

ニホンジカは日本固有種ではなく、実はあなたの家の近くにもいるかもしれません。
ニホンジカ(学名:Cervus nippon)は、シカ科シカ属に分類される哺乳動物です。名前に「ニホン」とついていますが、これは日本固有種であることを意味しません。実際には北東アジアからインドシナ半島にかけて広く分布しており、ベトナム・台湾・朝鮮半島・中国・ロシア沿海州なども元々の分布地に含まれています。
ただし、大陸側の分布は現在ではかなり断片的になっています。ベトナム・台湾・朝鮮半島では野生個体群がすでに絶滅したと考えられており、まとまった分布を維持しているのは事実上、日本列島だけという状況です。
日本国内に目を向けると、北海道から九州まで広く分布しています。つまり分布が基本です。ただし、かつては豪雪地帯(北陸や東北日本海側など)ではほとんど生息していない地域もありました。積雪深が50cm以上になる日数が多い地域では、活動や採食が難しくなり、分布が制限されていたためです。
それが近年、急速に変化しています。地球温暖化による積雪量の減少で、かつて「シカのいなかった」東北・北陸地方にも分布が拡大しています。1978年から2020年の約42年間で、ニホンジカの分布域は約2.7倍にまで広がりました。これは驚くべきスピードです。
| 年代 | 分布の状況 |
|---|---|
| 1978年頃 | 山地・里山が中心。豪雪地帯には生息なし |
| 2014年頃 | 36年間で分布メッシュが約2.5倍に拡大 |
| 2020年時点 | 1978年比で約2.7倍。東北・北陸にも進出 |
| 2025年予測 | 生息確率50%以上の地域が国土の約7割 |
| 2050年予測 | 生息確率50%以上の地域が国土の約9割超 |
この拡大の速さを身近なもので例えるなら、東京ドームが42年間で約2.7倍の面積に広がっていくイメージに近いと言えるでしょう。私たちの生活圏にじわじわと近づいてきているということです。
参考:ニホンジカの分布域拡大の予測データ(森林総合研究所)
森林総合研究所「ニホンジカは2050年までにその勢力を全国に拡大すると予測されます」(PDF)
日本のニホンジカは、生息地の違いによって7つの亜種(または地域個体群)に分けられています。それぞれに体の大きさや特徴が異なります。これが面白いところです。
- エゾシカ(北海道):最も体が大きく、オスの体重は約140kgにもなります。小型車のトランクほどの重量感です。
- ホンシュウジカ(本州):本州の山地・里山・高原などに広く生息。最も広い範囲をカバーする亜種です。
- キュウシュウジカ(四国・九州):ホンシュウジカよりやや小型。
- ツシマジカ(対馬):離島に生息する亜種で、体がやや小型。
- ヤクシカ(屋久島):7亜種の中で最も小型で、オスの体重は約40kgほど。エゾシカと比べると体重差は3倍以上あります。
- マゲジカ(馬毛島):離島に生息する希少な亜種。
- ケラマジカ(慶良間諸島):沖縄の慶良間列島に分布する亜種。
北方に生息する亜種ほど体が大きくなる傾向があります。これはベルクマンの法則(寒い地域の動物ほど体が大きくなる)によるものです。同じ「ニホンジカ」という名前でも、北海道のエゾシカと屋久島のヤクシカでは、見た目の印象もかなり変わってきます。
日本で見かける機会が最も多いのはホンシュウジカで、本州の山地から里山にかけて広く分布しています。奈良公園のシカも、このホンシュウジカです。
参考:ニホンジカの亜種分類と特徴(森林総合研究所 四国支所)
森林総合研究所「ニホンジカ」(亜種・形態・分布の詳細解説)
なぜこれほど急激に分布が広がったのでしょうか。主な要因は3つあります。
まず1つ目が、地球温暖化による積雪量の減少です。前述のとおり、ニホンジカ(特にホンシュウジカ)は積雪深50cm以上の地域では生きていくのが難しいとされています。しかし温暖化により、かつて深雪だった地域の積雪量が減り、越冬できる個体が増えました。冬を生き延びる数が増えれば、翌年の繁殖数も増える。これが分布拡大の根本的な仕組みです。
2つ目が、狩猟者の減少と高齢化です。1970年代に約50万人いた狩猟者は、現在では約10万人台にまで減っています。シカを捕る人が減れば、個体数が増えるのは自然な流れです。個体数が増えれば、食べ物を求めてより広い範囲に広がります。
3つ目が、里山の放棄と藪の増加です。高度経済成長期以降、農村の過疎化が進み、管理されなくなった里山が増えました。人の手が入らなくなった山は、シカにとって都合の良い隠れ場所と食料供給地になります。
令和4年度末時点の推計では、本州以南のニホンジカの個体数は約246万頭(中央値)に達しています。日本の人口と比較すると、約50人に1頭のペースで生息しているイメージです。この数字だけでも、問題の規模が伝わるかもしれません。
参考:環境省による個体数推定の最新データ
環境省「全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定等の結果について」(令和6年4月)
シカの分布が広がっているのは「山の問題」と思っている方も多いでしょう。ところが現実はもっと身近なところに影響が出ています。
農林水産省の最新データ(令和6年度)によると、野生鳥獣による農作物被害の全国合計は約188億円にのぼっています。そのうちシカによる被害は約79億円と最も大きく、全体の4割以上を占めます。これは稲・野菜・果樹など幅広い農作物に食害が及んでいることを意味します。
被害は農家だけの問題ではありません。近年は市街地や住宅地に近いエリアにもシカが出没するケースが増えています。神奈川県の資料によると、近年はシカなどの大型動物が市街地に出没する問題も発生するようになっており、市街地では銃やわなの使用が制限されるため対応が難しいという状況です。
家庭菜園を楽しんでいる方も、地域によってはシカの食害リスクと無縁ではありません。シカは食性が広く、野菜・果樹・花・ハーブなど、ほぼあらゆる植物を食べます。これは困りますね。
シカの侵入を防ぐための対策として、防獣ネットや電気柵が有効とされています。高さ1.5m以上のフェンスが基本とされますが、シカのジャンプ力は高く、低いフェンスでは乗り越えられることもあります。住んでいる地域の農業試験場や市区町村の鳥獣被害対策窓口に相談すると、地域に合った対策情報を得られます。
参考:シカによる農作物被害の最新状況(農林水産省)
農林水産省「農作物被害状況」(令和6年度版)
ここで、ニホンジカについてあまり知られていない「意外な事実」をいくつか紹介します。
ニホンジカはヨーロッパやニュージーランドにもいるという事実は、多くの方が知りません。これは人為的に持ち込まれたもので、現地では移入種として管理の対象になっています。学名に「nippon(日本)」が入っているにもかかわらず、海外でも管理が必要な動物になっているというのは、少し複雑な話です。
また、シカは一般に草食動物と認識されていますが、実は糞の中から昆虫の死骸が出てきた例や、胃の内容物にカニが含まれていた例も報告されています。植物以外のものも食べることがある、という意味では「強い雑食性の動物」と捉えることもできます。意外ですね。
今後の見通しについては、森林総合研究所の予測が非常に明確です。2025年時点で生息分布確率50%以上の地域が国土の約7割、2050年には約9割超に達する見込みです。これは温暖化が続く限り、シカが私たちの生活圏から切り離せない存在になることを意味しています。
一方で、近年は捕獲強化や防護柵の整備など、各地でシカ対策が進んでいます。ジビエ(野生鳥獣肉)としてシカ肉を活用する動きも広がっており、問題解決と食文化の活性化を同時に進めようとする取り組みも注目されています。シカ肉は低脂肪・高タンパクな食材として、健康志向の方にも関心が高まっています。これは使えそうです。
自分の住む地域のシカの状況を知りたい場合、環境省の「いきものログ」や各都道府県の鳥獣保護管理担当窓口のウェブサイトを確認するのが手軽です。地域ごとの分布マップや被害状況が公開されています。
参考:ニホンジカの生態・被害・対策の総合情報(高知県)
高知県「ニホンジカの生態と被害対策について」(わかりやすい解説ページ)

宝屋本店 犬用 鶏肉 スープ 無添加 高タンパク 低脂質 人気 冷凍 調理済み ミンチ フード おやつ ForドッグS 人も食べられる愛犬食 (鶏肉スープ4P×1袋)