

シャンツァイとパクチーの「違い」は、品種が別というより、同じ植物をどの言語・文化圏の呼び名で呼ぶかの違いとして理解すると整理しやすくなります。東邦大学の薬用植物園の解説では、中国では香草「シャンツァイ」と呼ばれてスープや麺類、粥などに利用され、タイ料理では「パクチー」と呼ばれてトムヤムクンには欠かせず、根も用いられるとされています。
さらに日本の食品メディアでは、英語名はコリアンダー、中国語では香菜(シャンツァイ)、タイ語がパクチーだと明示されています。 つまり「香菜(こうさい/シャンツァイ)」という漢字表記も、パクチーと並んで同じハーブを指す別称のひとつです。
ただし日本の市場では、言葉の使われ方が少し独特です。日本では生で食べる葉・茎を「パクチー」と呼び、種子を粉末にしたスパイス(コリアンダーシード)側を「コリアンダー」と呼ぶことが多い、という説明があります。 そのため、買い物では「パクチー=生の束」「コリアンダー=粉スパイス」という売り場の分かれ方になり、これが“違う食材”に見える原因になっています。
参考:呼び名(タイ語・中国語・英語)と、日本での「葉=パクチー/種子=コリアンダー」という使い分けの背景がまとまっています。
https://recipe.yamasa.com/blog/2406_coriander01
料理する人にとって重要なのは、呼び名より「どの部位をどう使うか」です。東邦大学のページでは、利用部位として全草が挙げられ、果実(種子)は粒のまま・粉末でピクルスやシチュー、マリネなどの香辛料に使うとされています。 一方で生葉は30cmくらいまでの葉を使う、という実用的な目安も書かれています。
さらに同ページでは、タイ料理ではパクチーはトムヤムクンに欠かせない食材で「根も用いられる」と明記されている点が見落とされがちです。 日本の家庭だと葉だけ使って根は捨てやすいのですが、根は香りが凝縮していて、ペーストやスープのベースにすると“香りはあるのに青臭さが出にくい”方向に寄せやすい、という使いどころがあります(葉の主張が強すぎると感じるときの逃げ道になります)。
参考)コリアンダー - Wikipedia
日本でありがちな混乱として、同じ袋に「香菜」と書いてあるのに、レシピには「パクチー」とあり、スパイス棚には「コリアンダー」がある、という状況が起きます。ここは次のように分けると実務が安定します。
| 呼び名(日本の買い物目線) | 主に指す部位 | 向く料理例 |
|---|---|---|
| パクチー/香菜(生鮮) | 葉・茎(束) | 仕上げのトッピング、和え物、サラダ、麺の薬味 |
| コリアンダー(スパイス) | 種子(粉・粒) | ピクルス、シチュー、マリネなどの香辛料 |
| パクチー(タイ文脈) | 根も含めて使うことがある | トムヤムクンなどスープ、ペースト系 |
「独特の香り」の正体を知ると、対策が調理技術に落とし込めます。東邦大学の解説では、未熟の果実と全草がカメムシに似た悪臭がすることから別名をカメムシソウと呼ばれる一方、成熟した果実はよい香りになる、とされています。 同じ植物でも、部位や熟し方で香りの印象が変わる、という事実は“苦手=無理”ではなく“扱い方で変えられる”という希望になります。
また成分面では、同ページにリナロール、デシルアルデヒド、ゲラニオール、ピネン等が挙げられています。 「葉はクセが強いのに、種子は甘くスパイシー」というズレは、まさに成熟した果実側の香りが別物に感じられることともつながります。
家庭でできる調整の方向性は、大きく3つです(どれも“香りをゼロにする”ではなく“狙った位置に置く”発想です)。
参考:カメムシソウという別名、成熟果実は良い香り、成分名、根も使う点など「植物としての一次情報」に寄った解説です。
https://www.lab.toho-u.ac.jp/phar/yakusou/koriannda-.html
「どの料理に、どの呼び名(=どの部位)を当てはめるか」を具体化すると、買い物ミスが減ります。東邦大学の記述では、中国ではシャンツァイとしてスープ、麺類、粥に利用されるとされ、タイ料理ではパクチーとしてトムヤムクンに欠かせない、と紹介されています。 つまり“汁もの・麺もの・粥”は香菜(シャンツァイ)系の王道で、“酸味や辛味の強いスープ”にはパクチーが特に相性が良い、という理解ができます。
また日本語記事では、日本では生で食べる時や料理にそのまま使用する時にパクチーと呼び、それは葉・茎を指すことが多いとされています。 ここから、家庭の運用としては「温かい麺のどんぶりに、食べる直前に刻んでのせる」「粥に散らして香りを立てる」など、加熱しすぎない使い方が基本線になります。
一方で、同じページに「タイ料理では根も用いられています」とあるので、タイ寄せにしたい日は“根を捨てない”だけで再現度が上がります。 根は泥が残りやすいので、たわし等でしっかり洗ってから叩いて香り出しに使い、最後に葉を少量のせる、という二段構えにすると、香りが立体的になります。
検索上位では「同じ植物」「呼び名の違い」で終わりがちですが、料理する人には“日本の中でどう位置づけてきたか”もヒントになります。東邦大学の解説によると、平安時代中期に編纂された「延喜式」や「和名類聚抄」には、朝廷料理で胡荽(コスイ)が生魚の薬味として用いるという記載があるとされています。 つまりパクチーは近年のブームで突然現れた異国野菜というより、日本の食文化にも「薬味」という役割で入り込んだ歴史がある、と捉えられます。
この視点に立つと、現代の家庭でも応用が効きます。例えば刺身の薬味を“わさび+大葉”だけで固定せず、胡荽=香菜を少量合わせると、柑橘や酢のニュアンスを足したような輪郭が出て、脂のある魚の後味が軽くなりやすい、という方向に組み立てられます(やりすぎると香りが勝つので、少量からが安全です)。 また同ページでは和名がコエンドロで、ポルトガル語のcoentroからの転化だと貝原益軒が「大和本草」で説いている、という話もあり、呼び名の揺れ自体が“外来食材が日本語化していく過程”として面白いポイントになります。