

生のミズダコをそのまま刺身にすると、8割の人がぬめりの取り残しで食感を損なっています。
ミズダコはタコの中でも世界最大級のサイズを誇る種類で、成体では体重が10〜15kgに達することもあります。国内では北海道や東北地方の太平洋沿岸で多く水揚げされており、スーパーでも比較的手に入りやすいタコです。
刺身として食べる場合、主に使われるのは「足(腕)」「胴(外套膜)」「吸盤」の3つの部位です。それぞれ食感がまったく異なります。
足の部分は最も一般的に使われる部位で、しっかりとした弾力とほのかな甘みが特徴です。薄く削ぎ切りにすることで、歯ごたえを楽しみながらもやわらかく食べられます。一方、胴の部分は足に比べて肉厚でやわらかく、あっさりとした味わいです。薄切りよりもやや厚めに切ったほうが、食感の違いを楽しめます。
吸盤はコリコリとした独特の食感が魅力です。そのまま刺身にしてもおいしいですが、さっと湯通しして半生にするとさらに食べやすくなります。
ミズダコの足は1本あたりの長さが50〜80cm程度になることもあり、一般的なマダコと比べて2〜3倍のサイズです。これは大人の腕の長さとほぼ同じくらいです。スーパーでは足をカットした状態で販売されていることが多いため、部位の見分け方を知っておくと買い物がしやすくなります。
部位ごとに食感が異なるということですね。
なお、ミズダコは水分が多く身がやわらかいのが特徴ですが、その分鮮度が落ちやすいという面もあります。購入後はできるだけ早めに調理することが大切です。
ミズダコを刺身にする際に最初にすべき作業が、ぬめりの除去です。ぬめりを取り残したまま刺身にすると、生臭さが残り食感も悪くなってしまいます。下処理が肝心です。
基本的な手順は以下の通りです。
下処理の丁寧さが味の決め手です。
塩もみだけでぬめりが落ちにくい場合は、大根おろしと混ぜながらもむ方法も有効です。大根の酵素がぬめり成分を分解し、より短時間でスッキリと除去できます。スーパーで買ったミズダコのぬめりが強いと感じたときは、この方法を試してみてください。
また、ぬめり取りの際には「内臓(墨袋・肝)を先に取り除く」ことも重要です。胴側から手を入れて内臓をすべて引き抜き、目と口(くちばし)も除去してから塩もみに進みましょう。内臓が残ったまま塩もみをすると、墨が身に染みてしまうことがあるため注意が必要です。
下処理が完了したら、いよいよ刺身に仕上げていきます。切り方次第で食感が大きく変わるため、部位に合わせた切り方を意識することが重要です。
足の刺身は「そぎ切り」が基本です。包丁を斜めに寝かせて、厚さ3〜4mm(500円玉2枚分くらい)を目安に薄くそぐように切ります。繊維を断ち切る形になるため、やわらかくかみやすい刺身になります。
薄切りが基本です。
逆に厚く切りすぎると、ミズダコ特有のやわらかすぎる食感が前面に出てしまい「水っぽい」と感じることがあります。ミズダコが「水ダコ」とも書かれるように、マダコに比べて水分量が多い種です。そのため、薄くそいで余分な水分を飛ばすイメージで切るとうまくいきます。
胴の部分は「薄切りまたは細切り」がおすすめです。5〜6mm程度(消しゴム1個の厚みくらい)に切ると、やわらかい胴の食感がちょうどよく感じられます。細切りにしてポン酢や薬味と和えると、箸が進む一品になります。
吸盤は丸のままか半割りにして盛り付けると見栄えがよくなります。吸盤はコリコリした食感があるため、足や胴とセットで盛り合わせると食感のコントラストが楽しめます。これは使えそうです。
切った刺身は冷水に10〜15秒さらしてから水気を切ると、身が引き締まってさらに食感がアップします。氷水に短時間くぐらせるだけで、プロの刺身に近い仕上がりになります。
生のタコを刺身で食べる際に気になるのが、食中毒や寄生虫のリスクです。正直に言えば、タコは魚介類の中でも比較的リスクが低い部類に入ります。しかしゼロではありません。
タコに寄生する可能性があるのは「アニサキス」という線虫です。アニサキスはサバやアジなどの魚に多いイメージがありますが、タコにも寄生することが報告されています。農林水産省の情報によれば、タコにおけるアニサキスの検出頻度は魚類より低いものの、完全に否定することはできません。
アニサキス対策には2つの方法が有効です。
冷凍処理が最も確実な対策です。
スーパーで「生ダコ」として販売されているものは、多くの場合、流通の過程で一度冷凍されています。「解凍」と表示されているものはこれに該当します。一度冷凍処理されているものならアニサキスのリスクはほぼ排除されているため、安心して刺身にできます。
一方、鮮魚コーナーで「活タコ(生)」として売られているものは未冷凍の場合があります。この場合は自宅で冷凍処理を行ってから刺身にするのが安全です。特に小さなお子様や高齢の方が食べる場合は、念のため冷凍処理を行うことをおすすめします。
また、購入した当日に刺身にしない場合は、下処理後にキッチンペーパーで包んでラップをし、チルド室で保存してください。保存期間の目安は冷蔵で1〜2日、冷凍で2〜3週間程度です。
刺身の味を引き立てるのが、タレと薬味の組み合わせです。ミズダコはクセが少なくやわらかい風味なので、さまざまな味付けに合わせやすいのが魅力です。
定番の組み合わせは醤油+わさびですが、ミズダコにはポン酢+もみじおろしも非常によく合います。さっぱりとした酸味がミズダコの水分の多さとマッチし、後味がすっきりします。
薬味の選び方でガラリと印象が変わります。
盛り付けは「氷の上に並べる」だけで見栄えが格段に上がります。器に砕いた氷を敷き、その上に刺身を並べると料亭風の雰囲気になります。吸盤を立てて飾ると、食卓での存在感が出ます。
ミズダコの刺身は、そのままでも十分においしいですが、ごま油+塩のタレで食べると一層甘みが際立ちます。韓国風のタコ刺し(チャプサル)の食べ方を参考にして、コチュジャン+ごま油のタレを試してみるのもおすすめです。意外な組み合わせですね。
ミズダコの刺身は、下処理・切り方・保存の3つを押さえれば、家庭でも十分に美味しく楽しめます。鮮魚コーナーやネット通販でも手に入りやすい食材なので、ぜひ一度チャレンジしてみてください。