

歯が抜けると声が出なくなるのではなく、声が強すぎて歯が抜けることがあります。
system-Bは、2001年1月8日よりテレビ東京系列で放送開始したアニメ『爆転シュートベイブレード』の主題歌を担当したユニットです。このアニメは、ベイブレード(コマ)を使ったバトルをテーマにした作品で、当時小学生を中心に爆発的な人気を誇りました。
注目すべきは、system-Bが「1つのグループ・1人の歌手」ではないという点です。オープニングテーマ「Fighting Spirits -Song for Beyblade-」を歌ったのはVo.吉越由美、一方エンディングテーマ「CHEER SONG」を担当したのはVo.大友ジュン(本名:井上純一)という、2人のボーカリストが同じユニット名義で活動していました。つまりsystem-Bという名前の中に、異なる歌手が存在していたわけです。意外ですね。
「Fighting Spirits -Song for Beyblade-」は2001年3月21日にシングルリリースされ、作詞・作曲は山田正人氏が担当。勇壮で力強いサウンドは、当時の子どもたちの心を一気に掴みました。「夢追いかけて闘い続けろ 愛と勇気と友情」という歌詞が示す通り、少年バトルアニメの主題歌として絶大な支持を受けた楽曲です。
大友ジュン(井上純一)は1977年5月16日生まれ、東京都中野区出身。明治大学経営学部の音楽サークル「BEAT-CLUB」でのバンド活動を経て、ライブハウス「新宿HEAD POWER」でスカウトされました。2001年のsystem-B活動後、2006年にはベルウッド・レコードよりミニアルバム『遠い空』で大友ジュン名義のCDデビューも果たしています。さらに2015年からはボイストレーナーとしても活動を広げており、歌唱表現の研究・指導を続けています。
歌手として活動するだけでなく、発声・口腔機能の専門家としての側面も持つ大友ジュンの経歴は、歯科従事者にとっても学びの多い事例と言えます。つまり「歌手=口腔の専門的な使い手」という視点が基本です。
大友ジュン(system-Bボーカル)の詳細プロフィール - Wikipedia
アニソン歌手として活動した大友ジュンは、その後ボイストレーナーとしての道も歩みます。発声のプロが最も重視するのは、実は「口の中の環境」です。これは歯科従事者が日々患者さんに伝えていることと、深くリンクしています。
声優・歌手の内田雄馬さんは、声のプロとしての口腔ケアについてこう語っています。「上あごの柔らかい部分を軟口蓋(なんこうがい)というのですが、トレーニングしていないとそこが下がってきます。声を出す時には、軟口蓋を引っぱるように意識しますね。ちゃんと上がっていれば、声の抜けもよくなり、口がよく回るようになります」(SUNSTAR「クラブサンスター」インタビューより)。口腔内の構造が声に直結するということです。
歯並びや噛み合わせも、発声に大きく影響します。たとえば開咬(かいこう)のある方は、前歯が噛み合わず発音時に空気が漏れ、滑舌や歌唱の質に影響が出ます。歯並びの矯正を行った際には、舌の動きが変化し、1〜2週間は発音に違和感が生じることも珍しくありません。歯科治療が歌手のパフォーマンスに直接関わる場面があるということですね。
また、ドライマウス(口腔乾燥症)は歌唱パフォーマンスに深刻な影響を与えます。唾液の減少により声帯が乾燥し、かすれ声やひび割れた声の原因になることが、音楽歯科の現場でも確認されています。口やのどが乾燥すると呼吸のコントロールが難しくなり、安定した発声が困難になるとされています。これは使えそうです。
歌手にとって、唾液の分泌を促すケア・鼻呼吸の習慣・ストレス管理は、単なる健康管理ではなくパフォーマンスの維持そのものです。歯科従事者がドライマウスの説明をする際、「歌手のような声のプロも同じリスクを抱えている」と伝えることで、患者さんの理解度が格段に上がる可能性があります。
音楽をする方のドライマウス対策 - 横浜・中川駅前歯科(音楽歯科の専門情報)
歯科従事者にとって特に興味深いのが、「キセキ」「愛唄」などの大ヒット曲で知られるGReeeeN(現:GRe4N BOYZ)の存在です。メンバー全員が歯科医師免許を保有しており、歯科医師として働きながら音楽活動を続けてきたという、唯一無二のバックグラウンドを持っています。
GReeeeNが顔出しを一切しない理由は「演出」ではなく、「医療倫理と患者との信頼関係への配慮」からきています。歌手として表に出ることが、歯科医師としての患者関係に影響しかねないという判断からです。歯科医師として患者を守ることと、アーティストとして表現することを両立するための選択が、この「顔なし」スタイルだったわけです。
GReeeeNのユニット名の「e」が4つある理由も、歯科と深く結びついています。4つの「e」はそれぞれ18度に傾いており、「1=いい」「8=歯」を表す「いい歯」の意味が込められているとされています。アーティスト名の中に歯科への思いを隠した、こだわりのある命名です。
system-Bの歌手・大友ジュンがボイストレーナーとして発声と口腔の関係を深めていったように、GReeeeNは歯科医師として口腔の専門家でありながら歌声を通じて人々に届け続けました。「口腔ケアのプロ」と「声のプロ」の交差点に立つ存在として、歯科従事者にとって非常に参考になる事例です。
なお、GReeeeNは2024年に「GRe4N BOYZ」として活動を再開し、現在も音楽と歯科医師の「二刀流」を継続しています。歯科の世界で生きながら音楽で人を笑顔にするという姿勢は、職場のモチベーション向上にも参考になるエピソードです。
GReeeeNはなぜ歯医者?音楽と医療を両立する異色アーティストの背景 - 山路歯科
声のプロとして知られる歌手ですが、歯科的に最も驚くべき事実があります。それは、オペラ歌手が自分の声の音量と振動によって、突然前歯が抜けてしまうケースが実際に存在するという点です。
本格的な発声が身についたオペラ歌手ほど、声の発声の勢いが強くなり、その音の振動が歯の根に伝わり続けることで、歯周組織にダメージを与えることがあります。これほど激しい話ですね。世界的なオペラ歌手の中丸三千繫さんは、開演の2時間前に突然前歯が抜けてしまったという経験を持ちます。本場イタリアのオペラ劇場に専属歯科医が常駐している理由は、まさにここにあります。
ただし、これはあくまでオペラのような極めて強い発声を長年続けた場合のケースです。通常のアニソン歌手(system-Bのような)や声優の場合、発声の圧力がここまで大きくなることはありません。一般歌手は問題ありません。
しかし、歯科従事者として注目すべきは「振動・圧力・歯周組織へのダメージ」という視点です。日常的にも歯ぎしり(ブラキシズム)や食いしばりで同様のメカニズムが働いており、声楽とブラキシズムはともに「過剰な力による歯のダメージ」という共通点があります。患者さんへの説明の際、オペラ歌手の事例を引用するとイメージが湧きやすく、口腔ケアの重要性を視覚的に伝えることができます。
また、アニソン歌手や声優などの「声のプロ」が患者として来院した際には、歯列矯正や補綴治療を行う際に「発声・滑舌への影響」を十分に考慮した治療計画を組む必要があります。治療が声のプロのキャリアに影響する可能性があるからです。ここが条件です。
オペラ歌手は歯が悪い?声で歯が抜ける仕組みを解説 - とがみ歯科
system-Bの歌手たちが活躍した2000年代以降、「音楽歯科」という専門分野が注目を集め始めています。これは、管楽器奏者・弦楽器奏者・歌手・声優など「口を使ってパフォーマンスする職業」の人々に特化した歯科診療の考え方です。一般的な歯科治療と重なる部分も多いですが、治療の優先順位や素材の選択基準が異なる点がポイントです。
たとえば、フルートやトランペットなどの管楽器奏者の場合、マウスピースとの密着感が演奏の質に直結します。口唇が乾燥していたり、補綴物の形態が変わったりすることで、音色が変わってしまうケースがあります。歌手においても、舌の位置・歯の形・噛み合わせが発声の安定性に影響します。歯科処置が音楽のパフォーマンスを左右するわけです。
「音楽歯科」の視点では、次のような配慮が求められます。
system-Bのような歌手がいるからこそ、アニソンやポップスの歌唱スタイルにも「声帯・口蓋・歯列」への継続的な負荷がかかっていることを、歯科従事者は意識しておきたいものです。2015年からボイストレーナーとして活動している大友ジュン自身も、「声と身体は連動している」という立場から、口腔ケアの重要性に触れる場面があります。
歯科従事者として患者に「なぜ口腔ケアが必要なのか」を伝える際、「歌手や声優は口腔管理を怠ると仕事を失う」という具体的な文脈を使うのは非常に効果的です。これは使えそうです。自分ごととして理解してもらうための橋渡しとして、system-Bのような歌手の話題を活用することは、コミュニケーションツールとしても有効と言えます。
ドライマウスの患者さんへのアドバイスとして、「こまめな水分補給(カフェイン・アルコール・糖分を含まない水や麦茶が最適)」「鼻呼吸の意識」「ガムを噛む習慣による唾液分泌の促進」などを組み合わせた指導法は、歌手の現場でも使われているドライマウス対策とほぼ一致します。歌手のケア習慣を「患者指導の事例」として引用できる場面も少なくありません。
口腔ケアの目的は、歯を守ることだけではありません。声を守り、表現を守り、生活の質を守ることに直結しています。system-Bの歌手たちが届けた「夢追いかけて闘い続けろ」というメッセージは、歯科の世界でも「口腔の健康を守り続けることが、その人の表現と人生を守る」というメッセージと重なっています。結論は「口腔ケアは声と人生を守る」です。