アシカキに除草剤クリンチャーが効かない本当の理由

アシカキに除草剤クリンチャーが効かない本当の理由

アシカキへの除草剤クリンチャーが効かない理由と正しい防除方法

クリンチャーをまいたのに、あの草だけぜんぜん枯れなかったという経験、あなたにもありませんか。


この記事のポイント
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クリンチャーはアシカキに効かない

クリンチャーEW(シハロホップブチル剤)はノビエやキシュウスズメノヒエには効果的ですが、よく似た見た目のアシカキには効果がありません。草種の正確な判断が防除の第一歩です。

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節の毛で見分けられる

アシカキとキシュウスズメノヒエは茎の節を触ることで区別できます。節に密集した毛があればアシカキ、わずかに毛があればキシュウスズメノヒエです。

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アシカキにはベンゾビシクロン剤が有効

アシカキの防除には、ベンゾビシクロンまたはピラクロニルを含む除草剤が有効です。畦畔管理と組み合わせることで、より高い防除効果が期待できます。


アシカキとは?クリンチャーが効かない水田雑草の正体


アシカキ(学名:Leersia japonica)は、イネ科サヤヌカグサ属の多年生植物です。田んぼの畦畔(あぜ)や水辺に生え、茎が数メートルにも及ぶのが大きな特徴です。節から発根して勢いよく広がり、気づいたときには畦畔から水田内部にまでじわじわと侵入してきます。


葉身(葉っぱの部分)と葉鞘(茎を包む部分)が著しくザラザラしており、素手でつかむと「痛い」と感じるほどです。この「足をかく(ひっかく)」ような感触が名前の由来ともいわれています。ざらつきが強いというのが、見分けの手がかりになります。


アシカキが厄介なのは、除草剤に対する抵抗性が強いことだけではありません。実はアシカキは、イネ白葉枯病細菌の越冬寄主(かんしゅ)となることが農業試験場などの調査で確認されています。つまり、アシカキを放置しておくと、翌年以降に水稲がイネ白葉枯病にかかるリスクが高まるという、二重の意味で危険な雑草なのです。これは見落とされがちな事実ですね。


アシカキは土の中に深く根を張り、稲刈り後でも越冬茎が地中に残ります。寒い冬をやり過ごして春に再び萌芽するため、一度発生すると完全に駆除するのが難しい難防除雑草の一種です。特に関東地方以西の暖かい地域で多く発生し、よく似た外見を持つキシュウスズメノヒエと誤認されやすいことが、防除失敗の大きな原因となっています。





























特徴 アシカキ キシュウスズメノヒエ
茎の節の毛 密集した毛がある 長い毛がわずかにある
葉・葉鞘のザラつき 著しく強い 比較的少ない
茎の伸び方 強い匍匐性(地面を這う) 匍匐性あり
クリンチャーEWの効果 ❌ 効果なし ✅ 効果あり


参考:アシカキの生態と防除情報(病害虫・雑草の情報基地)
https://boujo.net/handbook/ine/ine-477.html


アシカキとキシュウスズメノヒエの見分け方と除草剤選びの重要性

「クリンチャーをかけたのに枯れない」という状況のほとんどは、アシカキをキシュウスズメノヒエと誤認しているケースです。両者はともに畦畔から水田に侵入するイネ科雑草で、地面を這うように茎を伸ばす姿もそっくりです。しかし、有効な除草剤がまったく異なります。ここが防除の最大のポイントです。


見分け方はシンプルです。茎の「節」を指で軽くしごいてみてください。アシカキの節には毛がびっしりと密集していてザラザラと感じます。一方、キシュウスズメノヒエの節にある毛は長いですが数が少なく、スッと滑るように感じます。この感触の違いを確かめることが、基本です。


もう一つの見分けポイントは「全体的なザラつき」です。アシカキは葉身も葉鞘もひどくザラつき、まるでヤスリのような感触があります。葉の裏表を親指と人差し指で挟んでこすると、紙やすりにそっくりな抵抗感があります。これはまがいなく「はがきの感触」とは全然違います。一度触れば忘れないほど鋭いざらつきです。



  • 🌿 節をしごく:ビッシリ密な毛→アシカキ / 毛がわずか→キシュウスズメノヒエ

  • 🌿 葉をこする:ヤスリのようにひどくザラザラ→アシカキの可能性が高い

  • 🌿 茎の色や形:アシカキはより扁平で地面をしっかり這う傾向が強い

  • 🌿 発生場所:どちらも畦畔から侵入するが、アシカキは水田内部への侵入が特に問題


なぜこの判別がこれほど重要かというと、クリンチャーEW(成分:シハロホップブチル)はキシュウスズメノヒエには高い効果を示す一方、アシカキにはほぼ効果がないからです。静岡県の除草剤使用基準書にも「シハロホップブチル剤(クリンチャーEW)はアシカキに効果がない」と明記されています。つまり、草種の判断を間違えると除草剤代が丸ごと無駄になります。


クリンチャーEWは100mL/10aで使用した場合、1本500mLの製品で約5,000円前後の価格帯です。誤った草種判断で散布してしまうと、薬代だけでなく散布の手間も水の泡になってしまいます。薬剤費の節約のためにも、草種の確認が条件です。


参考:三重県農業研究所・成果情報(農林水産省農業技術研究成果)


アシカキに効く除草剤の選び方とベンゾビシクロン剤の使い方

アシカキへの有効な防除には、クリンチャーではなく「ベンゾビシクロン」を含む除草剤を選ぶことが重要です。ベンゾビシクロンはアシカキに白化症状を引き起こす作用があり、農業試験場の研究でその効果が確認されています。さらに「ピラクロニル」との混合剤を使うと、より強力な抑草効果が得られます。


三重県農業研究所の試験では、ベンゾビシクロンとピラクロニルの混合剤を移植後5日頃に処理した場合でも、畦畔から侵入するアシカキの匍匐茎に対して一定の抑草効果が認められています。重要なポイントは、処理のタイミングです。除草剤処理時にアシカキの匍匐茎が水田に侵入していないと効果が下がるため、やや早めの処理が推奨されます。



  • 🧪 ベンゾビシクロン含有剤:アシカキ匍匐茎を白化させて抑草する。単剤でも一定効果あり

  • 🧪 ベンゾビシクロン+ピラクロニル混合剤:単剤よりも強い抑草効果。移植後5~30日以内に処理

  • 🧪 グリホサート剤(ラウンドアップ等):稲刈り後の秋季防除として畦畔全体に散布。越冬株を減らす

  • 🧪 ベンタゾン剤:アシカキに対して一定の抑草効果が確認されている(宮城県の試験結果)


ただし、注意点があります。ベンゾビシクロン含有剤はアシカキに対して「完全な除草」ではなく「抑草」、つまり生育を強く抑制する効果です。完全に枯殺するわけではないので、あくまで水稲用除草剤の補完的な位置づけとして考えましょう。完全防除には畦畔管理との組み合わせが必要です。


また、使用時期を守ることも大切です。ベンゾビシクロンを含む除草剤は製品によって使用可能期間が異なりますが、多くは「移植後30日が最晩限」とされています。この時期を過ぎてしまうと登録外使用になるため、ラベルの確認を忘れずに行ってください。使用時期の確認が条件です。


アシカキ防除の核心は畦畔管理にある独自視点の話

除草剤に頼るだけでは、アシカキとの戦いは長期化します。実は「畦畔の雑草管理」こそが、アシカキ防除の根本対策です。これを知らずに薬剤散布だけを繰り返している方は、毎年同じ苦労をくり返すことになります。


なぜかというと、アシカキの発生源はほぼ100%「畦畔の越冬株」だからです。三重県農業研究所の調査では、水田内部でのアシカキの自発的な発生はほとんど確認されず、発生の主体は畦畔からの匍匐茎(地面を這って伸びる茎)による侵入だということが明らかにされています。つまり水田内だけに除草剤を散布しても、畦畔のアシカキを残しておく限り、翌年もまた侵入してきます。


対策の流れとしては「秋→冬→春の3ステップ」で考えると整理しやすいです。



  • 🍂 秋(稲刈り後):グリホサート系の茎葉処理剤を畦畔に散布。越冬株を大幅に減らす効果がある

  • ❄️ 冬(耕起・代かき時):ていねいな代かきでアシカキ越冬株や切断茎を土中に深く埋め込む。土中で再生できなくなる

  • 🌱 春(移植後):ベンゾビシクロン含有剤を適期(移植後5~30日)に散布。侵入してくる匍匐茎を抑草する


特に「ていねいな代かき」は、費用をかけずに雑草発生を抑える有力な方法です。切断されたアシカキの茎片は湛水(水を張った)状態では活着できないことが確認されています。土の中に埋まってしまえば、再生する心配はほぼありません。代かきを雑にしてしまうと、せっかく刈り取った茎片が水面に浮かんで活着してしまう危険があります。丁寧な代かきが大切ということですね。


畦畔の定期的な刈り取り管理も忘れてはいけません。草丈が伸びる前(30cm以内を目安)に刈り込むことで、アシカキの勢力を弱め、水田への侵入距離を抑えることができます。小まめな刈り取りと薬剤管理の組み合わせが、長期的な防除効率を高めます。


参考:三重県農業研究所・アシカキ侵入と除草剤の成果情報
http://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000396691.pdf


アシカキを除草剤で防除する際の注意点と失敗しないコツ

除草剤を使ってもアシカキが消えない、あるいは翌年また大量発生したという経験には、いくつかの共通した失敗パターンがあります。正しい使い方を守れば、防除の精度は格段に上がります。


まず最も多いのが「草種の誤認によるクリンチャーEWの散布」です。これは前述の通りです。アシカキにクリンチャーは効きません。散布前に節の毛を触って草種を確認する、この1ステップを省かないでください。確認してから散布が原則です。


次に多いのが「散布時期を外してしまうケース」です。ベンゾビシクロン系の除草剤は、移植後30日が最晩限というものが多いです。この時期を過ぎると登録外使用となり、効果も期待できません。カレンダーにあらかじめ散布予定日をメモしておくと安心です。


水田の水管理も効果を左右します。湛水状態で散布する場合は、散布後少なくとも3〜4日間は通常の湛水状態(水深3〜5cm程度)を保つことが必要です。散布直後に大雨で水が流れ出したり、逆に水が極端に少ない状態だと除草効果が下がります。水管理が除草成否のカギです。


また、アシカキの越冬株や切断された茎は、湛水中でも活着する可能性があることも見落としがちです。代かきや耕起を丁寧に行っても、水管理が不良な場合には水田内部で発生することがあります。代かき後は水を適切な深さに保つことが、除草剤効果を高めるうえでも重要です。



  • ✅ 散布前に草種を必ず確認する(節の毛を触る)

  • ✅ アシカキにはクリンチャーEWではなくベンゾビシクロン含有剤を選ぶ

  • ✅ 使用時期(多くは移植後30日以内)を守る

  • ✅ 散布後3〜4日以上は湛水状態(水深3〜5cm)を保つ

  • ✅ 代かきを丁寧に行い切断茎を土中に埋め込む

  • ✅ 秋季に畦畔へグリホサート系除草剤を散布して越冬株を減らす


除草剤の選択ミスと散布時期のズレ、この2点を改善するだけで、アシカキ対策の効率は大きく変わります。これが防除成功の最短ルートです。


農薬登録情報を手軽に確認したい場合は、農林水産省が運営する「農薬登録情報提供システム(FAMIC)」を使うと、成分名や対象草種、使用時期をまとめて確認することができます。ラベルとあわせて活用してみてください。


参考:農薬登録情報提供システム(農薬工業会)
クリンチャーEWの適用表と使用上の注意(グリーンジャパン)




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