ナキウサギは動物園にいないが野生で会える場所がある

ナキウサギは動物園にいないが野生で会える場所がある

ナキウサギと動物園の意外な関係と北海道で会う方法

国内の動物園にはナキウサギが1頭もいないのに、毎年1万人以上が北海道の山へ会いに行っています。


この記事のポイント
🐰
動物園では会えない

旭山動物園・円山動物園など北海道の有名動物園を含め、国内のJAZA加盟園でナキウサギを飼育している施設は現在ゼロです。

🏔️
野生で会うための2大スポット

然別湖(標高810m)と十勝岳望岳台の自然探勝路が代表的な観察ポイント。夏〜秋がベストシーズンです。

⚠️
準絶滅危惧種で保護が必要

エゾナキウサギは環境省レッドリストで準絶滅危惧種(NT)に指定。気温15℃以上では生きられないため、温暖化による生息地消失が深刻な問題です。


ナキウサギが動物園にいない本当の理由


「旭山動物園や円山動物園なら北海道の動物がいるはず」と思っていた方には驚きかもしれません。しかし現実は違います。


エゾナキウサギを飼育している動物園は、北海道を含む日本全国に1か所もありません。これは日本動物園水族館協会(JAZA)加盟園を全て調べても同じ結果で、国内での飼育実績があるのは多摩動物公園と富山市ファミリーパークでアフガンナキウサギを扱っていた過去の事例のみ。現在は終了しています。


なぜ飼育が難しいのでしょうか?


ナキウサギは気温15℃以下の冷涼で乾燥した環境でしか生きられない生き物です。夏でも外気温が上がりやすい動物園の展示施設では、気温管理のコストと難易度が非常に高くなります。さらに、ナキウサギは警戒心が極めて強く、ストレスや環境の変化に生理的に弱い動物です。動物園の来場者や音・匂いが多い環境は、彼らにとって大きなダメージになります。繁殖率が低く子ウサギの生存率も高くないため、個体数を維持するだけでもハードルが高い。つまり動物園で会えないのは偶然ではなく、生態上の必然なのです。


これは知っておくべき事実です。


「北海道旅行のついでに動物園でナキウサギを見よう」と計画すると、時間もお金も無駄になってしまいます。旭山動物園の入園料は大人1,000円・子ども500円(2025年現在)、そこへの移動費も加えると「見られない失敗」はなかなかの痛手です。事前に知っておけば、次に紹介する野生観察スポットへ計画を切り替えることができます。


参考:ナキウサギの飼育状況と動物園情報のまとめはこちら
ナキウサギのいる動物園は?飼育展示動物園とナキウサギ情報まとめ|ARIEScom


ナキウサギの特徴と驚きの生態を知ろう

ナキウサギを実際に探しに行くなら、まず生態を知ることが「出会う確率」を大きく左右します。


体長は15〜18cm程度で、体重は120〜160g。これはいわゆる「手のひらサイズ」で、普通のウサギ(体長50cm前後、体重2〜3kg)と比べるとかなり小さいことがわかります。一見するとネズミのように見えますが、ウサギ目ナキウサギ科に分類される正真正銘のウサギの仲間です。耳は小さく丸く、しっぽは5〜7mmしかなくてほぼ見えません。


最大の特徴は「鳴く」ことです。


普通のウサギ科は鳴き声を出しませんが、ナキウサギ科は「ピチュッ」「ピィッピィッ」と甲高い声で鳴きます。この鳴き声が聞こえたら、近くにナキウサギがいるサインです。ただし、小鳥の声と間違えやすいため、事前に鳴き声を動画などで覚えておくことを強くおすすめします。100m先まで届くほど大きな声なので、聞こえたらゆっくりと岩場を見渡してみましょう。


もう一つ知っておきたいのは「冬眠しない」という事実です。クマやリスが冬眠するイメージから「ナキウサギも眠るのでは」と思いがちですが、ナキウサギは1年中活動します。冬眠しない代わりに、9〜10月にかけて草を刈り集め、岩の上で天日干しにしてから岩の隙間に「干し草」として貯蔵します。これが独特の「貯食行動」で、この時期はエサ集めのために活動量が増えるため、観察しやすいベストシーズンになります。


毛色も観察を難しくする要因の一つです。夏毛は赤褐色、冬毛は灰褐色〜暗褐色で、どちらも岩や植物の色と見事に同化します。岩場全体をじっくりと眺め、動く個体を目で追うのが見つけるコツです。


参考:エゾナキウサギの生態と観察のポイント詳細
ナキウサギの生態と観察のポイント|登山初心者.com


ナキウサギに会える北海道の2大観察スポット

野生のナキウサギに会うには、生息地を知ることが第一歩です。北海道の中でも、一般的に知られている観察ポイントは主に2か所あります。


① 然別湖(しかりべつこ)周辺(北海道鹿追町)


然別湖周辺は、日本最大のナキウサギ生息地とされる場所です。標高810mと、他の生息地(標高1,500〜1,900m)より低い点が特徴的です。これが可能なのは、この地域が「風穴(ふうけつ)地帯」だからです。風穴とは、溶岩が砕けてできた岩と岩の隙間から、夏でも1〜2℃の冷気が吹き出す場所のことです。外気温が20℃を超えていても、風穴付近は常に涼しい状態が保たれます。ナキウサギが15℃以上では生きられない生き物であることを考えると、この環境がいかに貴重かわかります。


アクセスは帯広から車で約1時間30分〜2時間。然別湖近くの東ヌプカウシヌプリ(標高1252m)や駒止湖周辺の遊歩道がおすすめの観察コースです。子どもや体力に自信のない方も歩きやすいルートがあります。


② 十勝岳望岳台の自然探勝路(北海道美瑛町)


望岳台は旭川鷹栖ICから車で約100分、JR美瑛駅から約45分とアクセスしやすい観察スポットです。駐車場は50台・無料で使えます。約1.1km(所要時間約45分)の散策路が整備されており、夏は高山植物、秋は紅葉を楽しみながらナキウサギを探せます。観光時期は4月下旬〜11月上旬です。


どちらのスポットも、ベストシーズンは夏から秋、特に9〜10月の貯食活動が活発な時期です。晴れて風のない日の日中に、ゆっくり岩場を観察するのが基本です。


参考:観察スポットの詳細ガイドはこちら
北海道のナキウサギ 生息・観察・撮影地ガイド|くるま旅のプロが案内


動物園のかわりに使えるナキウサギ観察ツアーとグッズ

「野生観察に挑戦したいけれど、初めてで不安」という方には、ガイド付きの観察ツアーが大きな助けになります。


じゃらんでも申し込めるプライベートツアー「ナキウサギやシマリスなど北海道の動物たちに会えるかも?軽トレッキングツアー」は、所要時間約3時間30分・対象年齢13〜80歳・2〜6名で利用できます。初心者でも安心な軽装のトレッキングで、地元に詳しいガイドと一緒に岩場を歩きます。ナキウサギの鳴き声や痕跡(フンや干し草)の見分け方も教えてもらえるので、単独行動よりも遭遇率が格段に高まります。


それ以外にも、旅行社主催のツアーとして「秋の北海道エゾナキウサギ撮影ツアー」(サイユウトラベル)では、動物写真家が同行し、撮影・観察を指導しながら進む本格的なプログラムも用意されています。


行けない時期の楽しみ方もあります。


北海道を訪れる前・後にナキウサギへの関心を深めたいなら、ナキウサギのぬいぐるみやポストカードなどのグッズが充実しています。「ナキウサギふぁんくらぶ」では、カレンダーや写真集を販売しており、売上の一部はナキウサギの生息地を守る保護活動に充てられています。お子さんと一緒に購入することで、環境保護への関心を育てるきっかけにもなります。


参考:ナキウサギ保護活動の詳細はこちら
ナキウサギとは|ナキウサギふぁんくらぶ(保護活動・生態情報)


ナキウサギと温暖化・絶滅リスクを子どもに伝えるには

ナキウサギは「かわいい動物」として注目されがちですが、その背景には深刻な問題が隠れています。これを家族の話題にすることで、環境への関心が自然と広がります。


エゾナキウサギは現在、環境省のレッドリストで「準絶滅危惧種(NT)」に指定されています。これは「今すぐ絶滅するわけではないが、生息条件が少し変わるだけで絶滅危惧種に移行する恐れがある」という意味です。正確な生息数は調査が難しく、2025年時点でも「不明」とされています。それだけ高山の険しい岩場に隠れて生活しているということです。


最も大きな脅威は気温上昇です。


ナキウサギは気温15℃以下でないと生きられません。地球温暖化が進むと、彼らが逃げ場のない高山へどんどん追い詰められます。低地の生息地ではすでに個体数が減少しているというデータもあります。ある研究では、温暖化が進行すると生息可能な標高が約400m上昇し、生息地の20%が消失する可能性があると示されています。高山の動物は「上に逃げ続けるしかない」という逃げ場のない状況に置かれているのです。これは厳しい現実です。


「なぜナキウサギは動物園にいないの?」「なぜ山にしかいないの?」という子どもの素朴な疑問を起点にして、温暖化や生物多様性の話につなげてみてください。観察ルールを守ること(餌付け禁止・大声禁止・植生を踏み荒らさない)も、一緒に伝えるといいでしょう。


参考:エゾナキウサギと温暖化の関係についての詳しい解説
野生のうさぎの仲間ナキウサギの特徴|うさぎとの暮らし大百科(アニコム)




36.エゾリスさんの松ぼっくりの食べ方 ナキウサギのナキピコ2