
フジパンは2016年以降、消費者からの要望に応える形で「イーストフード、乳化剤不使用」商品の開発を積極的に進めました。特に本仕込シリーズとネオシリーズを中心に、包装紙への表示を順次実施していました。
参考)https://www.fujipan.co.jp/news/002121.html
しかし、一般社団法人日本パン工業会から「イーストフード、乳化剤が消費者に対して安全ではないとの誤認を与えかねない表示である」との見解が示されたため、2019年6月より強調表示を外す対応を実施しています。
興味深いことに、表示を外した後も配合・製法に変更はなく、取り組み自体は継続されています。これは消費者のニーズと業界の方針のバランスを取った結果といえるでしょう。
イーストフードと乳化剤は、食品衛生法に定められた安全な食品添加物です。これらの添加物は以下のような役割を果たしています:
参考)https://www.news-postseven.com/archives/20190523_1375687.html/4
イーストフードの役割:
乳化剤の役割:
山崎製パンによる分析結果では、「不使用」を謳う商品でも代替技術により同様の効果を得ていることが明らかにされました。例えば、酵素の使用、ドロマイトの利用、乳製品による代替などの手法が用いられています。
参考)https://note.com/itsuki34/n/n918e421a9d43
フジパンの「不使用」商品には、高度な製造技術が隠されています。山崎製パンの告発により明らかになった代替技術は以下の通りです:
代替技術の具体例:
これらの技術により、添加物表示を避けながら同等の品質を実現しています。ただし、これは「緑の絵の具を使わず、青と黄色を混ぜて緑色を作る」ような手法だと専門家は指摘しています。
特に本仕込シリーズでは、湯種製法と時間をかけた熟成技術により、もっちりとした食感を実現している点も注目に値します。
参考)https://www.fujipan.co.jp/news/000062.html
代替技術を使用した商品の健康への影響について、科学的な観点から検証してみましょう。
代替成分の安全性:
専門家の分析によると、これらの代替技術により製造された商品を食べ続けて健康被害を受けた人は報告されていません。むしろ重要なのは、消費者が科学的根拠のない情報に惑わされず、正しい知識をベースに商品を選ぶことです。
日本食品添加物協会のガイドラインでも、「不使用」表示は「好ましくない例」に抵触する可能性が指摘されており、客観的な情報に基づいた判断が求められます。
実際の栄養価や品質の差は微々たるものであり、味覚や食感の違いも個人の好みの範囲内とする研究結果が多数報告されています。
パン業界全体では、「イーストフード・乳化剤不使用」の強調表示自粛が定着しています。この流れは以下のような変化をもたらしています:
業界の変化:
フジパンも2019年以降、強調表示を外していますが、製品の配合や製法は継続しています。これは消費者のニーズを無視するのではなく、より適切な情報提供方法を模索している結果といえます。
市場では依然として「超熟」がシェア1位を維持しており、消費者は表示よりも実際の味や品質を重視する傾向が見られます。今後は以下の点が重要になると予想されます:
食品表示に関するリテラシー向上のための取り組み
消費者庁食品表示企画課の食品表示基準について
製パン技術の詳細な解説と安全性情報
一般社団法人日本パン工業会の公式情報