

「インフォームドチョイス」のマークがついていれば、どのロットのプロテインも安全とは限りません。
インフォームドチョイス(Informed Choice)は、英国に本社を置くLGC社(Laboratory of Government Chemist)が2007年から運営している、世界最大のアンチドーピング認証プログラムです。
LGC社はドーピング関連の研究を50年以上続け、300本を超える学術論文を発表してきた機関です。そのノウハウを製品検査に応用しているため、信頼性が非常に高い。
認証を受けた製品は、世界アンチドーピング機関(WADA)が定める禁止物質リストに照らし、250種類以上の禁止物質が混入していないことを確認済みの製品です。検査はISO17025という国際規格を取得した施設で実施されるため、分析の精度にも高い信頼が置けます。
さらに重要なのは、認証後も継続的な監視が行われる点です。LGC社は認証製品を毎月1回、市場から無作為に購入して抜き打ち検査を実施しています。つまり認証は「取得すれば終わり」ではなく、継続的に品質を担保する仕組みになっています。
日本国内でも認証取得企業は着実に増加しており、2024年時点で30社・製品認証62製品に達しています。DNS、GronG、WINZONE(日本新薬)、雪印メグミルク、大正製薬(リポビタン)など、幅広いジャンルのメーカーが取得済みです。これは心強い事実ですね。
歯科従事者がプロテインを選ぶ際、この認証の有無を確認することは、患者さんへの適切なアドバイスにも直結します。
インフォームドチョイス認証製品リスト(スポーツ栄養Web):国内で認証取得済みの製品一覧を確認できます
「インフォームドチョイス」と似た名称で「インフォームドスポーツ(Informed Sport)」というプログラムも存在します。どちらも同じLGC社が運営しており、検査の手法・基準・ISO17025認定施設での分析という点はまったく同じです。
両者の違いは検査頻度にあります。これが条件です。
インフォームドチョイスでは、認証後に月1回の無作為抜き打ち検査が行われます。一方のインフォームドスポーツでは、製品が市場に出回る前に全ロット(すべての製造バッチ)を検査するという、より厳格な仕組みをとっています。
つまりインフォームドスポーツ認証製品は、「このパッケージ・このロットは検査済み」という状態で販売されます。バッチ番号を公式サイトで検索すれば、個別の検査結果も確認可能です。
対してインフォームドチョイス認証製品は、「毎月抜き打ちで検査を受けているブランドの製品」という意味合いになります。どのロットも安全とは言い切れませんが、管理体制の高さは十分に保証されています。
どちらを選べばよいかは用途次第です。競技会前や厳密なドーピング管理が必要な場面ではインフォームドスポーツ認証製品、日常的な栄養補給を目的とするならインフォームドチョイス認証製品で問題ありません。
| 項目 | インフォームドチョイス | インフォームドスポーツ |
|---|---|---|
| 運営機関 | 英国LGC社 | |
| 検査水準 | ISO17025認定施設 | |
| 認証後の検査頻度 | 月1回・無作為抜き打ち | 出荷前に全ロット検査 |
| ロット別確認 | 不可 | バッチ番号で確認可能 |
| 適した用途 | 日常的な栄養補給 | 競技会前・厳格管理が必要な場面 |
インフォームドスポーツとインフォームドチョイスの違い(スポーツ栄養Web):両認証の検査頻度と基準の違いを詳しく解説
歯科医師や歯科衛生士は、スポーツ選手の患者さんに対してドーピングを意識した処方・指導を行います。しかし自身がプロテインやサプリメントを摂取する場合のリスクについては、見落としがちな現状があります。
東京都薬剤師会のアンチドーピング委員会が発行した「歯科医師のためのドーピング防止ガイド2021」には、歯科で処方される薬剤ごとのドーピング適否がまとめられています。たとえば局所麻酔薬との併用での局所投与は問題ないフェリプレシンが、単独投与では禁止物質になるケースなど、現場に役立つ情報が盛りだくさんです。
重要なのはサプリメントに関する記載です。「サプリメントは食品であり全成分表示の義務がないため、使用可能かどうかの明確な判断ができない」と明記されています。つまりどんなプロテインでも成分リストだけを見て「安全」とは判断できません。
実際に国内でも、サプリメントに成分表記されていない禁止物質(蛋白同化薬など)が混入していたケースが複数報告されています。海外製サプリメントを摂取していた選手がドーピング違反となった事例も確認されています。
うっかりドーピングを防ぐためには、認証取得済みの製品を選ぶことが最も確実な手段です。インフォームドチョイス認証を取得したプロテインを選べば、第三者機関による継続的な検査が安全性を担保してくれます。
歯科医院でスポーツ選手の患者さんにサプリメントについてアドバイスする機会があれば、インフォームドチョイス認証製品を薦める根拠としてこの情報を活用できます。これは使えそうです。
歯科医師のためのドーピング防止ガイド2021(東京都薬剤師会):歯科処方薬の使用可否リスト・サプリメントの注意点を収録した権威ある資料
インフォームドチョイス認証を取得するためには、メーカーは単純に製品サンプルを送るだけでは不十分です。認証には複数の厳格な審査ステップが設けられています。
まず最初のステップとして、LGC社による製造評価質問票(MAQ:Manufacturing Assessment Questionnaire)の審査があります。これは製造工場の管理体制、原料の仕入れルート、品質管理のプロセスなどを詳細に確認するものです。製造現場そのものが基準を満たしているかどうかを評価します。
次に、3つの製造ロットから合計5つのサンプルを提出し、禁止物質の混入がないかを分析します。この分析をクリアして初めて認証が付与されます。
費用面では、認証製品1〜2品目の場合、1品目あたりの登録費が約26万円、認証後の継続的なブラインドサンプル分析費が月1回あたり約7万3500円、年間認証維持費が約19万2000円とされています。
つまり1製品を認証維持するだけで、年間100万円規模のコストがかかる計算になります。認証マークは、メーカーがそれだけの費用と手間をかけて安全性を担保しているという証拠です。
契約から認証完了までは通常2〜3ヶ月のプロセスとなり、MAQの審査だけで6〜8週間かかることもあります。こうした背景を知ると、認証マークの重みが変わって感じられますね。
認証取得の敷居が高いからこそ、その認証を取得しているメーカーの製品は信頼に値します。歯科従事者が患者さんへのアドバイスや自身の摂取製品を選ぶ際、この事実を基準にすると判断がシンプルになります。
インフォームドチョイス認証の費用詳細(健康産業流通新聞):登録費・維持費・分析費の具体的な金額が記載されています
「インフォームドチョイス」のロゴがパッケージに印刷されているからといって、それが現在有効な認証製品とは限りません。これが重要なポイントです。
認証は継続的なコストと検査をクリアし続けることで維持されます。更新されなければ認証は失効します。パッケージに残ったロゴがそのまま使われ続けるケースがゼロとは言い切れません。
正しい確認手順は一つだけです。公式サイト「choice.wetestyoutrust.com」にアクセスし、製品名またはブランド名で検索します。認証済みであれば製品情報がリストに表示されます。この確認作業は1分もかかりません。
また、インフォームドスポーツ認証製品の場合は、バッチ番号での検索も可能です。手元のプロテインのパッケージにあるバッチ番号を入力すれば、「このロットが検査済みか」を個別に確認できます。競技会前などに厳密な確認が必要な場面では、この手順が特に有効です。
もう一点、見落としやすい点があります。インフォームドチョイスやインフォームドスポーツが「安全」と証明するのは、あくまで禁止物質の混入リスクが低減されているという意味です。アレルギー物質の有無や、個人の健康状態に対する適合性を保証するものではありません。
アスリートの患者さんから「この認証マークがあれば絶対安全ですか?」と聞かれた場合は、「禁止物質混入のリスクを最小化した製品として信頼できる。ただし、公式サイトで有効性を確認する習慣を持つことが重要」と案内するとよいでしょう。
インフォームドチョイス公式FAQ(日本語):認証ロゴの意味と確認方法について詳しく解説されています