セキショウモ在来種の特徴と外来種との見分け方を解説

セキショウモ在来種の特徴と外来種との見分け方を解説

セキショウモの在来種を知って守る:特徴・育て方・外来種との違いを徹底解説

水槽に入れたセキショウモが、実は外来種だったかもしれません。


📌 この記事の3つのポイント
🌿
在来種セキショウモとは?

日本全国の川や池に自生する沈水性の多年草。葉の長さは最大80cmにもなり、CO2添加なしでも育てられる丈夫な水草です。

⚠️
外来種コウガイセキショウモに注意

アクアリウム由来のコウガイセキショウモは「重点対策外来種」に指定。在来種と非常によく似ているため、うっかり混同している人が多いです。

🏞️
生態系と私たちへの影響

水草を川や池に捨てると、在来種が絶滅危機に追い込まれる可能性があります。知らずにやっていた行動が自然破壊につながることも。


セキショウモ在来種の基本的な特徴と生育環境

セキショウモ(学名:Vallisneria natans)は、トチカガミ科セキショウモ属に分類される沈水性の多年草で、日本全国の湖沼・池・河川・水路など流れのある淡水域に広く自生しています。漢字では「石菖藻(セキショウモ)」と書き、ショウブに似た外見を持つことからこの名前が付きました。


葉の長さは水深によって15〜80cmと大きく変わります。80cmというのは、一般的な定規4本分を縦につなげた長さです。幅は3〜9mmと細いリボン状で、先端部分に鋸歯(ノコギリのようなギザギザ)があるのが特徴のひとつです。


分布は北海道から九州まで全国に及び、アジア各地やオーストラリアにも分布記録があります。沈水植物なので植物体のほぼ全体が水中に沈んだまま生育するスタイルです。


生育環境としては、流れのある清澄な水域を好みます。水路や溜池などでも群落を形成しますが、水質汚染や外来種の侵入によって近年は自生地が大きく減少しています。京都府のレッドデータブック2015では準絶滅危惧種に指定されており、全国的に個体数が減りつつある希少な在来種でもあります。これは意外ですね。


特筆すべきは繁殖方法です。雌雄異株で、雌株は細く長い花茎を水面まで伸ばして花を咲かせます。受粉後には花茎が螺旋状にねじれて水中に引き込まれるという、まるでSFのような仕組みで結実します。雄花はいったん水面に浮上して雌花まで流れていくという、水面伝いの受粉スタイルも独特です。


地下茎(ランナー)で横方向に広がりながら子株を増やす無性生殖も得意で、環境が合えばどんどん株を増やしていきます。ランナーが基本です。


大阪府立環境農林水産総合研究所:セキショウモ水草図鑑(在来種)


セキショウモ在来種の変種・近似種:ネジレモとヒラモの違い

「セキショウモ」という名前でひとくくりにされることが多いのですが、実は在来のセキショウモ属だけでも複数の変種・近縁種が存在します。これを知らないまま水槽で育てていると、どれを育てているのか分からなくなることもあります。


まず代表的な変種としてネジレモ(var. biwaensis)があります。ネジレモは琵琶湖淀川水系の固有種で、名前の通り葉が螺旋状に著しくねじれているのが最大の特徴です。葉縁の鋸歯が下部まで全体にわたっているのもセキショウモとの違いです。現在でも琵琶湖の水深1〜2mの砂底・礫底に群落が確認されていますが、外来種の侵入や水質の変化によって個体数の維持が懸念されています。


もうひとつの変種がヒラモ(var. higoensis)です。大型で常緑性を持ち、熊本市とその周辺ごく一部の地域にしか自生していないという、非常に希少な変種です。つまりヒラモは熊本限定です。セキショウモの変種でありながら、葉が冬でも枯れないという特性を持っています。


近縁種のコウガイモ(V. denseserrulata)は、葉縁の鋸歯がセキショウモよりも目立つのが特徴です。また走出枝(ランナー)に微細な突起があり、触るとざらつくので、触感で見分けられます。秋にはランナーの先にコウガイ状の殖芽(越冬用の特殊な芽)を形成するのも独自の特徴です。


これらは全て「在来種」ですが、特に琵琶湖固有のネジレモは、絶滅危惧種にも指定されている絶滅リスクの高い種類です。東洋大学の研究では、琵琶湖南湖ではネジレモがいったん姿を消した局所集団が確認されており、遺伝的多様性の維持も課題となっています。


滋賀県琵琶湖環境科学研究センター:ネジレモ(固有種)の情報


セキショウモ在来種と外来種コウガイセキショウモの見分け方

ここが最も重要なポイントです。アクアリウムを楽しんでいる方や、水辺で水草を採集したことのある方は必ず押さえておいてください。


コウガイセキショウモ(Vallisneria × pseudorosulata)は、東アジア原産のコウガイモとヨーロッパ原産のセイヨウセキショウモの雑種です。2016年に新分類群として記載されたばかりの、比較的新しい植物でもあります。アクアリウム用の観賞用水草として輸入され流通したものが野外に流出し、日本全国の水路・クリーク・湖沼に広がっています。


外見がセキショウモ在来種ときわめてよく似ているため、「在来種のセキショウモが復活した」と誤認されるケースが多発しています。福岡県の防除マニュアルでも、コウガイセキショウモが「在来種の復活事例として報告されることがある紛らわしい水草」として明記されています。これは痛いですね。


見分けのポイントを以下にまとめます。


特徴 在来種セキショウモ 外来種コウガイセキショウモ
冬の状態 冬は地上部が枯れる 🔴 冬でも常緑で繁茂し続ける
葉の質感 柔らかいリボン状 🔴 やや硬め・木質化した茎
繁殖力 旺盛だが季節的制約あり 🔴 冬季もランナーで増え続ける
法的位置づけ 在来種(保護対象) 🔴 重点対策外来種(要注意)


特に注目すべきは「冬でも枯れない」という点です。在来種のセキショウモは冬に地上部が枯れるため、冬から春にかけて水辺に青々としたリボン状の水草が繁茂していたら、それはコウガイセキショウモである可能性が高いのです。


また、コウガイセキショウモは茎を切っても切れた断片から再生するという厄介な性質を持っており、除去活動でも徹底した根絶が難しいとされています。


SATOMORI:コウガイセキショウモという植物について(詳細解説)


水槽でのセキショウモ在来種の育て方と注意点

セキショウモは日本産の在来水草なので、水道水に近い水質の水槽でも比較的育てやすいのが特徴です。育てやすさが魅力です。アクアリウム初心者にもおすすめできる数少ない在来種水草のひとつといえます。


水質・光量・CO2については、pH 6〜8程度の幅広い水質に対応し、ソイルを用いることでより安定した育成が可能です。光量は中程度で十分で、CO2の添加も必須ではありません。低光量の小型水槽でも繁茂できるというデータもあり、条件面ではかなり緩やかです。


ただし、いくつかの注意点があります。


まず葉が最大で80cm近くまで伸びるという点です。60cm規格水槽(奥行30cm)であっても、葉の先端が水面を大きく超えて横に広がってしまいます。水面に届いた葉は天に向かわず、水平に折れ曲がって水面全体を覆ってしまうため、直下の水草が光不足になりやすいのです。定期的なトリミングが必要です。


次に、酸性に弱い点に注意が必要です。コケ対策に使われる木酢液などの酸性薬剤が使えないことを意味します。スネール(巻き貝)が発生したとき、炭酸水につけての駆除もセキショウモには不向きです。コケ駆除はトリミングで対処するのが基本です。


初期導入時は若干ストレスを受けやすいという側面もあります。有茎草のように節から根を出してどこからでも再生するというわけにはいかず、根を切ってしまうとその後の回復が遅くなります。購入直後の2週間はなるべく動かさず、水質に慣れさせてあげることが肝心です。2週間が条件です。


一方でいったん根付いてしまえば非常に強い。ランナーをどんどん伸ばして子株・孫株を増やし、気がつけば水槽の後景をビッシリと埋め尽くす壮観な竹林のような水景を作ってくれます。繁殖力の旺盛さ、根元がいつまでもきれいに保たれる美しさは、他の後景草にはない魅力です。


育成ブログ:安い・早い・簡単な純和風水草セキショウモの特徴と育て方


外来水草を川や池に捨てることの危険性と在来種保護の視点

アクアリウムが趣味の方、ベランダでビオトープを楽しんでいる方に特に知ってほしい話があります。水槽や睡蓮鉢の水草が増えすぎたとき、「近くの川に放流すれば自然に帰る」と考えたことはないでしょうか。これは大きな誤解です。


アクアリウム由来の水草を野外の川や池に捨てることは、今や日本の生態系における最大のリスクのひとつになっています。現在、特定外来生物に指定されている水辺植物9種のうち8種が南米産であり、重点対策外来種に指定されている約24種の7〜8割がアクアリウムや園芸由来の種類とされています。


コウガイセキショウモが好例です。もともとは観賞用水草として輸入・流通していたものが水路や川に捨てられ、冬でも枯れない強靭な繁殖力を武器に日本各地で大繁茂しています。佐賀県のクリーク(水路網)では大規模な駆除活動が毎年行われていますが、根絶には至っていない状況です。


日本産の在来種の水草は、護岸工事や水質汚染、外来種との競合などで既に大幅に個体数を減らしています。そこに冬でも枯れない外来種が侵入すると、春に芽吹く前から水面が占領されてしまい、在来種が光合成できなくなるのです。


また見過ごせないのが「遺伝子汚染」の問題です。同じセキショウモという種類でも、日本産と海外産では遺伝子レベルで異なる特性を持っています。海外産が逸出して日本産と交雑すると、日本の環境に適応してきた遺伝子の形質が薄れてしまう恐れがあります。「日本にも分布している在来種だから問題ない」という考え方は、正しくないのです。


ルールはシンプルです。「入れない・捨てない・広げない」の3原則を守ること。水草の処分は燃えるごみとして袋に密封して処分する。これだけで在来種セキショウモや多くの希少な水生植物を守ることにつながります。


AQUALASSIC:なぜ買ってきた水草を野外に植えてはいけないのか?(詳細解説)


農林水産省:外来セキショウモに関する農業水利施設への影響と対策(PDF)