

企業所属VTuberが公式に前世をほのめかしたのは、ぺぺちが史上初です。
アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ(愛称:ぺぺち)は、ソニー・ミュージックレーベルズ所属のVTuberです。2023年11月21日にデビューし、パスタ王国の国王という独特の設定で活動しています。身長148センチ、誕生日は7月8日。語尾が「~なのじゃ」という個性的なしゃべり方と、髪の毛がパスタでできているというビジュアルが印象的なキャラクターです。
デビュー当日は渋谷スクランブル交差点の大型ビジョンをジャックし、アドトラックがオリジナル国歌を流しながら街を走り回るという大規模プロモーションが展開されました。新人VTuberとしては異例のスケール感です。
つまり、デビュー初日から「普通の新人ではない」と伝えることが狙いだったわけです。
デビュー直後にはTVアニメ『炎上撲滅!魔法少女アイ子』(CBCテレビ)の主演声優と主題歌アーティストを同時に担当。2024年4月にはデビューからわずか約4か月という異例の早さで3Dお披露目ライブを開催しました。さらに2025年1月には、ホロライブ所属の雪花ラミィとのコラボ曲「ブレイブリーダンス」がTVアニメ主題歌に決定するなど、音楽・映像の両方で実績を積み上げています。
これだけの実績が積めるのは、経験のある声優・配信者であることを前提とした活動プランが組まれているからとも言えます。それが「前世がある」という話題の土台になっているわけです。
Wikipedia:アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノ(VTuber)のプロフィール・ディスコグラフィ・出演作品一覧
「前世」という言葉を最初に目にしたとき、仏教やスピリチュアルな文脈を思い浮かべた方もいるかもしれません。ところが、VTuber界隈で使われる「前世」はまったく違う意味を持っています。
VTuberの「前世」とは、現在のキャラクターとして活動する前に、別の名義で活動していた過去の配信者やVTuberのことを指す俗語です。そのVTuberとしてのキャラクターが「転生」する前の状態、という比喩的な表現です。
この文化が生まれた背景には、VTuberが「中の人(声優・配信者本人)」と「キャラクター」を分けて活動するという特性があります。活動終了したVTuberの声優や配信者が、別のキャラクターとして新たに活動を始めることを「転生した」と表現するのが自然な流れとして定着していったのです。
重要なのが原則です。VTuber界では長らく「中の人はいない」「前世を語るのはタブー」という不文律がファンの間で共有されてきました。特に企業所属のVTuberであれば、前世について公式が触れることはまずありませんでした。それが一般的なスタンスでした。
ところがアーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノのデビューにあたって、所属事務所のソニーミュージックは「元四天王が新しいキャラクターとして生まれ変わった」という内容をプレスリリースに盛り込みました。Webライター・編集者の浅田カズラ氏は、企業所属VTuberが公式に転生前の活動元(前世)をほのめかすのは「おそらく史上初ではないか」とコメントしています。
これは前例がない、という点が大切です。業界の常識を大手企業が自ら壊しにきたという意味で、当時のVTuberファンにとっては非常に驚きのある出来事だったのです。
note:「Vtuberに中の人なんていない」「前世を語るのはタブー」という風潮と、ぺぺちデビューが及ぼした影響についての考察
ぺぺちの前世がミライアカリであると言われる理由は、一つではありません。複数の根拠が重なっているため、多くのファンが「ほぼ確定」と判断しているのです。
まず、声質と笑い声のくせです。ぺぺちの配信を聞いた視聴者の多くが「ミライアカリのまんま」と感じています。通常のしゃべり声はキャラクターとして少し作った声になっていますが、テンションが上がったときの笑い声や、感情が高まったときの声の出し方がミライアカリと非常によく似ていると指摘されています。意識してコントロールしにくい部分であるため、説得力があります。
次に、デビュー日のタイミングです。ぺぺちのデビュー日である11月21日は、ミライアカリの誕生日と同じ日付です。これが偶然である確率は低く、意図的なメッセージが込められていると受け止めるファンが多くいます。
三つ目が、「元四天王」という公式の肩書きです。VTuber四天王(またはその関連人物)は、キズナアイ、電脳少女シロ、ミライアカリ、輝夜月、ねこます(のじゃおじ)の5人です。ぺぺちのデビュー当時(2023年12月時点)、VTuber活動を続けていたのは電脳少女シロのみでした。つまり「元四天王」と名乗れる在野のVTuberとして最も有名かつ転生可能性が高いのは、引退したばかりのミライアカリだったのです。
四つ目は、転生を連想させる演出の数々です。デビュー直後に「転生したら可愛かった」(HoneyWorks feat.可不)の歌ってみた動画を速攻で発表したことも話題になりました。「転生」というキーワードをタイトルに含む曲を最初期に選ぶのは、ファンへのサービスと見て間違いありません。
五つ目は、3Dお披露目ライブの日付です。3月31日に開催された3Dお披露目ライブ。この日はミライアカリが引退した2023年3月31日と同じ日付です。ぺぺち自身もライブの中で「なぜか1年前の3月31日が寂しい気持ちになる日というイメージがあった」「その日をハッピーな日に塗り替えたくて、あえてこの日を選んだ」と語っています。
根拠が5点重なっているわけです。それぞれが単独ではなく複合的に重なることで、前世説の説得力が高まっています。
MoguLive(VR/AR専門メディア):アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノのデビュー発表の詳細と元四天王という肩書きの解説
ぺぺちの前世候補であるミライアカリについて、もう少し詳しく整理しておきましょう。
ミライアカリは2017年10月27日から活動を開始したVTuberです。金髪のサイドテールに蝶の形の青いリボンがトレードマーク。歌ってみた動画や雑談、ゲーム実況、ASMRなど幅広いコンテンツで人気を博し、キズナアイ・電脳少女シロ・輝夜月・ねこますらとともに「VTuber四天王」と呼ばれるようになりました。
YouTubeチャンネルの登録者数は最終的に約70.4万人まで増加しました。活動終了時点での総再生回数は約8300万回に達しています。70万人というのは、A4用紙を70万枚積み上げると高さ約70メートル(20階建てビル相当)になるほどの規模感です。それだけの規模のファンに愛されていたVTuberでした。
ただし、活動の後半は厳しい状況が続いていました。2019年頃からにじさんじ・ホロライブの台頭により、黎明期から活動していたVTuberとの視聴者の移動が起き始めます。引退直前にはチャンネル登録者70万人に対して、一般動画の再生数は1万程度まで落ち込んでいたとも言われています。
2023年3月24日、ミライアカリは「私と運営さんとの間の価値観のズレが原因」として引退を発表。「未来を明るくするための考え方がかみ合わず、模索の日々でしたが、どうしても埋められない溝が日を追うごとに増えていき、気付けば5年が経っていた」とコメントし、同年3月31日の生配信をもって活動を終了しました。
引退からちょうど約7か月後、同年11月21日にぺぺちがデビューしました。この間隔も短すぎず長すぎず、転生に「らしい」タイミングと多くのファンが感じています。
ファミ通:VTuber四天王・ミライアカリが活動終了を発表、引退の理由と経緯についての公式発表内容
前世の話題はVTuberを追いかける上での面白さの一つですが、注意したいポイントもあります。
まず「事実」と「推測」を分けることが大切です。現時点で公式が確認しているのは「元四天王経験者が新たなキャラクターとして活動している」という部分までです。ミライアカリとの同一人物説は、声質やタイミングなど複数の根拠から強く示唆されているものの、公式が名指しで断言しているわけではありません。
情報を見る習慣として、Wikipediaや大手メディアの記事、公式プレスリリースは内容チェックが入っているため信頼性が高い情報源です。一方で、匿名掲示板や出典のないまとめサイトは「面白さ」と引き換えに事実と憶測が混在しやすい傾向があります。
信頼できる情報かどうかを確かめることが原則です。
特に気をつけたいのが「中の人の特定」を目的とした情報の拡散です。本名・住所・顔写真などのリアルな個人情報をSNSで広めることは、本人の生活や仕事に長期的なダメージを与えるリスクがあります。一度拡散された誤情報は修正が非常に難しく、本人を傷つけたまま残り続けることもあります。
ファンとして楽しめる範囲を整理しておきましょう。公式が用意した「元四天王」という設定の範囲で楽しむこと、過去のVTuber名義までを話題にすること、リアルな個人情報には踏み込まないこと、この3点が安心して応援を続けるための目安になります。
VTuber初心者の方にとっては「前世」という文化そのものが新鮮で、「どこまで調べていいのか分からない」と感じることもあるかもしれません。そうした場合は、公式サイトや信頼性の高いニュースサイトの情報をベースに、ぺぺちの現在の活動を楽しむところから入るのが一番おすすめです。