

赤外線センサーは、物体から放射される赤外線を感知して電気信号に変換する装置です。すべての物体は絶対零度でない限り赤外線を発しており、温度が高いほど多くの赤外線を放射します。センサーはこの赤外線の量や温度変化を検出することで、物体の温度や存在を認識する仕組みになっています。
参考)赤外線センサーとは?仕組みやメリット・デメリットを解説!|光…
基本的な動作メカニズムとして、赤外線センサーは検知対象物から反射または放射された赤外線を受光器(フォトダイオードやフォトトランジスタ)で捉えます。受光した赤外線は熱エネルギーとして検出され、その後電気信号に変換されることで測定や制御が可能になります。この変換プロセスは非常に高速で、数秒から1秒程度で温度測定が完了するため、時短調理に最適な技術となっています。
参考)赤外線センサー:動作原理、モジュール、種類
興味深いことに、人工衛星「だいち2号」に搭載された赤外線センサー技術が家庭用エアコンにも応用されており、広範囲のエリアを詳細に測定できる高精度センサーが実用化されています。このような先進技術の民生利用により、調理家電の性能も飛躍的に向上しています。
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赤外線センサーは動作原理によって大きく「熱型(非冷却型)」と「量子型(冷却型)」の2種類に分類されます。熱型は赤外線をいったん熱に変換し、抵抗変化や熱起電力として出力を取り出すタイプです。一方、量子型は半導体の光導電効果やPN接合による光起電力効果を利用して、赤外線を光として直接検知します。
参考)赤外線カメラ基礎講座|ビジョンセンシング
熱型の代表格である焦電型赤外線センサーは、焦電素子(誘電体)に赤外線が入射すると温度変化が生じ、表面電荷が発生する焦電効果を利用しています。センサーに赤外線が照射された瞬間、焦電素子の温度が上昇して自発分極状態が変化し、微小な焦電流が流れます。この焦電流を大きな抵抗で電圧に変換し、JFETでインピーダンス変換して出力する仕組みです。
参考)https://www.wago.co.jp/download/manual/data/t_ba_motion_sensor_ip.pdf
量子型センサーは熱型に比べて応答速度が速く高感度ですが、冷却装置が必要でコストが高くなります。家庭用調理家電では主に熱型の焦電型やボロメータ型、サーモパイル型が採用されており、コストと性能のバランスが取れています。特にサーモパイル型は人や床の表面温度を非接触で検知できるため、エアコンやオーブンレンジで広く使われています。
参考)IRセンサー
オーブンレンジに搭載される赤外線センサーは、食材の表面から出る赤外線の量を測定して表面温度を判断し、自動加熱を制御します。従来のセンサーと異なり、食材の温度を直接測定できるため、加熱時間を最適化して時短調理を実現しています。
参考)オーブンレンジの選び方とおすすめメーカー
東芝の最新オーブンレンジでは、従来の約3倍の精度で食品温度やムラを検知する「ファインeyeセンサー」が搭載されています。このセンサーにより、ワンタッチで食品の種類を自動判別して美味しく温める「すごラクあたため」や、加熱ムラを抑えながら約40%の時間短縮を可能にした「すばラク解凍」が実現しました。忙しい朝や帰宅後の調理準備が劇的に楽になる機能です。
参考)高精細な赤外線センサー新搭載の過熱水蒸気オーブンレンジを発売
日立の「ヘルシーシェフ」では赤外線センサーと重量センサーを併用する「Wスキャン」技術を採用しています。赤外線センサーだけでは庫内が熱い状態で正確なセンシングができない弱点がありますが、重量センサーと組み合わせることで失敗の少ない自動調理を実現しています。この二重センシングにより、連続使用時でも安定した時短調理が可能です。
参考)レンジ自動調理が優秀! 日立の「ヘルシーシェフ」を使い続けた…
東芝ライフスタイル 過熱水蒸気オーブンレンジ公式情報
最新の高精細赤外線センサー搭載モデルの詳細仕様と時短機能について詳しく解説されています。
三菱電機の「霧ヶ峰」シリーズに搭載される赤外線センサー「ムーブアイ」は、室内の温度分布を可視化して快適空間を作り出します。人や物は赤外線を発しており、熱いものには強い赤外線が放出されるため、センサーがその違いを検知して暑い・寒いを推定する仕組みです。この技術により、在宅ワークやリビングでの長時間滞在時に、部屋全体の温度ムラを自動で解消してくれます。
参考)カイ研
別置タイプの「ムーブアイ」は、従来のものに比べて約5倍となる14.4m四方の広範囲をカバーし、詳細な温度情報を取得できます。「ムラなし運転モード」に設定すると、室内の一部が暑かったり寒かったりする場合に風向や風速を自動調整して温度ムラを解消します。さらに、室内をエリア分けして「風を避けたい」「風を当ててほしい」と設定すれば、自動的に好みの環境を作り出すことが可能です。
赤外線センサーは換気のコントロールにも活用されており、飲食店でランチタイムに来客が増えた際には自動的に換気風量を「強」に切り替えます。一方、人がいない時間帯には換気を抑えて省エネ運転を行うため、電気代の節約にも貢献します。焦電型赤外線センサーを搭載すれば人の動きを検知して機器を自動ON/OFFでき、電気のムダ遣いを削減できるのです。
参考)省エネを考えた機器設計に! ー 焦電型赤外線センサ「PaPI…
赤外線センサーは調理家電やエアコン以外にも、非接触体温計や見守りシステムなど多様な用途で活用されています。非接触体温計では測定部位の表面上の赤外線量を測定して温度表示するため、数秒から1秒で測定が完了します。電子的な補正により測定時間を大幅に短縮できるメリットがありますが、体表面の赤外線量を測定する性質上、外気の影響を受けやすい点に注意が必要です。
参考)非接触体温計(赤外線体温計)のしくみと使い方のコツを知って快…
衣類乾燥機では衣類の表面温度を検知して乾燥ムラを防ぐ機能に役立てられており、美顔器では肌温度を検知してトラブルを防止する安全機能にも活用されています。さらに産業分野では、機械や電気設備の異常発熱を検知するサーモグラフィーとして予防保全に貢献しています。広範囲の温度分布を可視化できるため、製造ラインでの品質管理や設備の故障予防に効果的です。
参考)赤外線センサーによる温度測定|活用メリットと産業用途を解説
意外な応用例として、冷蔵庫では庫内の食材の温度ムラを感知して効率よく冷やす制御に使われています。また、トイレの自動開閉ふたや防犯センサー、シニアの見守りシステムなど、日常生活の様々な場面で赤外線センサーが快適さと安全性を提供しています。MEMSを使った超小型IRセンサーは量産性にも優れており、今後さらに多様な家電製品への活用が期待されています。
赤外線センサーの最大のメリットは、非接触で温度測定ができる点です。高温や危険な環境での測定が安全に行えるため、調理中の食材温度測定や工業設備の監視に最適です。また、消費電力が少なく誤作動が少ないという特徴もあり、家庭用照明や防犯センサーに広く採用されています。
参考)https://jp.rs-online.com/web/c/automation-control-gear/sensors/infrared-temperature-sensors/
焦電型赤外線センサーは特に省エネ効果が高く、人の動きを検知して機器を自動ON/OFFすることで電気のムダ遣いを削減できます。広範囲の温度分布を可視化できるため、異常発熱を即座に検知してメンテナンスコストの削減にもつながります。これらの特性から、スマートホームや見守りシステムなど、IoT機器での活用が進んでいます。
参考)スマートホームで活用されるセンサーを解説。各センサーの利用シ…
一方で、デメリットとしては検知範囲が比較的狭く、周囲の温度変化や強い日差しの影響を受ける場合がある点が挙げられます。直射日光や強い光が当たる場所、温度変化の激しい場所では誤作動を起こしやすいため、設置場所が限定されます。また、放たれる赤外線の量や温度変化を感知する性質上、人だけでなく犬や猫などの動物にも反応してしまう点には注意が必要です。
参考)人感センサーとは?仕組み・種類・選び方・活用方法を徹底解説
オーブンレンジでは庫内が熱い状態では正確なセンシングができないケースもあるため、重量センサーなど他のセンサーとの併用が推奨されます。赤外線カメラでは夜間監視時に画像の品質が低下する場合があり、雪や雨、蜘蛛の巣などが赤外線を反射して誤検知の原因になることもあります。これらの特性を理解して適切に使用することが、赤外線センサーを最大限に活用するポイントです。
参考)赤外線センサのメリット・デメリット - センサ技術お役立ちナ…
オーブンレンジを選ぶ際は、赤外線センサーの性能に注目しましょう。赤外線センサーはオーブンレンジに搭載されるセンサーの中で最も高性能で、主に上位モデルに搭載されています。食材表面の温度を直接測定できるため、加熱時間の最適化による時短効果が期待できます。ただし、庫内温度が高い場合にうまく働かないケースもあるため、重量センサーも併用しているモデルを選ぶとより安定した自動調理が可能です。
参考)オーブンレンジのセンサー比較【赤外線センサーにもデメリットあ…
エアコンを選ぶ場合は、広範囲をカバーできる高精度な赤外線センサー搭載モデルがおすすめです。特に在宅ワークやリビングでの長時間滞在が多い方は、温度ムラを自動で解消する機能があると快適性が格段に向上します。人感センサー機能があれば、人がいない時に自動で省エネ運転に切り替わるため、電気代の節約にもつながります。
活用のコツとして、赤外線センサーは設置場所の環境に注意が必要です。直射日光や強い光が当たる場所、温度変化の激しい場所では誤作動しやすいため、できるだけ安定した環境に設置しましょう。オーブンレンジでは連続使用時に庫内が熱くなるため、少し冷ましてから次の調理を始めると精度が保たれます。エアコンではエリアごとに風の当たり方を設定しておくと、自動的に好みの環境を作り出してくれます。
時短調理を最大限に活かすには、自動メニュー機能を積極的に使いましょう。赤外線センサーが食品の種類を自動判別して最適な加熱時間を設定してくれるため、手動での時間設定よりも失敗が少なく、確実に時間短縮できます。解凍機能も赤外線センサーで加熱ムラを抑えながら短時間で行えるため、冷凍食材の活用がさらに便利になります。これらの機能を組み合わせることで、毎日の調理時間を大幅に削減できるでしょう。
村田製作所 焦電型赤外線センサの基礎知識
焦電型赤外線センサーの詳しい動作原理と技術仕様について専門的な解説があります。

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