

夜の「ホッホー」はフクロウではなく、実はアオバズクで、神社の木に毎年戻ってきます。
夏の夜、窓を開けると「ホッホー、ホッホー」という声が聞こえてきた経験はありませんか?多くの人が「フクロウが鳴いてる!」と思うのですが、実はその声の正体はアオバズクであることがほとんどです。
フクロウとアオバズク、どちらもフクロウ目フクロウ科に属する近縁種ですが、鳴き声に明確な違いがあります。アオバズクは「ホッホウ ホッホウ」と2声ずつはっきり区切って繰り返し鳴くのが特徴。一方、本物のフクロウはアオバズクよりずっと低い太い声で、「ゴロスケ、ホッホー(五郎助奉公)」と聞きなしされるような、くぐもった独特の声を出します。
音域の違いも大きなポイントです。アオバズクの声はやや高く、よく響きます。住宅地や神社の木から聞こえてくることが多いのも、アオバズクならではです。フクロウはカラスほどの大型の鳥で、大きな樹洞が必要なため、主食がノネズミである点も含め、より山林に近い環境に生息しています。つまり、住宅地の近くで夜に「ホッホー」が聞こえたら、9割以上はアオバズクと思って間違いありません。
✅ ポイントまとめ
| 項目 | アオバズク | フクロウ |
|------|-----------|---------|
| 鳴き声 | ホッホウ ホッホウ(高め・2声ずつ) | ゴロスケ ホッホー(低く太い) |
| 体の大きさ | ハト大(全長約29cm) | カラス大(全長約50cm) |
| 主な生息地 | 神社・公園・住宅地の木 | 山地・深い森の大木 |
| 目の色 | 黄色(鮮やか) | 茶褐色〜黒 |
声の聞き分けは慣れれば意外と簡単です。次の夏の夜、ぜひ耳を澄ませてみてください。
アオバズクの鳴き声を実際に確認したい方には、バードリサーチが公開しているオンラインの鳴き声図鑑が便利です。
さえずり検索(バードリサーチ公式)で実際の鳴き声を音源で確認できます。
アオバズクが日本に滞在するのは、おおよそ4月下旬〜10月ごろの期間だけです。冬は東南アジアで越冬し、青葉が芽吹く春に日本へ帰ってきます。「アオバズク(青葉木菟)」という名前もまさにこの習性から来ていて、青葉が茂り始める季節に渡来することが名前の由来です。渡り鳥なんですね。
では、一日の中でいつ鳴くのかというと、日没後の約1時間と日の出前の約1時間が最も活発とされています(秋田の森林情報サポートセンター調べ)。夕暮れから夜の早い時間帯に「ホッホー」という声が聞こえたら、それがアオバズクの活動ピークです。ちなみに、曇りや小雨の日は早めに活動を始める傾向があるので、梅雨の時季には夕方から鳴き声が聞こえることもあります。
繁殖期は5〜7月ごろが中心で、この時期に最もよく鳴きます。オスが「ホッホウ」と繰り返し鳴くのは、縄張りの主張と求愛のためです。また、ヒナが孵ると「チリリ、チリリ」という虫のような声で鳴くことも。ヒナの声に気づいた方は、すぐ近くに巣があるサインです。
🗓 アオバズクの日本滞在カレンダー(目安)
| 時期 | 状況 |
|------|------|
| 4月下旬〜5月 | 日本に飛来、鳴き声が始まる |
| 5〜7月 | 繁殖期、最もよく鳴く |
| 7月中旬〜8月 | ヒナが巣立ち |
| 9〜10月 | 東南アジアへ渡去 |
まとめると、6〜7月の夜が一番よく鳴く時期です。
アオバズクを「山の奥にいる珍しい鳥」と思っている方が多いですが、実は違います。アオバズクは神社・お寺・都市の公園・街路樹など、人の生活圏のすぐそばにも生息しています。
なぜ神社やお寺なのかというと、これらの場所には樹齢数百年を超える大木が多く、アオバズクが巣に使う「樹洞(じゅどう)」と呼ばれる木の洞が残っているためです。鎮守の森として長年守られてきた社寺林は、アオバズクにとって大切なすみかになっています。東京・青山でも大正時代から昭和にかけて毎年4月下旬に鳴き声が確認されていたという記録もあるほどで、もともと都市部と縁が深い鳥です。
見た目は全長約29cm(はがきの長辺ほど)で、背中は黒褐色、お腹は白地に黒褐色の太い縦斑があります。頭が丸く、顔の虹彩は鮮やかな黄色。昼間は木の枝にじっと止まって目を細めていることが多く、見つけても気づかないほど保護色になじんでいます。
街灯の近くを見上げてみるのもよい方法です。アオバズクは夜、街灯に集まってくる大型昆虫(ガ・セミ・カブトムシなど)を狙います。神社の木の下に昆虫の翅や頭部が落ちていたら、近くにアオバズクがいるサインです。
アオバズクの生息地情報は、サントリーの愛鳥活動のページでも詳しく紹介されています。
アオバズクは完全な夜行性です。昼間はほとんど活動せず、木の枝にじっと止まって目を細めながら過ごします。これが大きなポイントです。夜行性の理由はシンプルで、主食の大型昆虫(カブトムシ・セミ・大型の蛾など)が夜に活発に動くためです。
昼間に鳴き声が聞こえないのは、昼間は眠っているから。ただし完全に無音というわけではなく、繁殖期に巣を守る際や、ヒナが親を呼ぶとき、または外敵が近づいたときには昼間でも声を出すことがあります。これは例外です。
また、アオバズクはフクロウの仲間として有名な「無音飛行」の能力も持っています。翼の羽が特殊な構造になっており、空気を乱すことなく滑空できるため、ほとんど羽音をたてずに飛べます。そのため鳴き声で存在に気づかないと、そこにいるとはわからないほどです。
さらに興味深いのは、アオバズクは「一夫一妻」で繁殖するという点です。オスが巣の近くの枝に止まって見張りをし、メスが樹洞の中で約25日間抱卵します。孵化から4〜5日後になると、メスも巣から出て見張りを交代。つまり、夜に鳴いているオスの「ホッホウ」は、パートナーと家族を守るための声でもあります。
繁殖・生態に関する詳細は大阪市立自然史博物館のページが参考になります。
アオバズクの声は「うるさい」と感じる方もいれば、「神秘的で癒される」と感じる方もいます。実は鳥の鳴き声は科学的にも気分のリフレッシュ効果が認められており、学術誌「Scientific Reports」に掲載された研究では、鳥のさえずりを聞くとうつや不安感が軽減されることが示されています。
夜に「ホッホー」が聞こえたとき、それを「ただの騒音」で終わらせるのはもったいないです。季節は限られています。この鳴き声が聞けるのは毎年5〜10月の間だけで、次の春にまた来てくれるかどうかも確実ではありません。
近所でアオバズクに出会うためのポイントは以下のとおりです。
注意したいのは、巣に近づきすぎないことです。繁殖期の親鳥はとても神経質で、人が巣に近づくと巣を放棄してしまうことさえあります。声を楽しむだけなら十分な距離を保つのがマナーです。
また、野鳥撮影に興味がある方は日本野鳥の会が定めるマナーを守ることが大切です。特に夜行性の鳥へのストロボ使用は悪影響があるとされているため、ライトを直接当てたり、フラッシュを使っての撮影は避けましょう。
野鳥観察のマナーについては、Canonの野鳥写真図鑑のページに詳しく掲載されています。
アオバズクの声が聞けたら、それはとても贅沢な体験です。夏の夜、窓を開けてその声に耳を澄ませてみてください。涼しい風とともに届く「ホッホウ ホッホウ」は、日本の夏の夜を彩る自然からの贈り物です。これは使えそうです。