

ゲノム編集とは、生物が持つ遺伝情報(ゲノム)の特定の場所を狙って切断し、変異を起こす技術なんです。代表的な技術として「CRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)」があり、狙ったDNA配列を効率よく、正確に切り貼りできる点で革命的とされています。
参考)https://www.rd.ntt/se/media/article/0012.html
生物には切断されたDNAを修復する仕組みがありますが、この修復の際にエラーが発生することがあるんですね。ゲノム編集技術は、この修復ミスを利用して、目的の遺伝子に変異を起こし、生物の性質を変えることができます。
参考)https://agrijournal.jp/renewableenergy/42835/
例えば、毒素を作る遺伝子をゲノム編集で切断すると、修復ミスにより毒素を作らない性質に変わることがあります。このように、その生物が元々持っている遺伝子を編集することで、新しい性質を持たせることができるのです。
参考:ゲノム編集とは?遺伝子組換えとの違いや応用の可能性を解説
遺伝子組み換え技術は、他の生物が持つ有用な遺伝子を取り入れることで、新しい性質を持たせる技術です。従来の育種では困難だった、全く類縁関係のない生物の遺伝子を組み込むことができるのが大きな特徴なんですね。
参考)https://www.pref.kanagawa.jp/sys/eiken/005_databox/0504_jouhou/0601_eiken_news/files/eiken_news218.htm
例えば、害虫に弱いある植物に、別の生物が持つ害虫に強い遺伝子を組み込むことで、害虫に強い性質を持たせることができます。また、ビタミンA欠乏症の改善が期待できるβ-カロテンを多く含む「ゴールデンライス」のように、栄養価を高めた作物も開発されています。
最終的な製品には外来遺伝子が残るため、意図しない変化が生じる可能性への懸念があります。そのため、日本では厚生労働省と消費者庁が管轄し、食品衛生法に基づいて厳格な安全性審査が義務付けられているんです。
参考)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/idenshi/anzen/anzen.html
参考:ゲノム編集と遺伝子組み換えの違いは? メリットを専門家が解説
両者の最も大きな違いは、遺伝子を変える方法にあります。遺伝子組み換えは他の生物の遺伝子を「組み込む」技術であるのに対し、ゲノム編集はその生物が持つ遺伝子を「編集する」技術なんですね。
自然界との関係性も異なります。遺伝子組み換えは自然界では発生しない現象を実現する技術ですが、ゲノム編集は自然界でも起こりうる突然変異を意図的に起こさせる技術と言えます。このため、ゲノム編集で起こる遺伝子の変化は、従来の育種と同程度の変化として扱われているんです。
また、最終製品に外来遺伝子が残るかどうかも重要な違いです。遺伝子組み換えでは外来遺伝子が残りますが、ゲノム編集(SDN-1タイプ)では外来遺伝子を含まないため、自然に起きた突然変異と区別することが困難とされています。
参考)https://cbijapan.com/faq/student/412/
| 比較項目 | ゲノム編集 | 遺伝子組み換え |
|---|---|---|
| 技術の方法 | その生物の遺伝子を切断・編集 | 他の生物の遺伝子を組み込む |
| 外来遺伝子 | 最終製品に残らない(SDN-1の場合) | 最終製品に残る |
| 自然界での発生 | 自然界でも起こりうる変異 | 自然界では起こらない現象 |
| 安全性審査 | 届出制(一部は安全性審査) | 安全性審査が義務 |
| 表示義務 | 表示義務なし(任意表示は推奨) | 表示義務あり(一部対象外) |
日本では2019年10月にゲノム編集食品が解禁され、2021年9月からGABA(ギャバ)含有量を高めたトマトの販売が開始されました。その後、肉厚なマダイ、成長が早いトラフグ、2024年9月にはヒラメなど、計4品目が市場流通しています。
参考)https://foodtech-hub.com/foodtech/nextfood/849/
ゲノム編集食品の安全性については、従来の育種と同程度のリスクとして扱われています。外来遺伝子を含まない1~数塩基の変異によるゲノム編集食品は、自然界や従来の育種でも起こりうる変化として、安全性審査ではなく届出制になっているんです。
ただし、懸念点も指摘されています。オフターゲット変異(狙った場所以外が切断される可能性)や、染色体破砕・損傷が起きる可能性、想定外のタンパク質が生成されるリスクなどが報告されているんですね。このため、安全性に問題があるとする専門家の声もあります。
参考)https://www.mix-nuts.ichoice-coop.com/organic/genome-08/
参考:遺伝子組換え食品・ゲノム編集食品 Q&A(国立医薬品食品衛生研究所)
家族の健康を守る主婦の立場として、食品を選ぶ際に知っておきたいポイントがあります。遺伝子組み換え食品には表示義務があり、「遺伝子組換え」「遺伝子組換え不分別」といった表示で判別できます。2023年4月からは、「遺伝子組換えでない」表示は不検出の場合のみ認められるよう厳格化されました。
一方、ゲノム編集食品には表示義務がないため、消費者が選択することが難しいのが現状なんです。ただし、現在流通しているゲノム編集トマト、マダイ、トラフグの開発企業は、任意でゲノム編集食品であることを表示して販売しています。
参考)https://cpri.jp/5385/
食の安全を重視する生協やパルシステムなどでは、ゲノム編集食品の不使用を追求し、表示義務化を求める運動に取り組んでいます。こうした団体を利用することも、ゲノム編集食品を避ける一つの方法と言えるでしょう。
参考)https://www.gmo-iranai.org/?p=3460
日本で流通している遺伝子組み換え食品には、トウモロコシ、大豆、ナタネ、ワタ、テンサイ、ジャガイモ、パパイヤなどがあり、主に油、しょう油、お菓子、家畜の飼料として使われています。購入時には表示をしっかり確認することが大切ですね。
参考:遺伝子組換え食品の安全性に関する審査(厚生労働省)
ゲノム編集と遺伝子組み換えは、どちらも品種改良の新しい技術ですが、その仕組みや規制には大きな違いがあることが分かりました。家族の食卓を預かる立場として、これらの違いを理解し、食品の表示を確認しながら、家族の健康に配慮した食品選びを心がけていきたいものですね。