だしの香りを立てる。
・火入れの分離:雑煮の本鍋で長く煮ないようにして、シャキシャキ感を残す。
具体的な段取りは、家庭の鍋サイズで調整します。
「結ぶ」かどうかは家庭差がありますが、結ぶ場合は“柔らかくしてから結ぶ”より、“下茹でで折れにくい弾力が出たタイミングで結ぶ”ほうが形がきれいに残ります。結び目があると、椀の中で箸が迷子になりにくく、食べる側のストレスも減ります。
水前寺もやしは、師走の短い期間に出回る前提の食材です。熊本県の資料では「12月末に熊本市内のスーパー、百貨店等で入手可能」で、正月の雑煮用として出回る期間が短い旨が明記されています。また、生産・収穫が年1回で12月末のみ、という現場の説明もあります。
この“時間制限”があるからこそ、料理の設計は当日勝負にしないのが安全です。おすすめの作戦は次の通りです。
・買えた日:水前寺もやしは洗って下茹でまで進め、他の根菜も切って保存(正月当日の作業を減らす)
・前日:だし(昆布+するめ等)を作る場合は前日仕込みに回すと、当日の味決めが早い
参考)https://ameblo.jp/funkysomurie/entry-12782315047.html
・当日:本鍋は「具材→餅→水前寺もやし」の順で、もやしの加熱を最短にする
さらに意外なポイントとして、入手性が不安定な年は“代用品で練習する”発想が役に立ちます。水前寺もやしが買えない場合に大豆もやしで代用した例も語られており、食感の設計(最後に入れる、煮すぎない)だけでも事前に体で覚えておくと本番で迷いません。