タッカンマリとサムゲタンの違い
タッカンマリとサムゲタンの基本情報
🍲
タッカンマリ
韓国語で「鶏一羽」という意味。鶏を丸ごと使った韓国式水炊きで、タレにつけて食べるのが特徴です。
🍗
サムゲタン
「参鶏湯」と書き、高麗人参などの薬膳素材を鶏の中に詰めて煮込んだ滋養強壮に効果的な料理です。
🔍
主な違い
具材の入れ方、味付け、食べ方、カロリー、栄養価など様々な点で異なります。
韓国料理の人気メニューであるタッカンマリとサムゲタン。どちらも鶏を丸ごと一羽使った料理として知られていますが、実は調理法や食べ方に大きな違いがあります。この記事では、韓国在住経験のある筆者が両者の違いを詳しく解説していきます。
タッカンマリとサムゲタンの言葉の意味と由来
まず、両料理の名前の意味から見ていきましょう。
**タッカンマリ(닭한마리)**は韓国語で「鶏一羽」という意味です。その名の通り、鶏を丸ごと一羽使った料理を指します。シンプルな名前ながら、韓国の食文化を象徴する料理の一つとなっています。
一方、**サムゲタン(삼계탕)**は「参鶏湯」と漢字で書き、「参」は高麗人参、「鶏」は鶏肉、「湯」はスープを意味します。つまり、高麗人参と鶏肉を煮込んだスープという意味になります。
この名前の違いからも分かるように、サムゲタンは高麗人参を使った薬膳料理としての側面が強いのに対し、タッカンマリはシンプルに鶏の旨味を楽しむ料理という違いがあります。
タッカンマリとサムゲタンの具材と調理法の違い
両料理の最も大きな違いは、具材の入れ方と調理法にあります。
タッカンマリの調理法と具材:
- 鶏を丸ごと一羽(または半羽)を鍋に入れる
- 鶏の中に具材は入れない
- 鍋には長ねぎ、にんにく、じゃがいもなどの野菜を一緒に入れる
- 韓国のもち「トッポギ(トック)」を入れることも多い
- シンプルな味付けで鶏の出汁を楽しむ
サムゲタンの調理法と具材:
- 若鶏を丸ごと一羽使用
- 鶏の腹の中にもち米、高麗人参、ナツメ、栗などを詰める
- 漢方素材をたっぷり使った薬膳料理
- じっくりと煮込んで栄養価の高いスープに仕上げる
タッカンマリは鶏と具材を一緒に鍋で煮込むシンプルな調理法なのに対し、サムゲタンは鶏の中に薬膳素材を詰めて煮込むという手の込んだ調理法を用います。この違いが、両料理の味わいや食べ方にも大きく影響しています。
タッカンマリとサムゲタンの味付けと食べ方の比較
味付けと食べ方の面でも、タッカンマリとサムゲタンには明確な違いがあります。
タッカンマリの味付けと食べ方:
- スープ自体の味付けは薄め
- 「タデギ」と呼ばれる辛いタレにつけて食べる
- タレには醤油、コチュジャン、にんにく、お酢などが入っている
- 自分好みに味を調整しながら食べる楽しみがある
- 食べ終わった後、残ったスープに「ククス」と呼ばれる韓国うどんを入れて楽しむことも
サムゲタンの味付けと食べ方:
- 最初からしっかりと味が付いている
- 鶏肉の部分には塩をつけて食べることもある
- タレをつけずにそのまま食べるのが基本
- 薬膳の風味と鶏の旨味が一体となった味わい
- 一人一人に別々に提供されることが多い
タッカンマリはタレと一緒に味わう楽しさがある一方、サムゲタンはそのままの味わいを楽しむ料理と言えます。また、タッカンマリは友人や家族と鍋を囲んで食べる社交的な料理であるのに対し、サムゲタンは個人で楽しむことが多い料理という違いもあります。
タッカンマリとサムゲタンのカロリーと栄養価の違い
健康面から見ても、両料理には違いがあります。
タッカンマリのカロリーと栄養:
- 比較的カロリーは低め
- 鶏肉のタンパク質が主な栄養源
- 野菜からのビタミンやミネラルも摂取できる
- あっさりとした味わいで胃にもやさしい
サムゲタンのカロリーと栄養:
- もち米が入っているためカロリーは高め(ご飯約3杯分のカロリーとも言われる)
- 高麗人参やナツメなどの漢方素材による薬効が期待できる
- 滋養強壮に効果があるとされる
- 栄養価が非常に高く、夏バテ防止に効果的
サムゲタンは栄養価が高く、特に体力回復や滋養強壮を目的とした料理であるのに対し、タッカンマリはより日常的に楽しめる料理と言えるでしょう。
タッカンマリとサムゲタンの韓国での食文化と季節性
韓国での食文化や季節による食べ方の違いも興味深いポイントです。
韓国でのタッカンマリの位置づけ:
- 年間を通して食べられる料理
- 特に寒い季節に体を温める料理として人気
- 友人や家族と一緒に楽しむ社交的な料理
- 専門店も多く、夜遅くまで営業している店も多い
- 韓国では「チンハルメタッカンマリ」が有名店として知られている
韓国でのサムゲタンの位置づけ:
- 特に夏の「ポンナル(伏日)」に食べる習慣がある
- ポンナルは韓国版の「土用の丑の日」とも言える
- 7月から8月にかけて全部で3日(初伏、中伏、末伏)ある
- 暑い夏を乗り切るためのスタミナ食として重宝されている
- 日本のウナギに相当する夏の風物詩
韓国では「暑さには熱いもので対抗する」という考え方があり、特に暑い夏にはサムゲタンを食べて体力を回復させる習慣があります。一方、タッカンマリはより日常的な料理として、季節を問わず楽しまれています。
タッカンマリとサムゲタンの違いを表で比較すると、以下のようになります。
比較項目 |
タッカンマリ |
サムゲタン |
名前の意味 |
鶏一羽 |
参鶏湯(高麗人参と鶏のスープ) |
高麗人参の使用 |
× |
○ |
もち米 |
× |
○(鶏の中に詰める) |
韓国のもち(トック) |
○ |
× |
食べ方 |
タレや薬味と一緒に |
そのまま(時々塩をつける) |
麺と一緒に |
食べることが多い |
食べない |
ポンナル(伏日)に |
あまり食べない |
よく食べる |
カロリー |
低め |
高め |
具材の入れ方 |
鍋で一緒に煮込む |
鶏肉の中に入れ込む |
料理の提供方法 |
みんなで一緒に食べる |
一人一人別々に提供 |
おうちで楽しむタッカンマリとサムゲタンの簡単レシピ
両方の料理を家庭で簡単に作る方法をご紹介します。本場の味を完全に再現するのは難しいですが、基本的な味わいは家庭でも十分に楽しめます。
簡単タッカンマリの作り方:
材料(2~3人前)
- 鶏肉(もも・むね・手羽など):500~600g
- 長ねぎ:1本
- じゃがいも:1個
- にんにく:3片
- 水:600ml
- 塩・こしょう:少々
タデギ(タレ)の材料
- 醤油:大さじ2
- コチュジャン:大さじ1
- すりおろしにんにく:小さじ1
- 酢:小さじ2
- ごま油:小さじ1
- 刻みねぎ:適量
作り方。
- 鶏肉は一口大に切り、じゃがいもは厚さ1cmの輪切りに、長ねぎは斜め切りにします。
- 鍋に水、塩、こしょう、にんにくを入れて火にかけます。
- 沸騰したら鶏肉、じゃがいも、長ねぎを加えます。
- 再び沸騰したら弱火にして、蓋をして約10分煮込みます。
- タデギの材料を全て混ぜ合わせておきます。
- 具材に火が通ったら完成です。タデギにつけて食べましょう。
- 最後に残ったスープにうどんを入れて、カルグクス(韓国式うどん)として楽しむのもおすすめです。
簡単サムゲタンの作り方:
材料(2人前)
- 若鶏(小さめのもの):1羽(なければ手羽元や鶏もも肉でも代用可)
- もち米:1/2カップ(一晩水に浸しておく)
- 高麗人参:1本(なければ普通の人参でも代用可)
- なつめ:5個
- にんにく:5片
- 生姜:1片
- 長ねぎの青い部分:適量
- 水:1.5リットル
- 塩・こしょう:適量
作り方。
- もち米は一晩水に浸してから水気を切っておきます。
- 鶏はよく洗い、内臓を取り除いて水気を拭き取ります。
- 鶏の腹の中にもち米、高麗人参、なつめ、にんにく、生姜を詰めます。
- 鍋に水を入れ、鶏と長ねぎの青い部分を入れて強火にかけます。
- 沸騰したらアクを取り除き、弱火にして1時間ほど煮込みます。
- 塩・こしょうで味を調えて完成です。
これらのレシピは本場の味を完全に再現するものではありませんが、家庭で手軽に韓国料理の雰囲気を楽しむことができます。特に、タッカンマリは材料も調理法もシンプルなので、初めての方でも挑戦しやすいでしょう。
タッカンマリとサムゲタンを日本で楽しめる専門店情報
日本国内でも本格的なタッカンマリとサムゲタンを楽しめるお店が増えています。特に東京の新大久保や大阪の鶴橋など、韓国料理店が集まるエリアでは多くの専門店を見つけることができます。
東京でおすすめのタッカンマリ・サムゲタン専門店:
- 新大久保「ハンアリ」:本場の味を再現したタッカンマリが人気
- 新大久保「土俗村」:創業40年以上の老舗サムゲタン専門店
- 東新宿「ヨプの王豚塩焼」:タッカンマリとサムゲタン両方を提供
大阪でおすすめのタッカンマリ・サムゲタン専門店:
- 鶴橋「韓国料理 水刺齋」:本格的なサムゲタンが評判
- 心斎橋「タッカンマリ専門店 コッケ」:タッカンマリ専門店
最近では、タッカンマリやサムゲタンの素も市販されているので、家庭でも手軽に本格的な味を楽しむことができます。特に「タッカンマリの素」は、鶏がらスープにニンニクの旨みを加え、ねぎ風味油で風味よく仕上げたものが多く、これを使えば簡単に本格的な味を再現できます。
また、日本では韓国のポンナル(伏日)に合わせて「サムゲタンフェア」を開催する韓国料理店も増えています。日本の土用の丑の日にウナギではなく、サムゲタンを食べて夏バテ防止をする