

食用菊は「花びらを食べる」野菜なので、まずは水洗いしてから、がく(緑の硬い部分)から花びらを外す作業が要になります。新潟ではこの作業を「菊もぎ」と呼ぶ、という地域の言い回しもあり、家庭料理として根付いてきたことが分かります。
ポイントは、がくと中心(芯)は苦味が出やすいので「残し」、周辺の長い花びらをつみ取ることです。ここを丁寧にやるだけで、おひたしの食味が一段上がります。
次に、鍋にたっぷりの湯を沸かし、酢を入れてから花びらをゆでます。これは味付け以前に“色”と“香り”のための下処理で、食用菊らしい見た目を守るための合理的な手順です。
また、花びらはとても軽く、湯に入れると浮いて混ざりにくいので、菜箸で軽く沈めながら全体に火を通すのが現場向きのコツです。
ゆで時間は「短く」が基本で、20〜30秒程度で引き上げるレシピが多く、加熱しすぎると食感が落ちやすい点に注意します。ゆで上がったらザルにあげ、用途によって冷水に取る方法もありますが、シャキシャキを残す狙いで「水に取らず、ザルに広げて冷ます」方法も紹介されています。
どちらを選ぶかは好みですが、初めてなら「短時間ゆで→ザルに広げる」で、食感重視の仕上がりになりやすいです。
・下処理のミスで多い例
✅ がく・芯まで全部ちぎって入れる(苦味が出やすい)
✅ ゆで時間が長い(香りと歯触りが消える)
✅ 水気をしぼらない(味がぼやける)
参考:かきのもとの「菊もぎ」、がく・中心を残す理由、酢を入れる意味(色止め)
新潟市PDF:かきのもとのおひたし(菊もぎ・酢の理由・食文化)
食用菊のおひたしは、「ゆで方」でほぼ決まります。酢を入れる理由は、紫色の色素(アントシアニン)が酸性側で安定し、ゆで上がりが色鮮やかになりやすいからです。新潟市の資料でも、酢で湯を酸性にしてアントシアニン色素を安定させる、と目的がはっきり説明されています。
ゆでるときの実務的な配分は、家庭レベルなら「たっぷりの湯+酢少量」で十分成立します。レシピ例では、花びらを入れて20〜30秒ほどさっとゆで、ザルにあけて冷水で冷ます(水に取る)流れが紹介されています。
一方で、地域資料では“水に取らずザルに広げて冷ます”ことで、シャキシャキ感を残すという方針も示されています。ここは好みで、見た目の発色重視なら冷水、歯触り重視なら広げ冷ましが向きます。
味の設計上、ゆで上がりの水気はしっかり絞ります。水分が残ると、だしやしょうゆの味が薄まり、せっかくの香りが「水っぽさ」に負けやすいからです。
また、花びらは加熱で急激にかさが減るので、最初の量に驚かないことも大事です(初回は「思ったより少ない…」が起きがち)。
・ゆで方チェック表(家庭用)
| チェック項目 | 目安 | 失敗すると… |
|---|---|---|
| 酢を入れる | 少量でOK | 色がくすむ |
| ゆで時間 | 20〜30秒が目安 | 食感が消える |
| 冷ます方法 | 冷水 or ザル広げ | 目的がブレる |
| 絞り | しっかり | 味が決まらない |
おひたしの味付けは、食用菊の「ほのかな苦味」と「香り」を邪魔しない方向が基本です。郷土料理の紹介では、しょうゆとだし汁を合わせた“かけるタイプ”のつゆで食べる作り方が示されており、主張を強くしすぎない味設計になっています。
また、家庭レシピでは酢じょうゆで軽く和える方法もあり、食用菊の香りを“さっぱり系”に寄せたいときに相性が良いです。
味付けのコツは、食用菊そのものに「水分が残っている前提」で調味すると薄くなる点です。だから、下ゆで後に水気をしっかり切ったうえで、
のどちらかを選ぶと組み立てやすくなります。
意外と見落とされがちなのが、「おひたし=しょうゆ味」一択ではないことです。新潟市の資料では、かきのもとを春菊と合わせて“ごま和え”にする展開も紹介されており、同じ下処理を流用して味の方向性を変えられます。
つまり、食用菊は“下処理を共通化して、味付けでバリエーションを作る”のが、日常調理では最も効率が良い野菜です。
・味付けの方向性アイデア(おひたしの範囲で)
🌿 だし+しょうゆ:王道、香りが立つ
🍶 酢じょうゆ:さっぱり、箸休め向き
🥢 ごま和え:コクで苦味を包む
参考:しょうゆ+だしの基本形、食感を残す冷まし方(ザルに広げる)
新潟市PDF:かきのもとのおひたし(つゆ配合・冷まし方・ごま和え)
食用菊は旬の時期にまとまって手に入りやすい一方、毎日続けて食べるには量が多いこともあります。そこで便利なのが「下ゆでしてからの冷凍」で、酢を入れた湯でゆでた食用菊は、水気をしっかり絞って小分けにし、ラップ+保存袋で冷凍する方法が紹介されています。
冷凍の目安としては「1ヵ月程度保存可能」とされる情報もあり、少量ずつ使う副菜には十分な期間です。
冷凍で重要なのは、
の3点です。下処理済みの食用菊が冷凍庫にあると、「あと一品」に強くなります。
使い方は、おひたしとして再登板させるなら、冷蔵庫で自然解凍→軽く絞る→つゆをかける、が扱いやすいです。急ぐ場合は半解凍でほぐし、味付け側を少し濃いめにしてバランスを取ると、薄まりにくくなります。
また、冷凍食用菊は“香りが少し穏やかになる”ことがあるので、だしの香り(かつお節等)を足すと満足度が上がります。
参考:下ゆで→水気を絞る→小分け冷凍、保存期間の目安
ニチレイフーズ:食用菊の冷凍方法(小分け・1ヵ月程度)
検索上位では「花びらの下処理」までで終わりがちですが、家庭料理として面白いのは“捨てる部位の扱い”です。新潟市の資料には、通常は捨ててしまう「がく」の部分を使った佃煮が紹介されていて、ほろ苦い風味がごはんや酒のつまみに合う、とされています。
つまり、食用菊は「花びら=おひたし」「がく=佃煮」のように、同じ食材でも役割を分けるとロスが減り、食文化としての厚みも出ます。
がく佃煮は苦味が強い分、量を食べるというより“薬味・箸休め”として少量を添えるのが現実的です。例えば、食用菊のおひたしの横に、がく佃煮をほんの少し添えると、食感と味のコントラストが生まれて、同じ菊でも飽きにくくなります。
この使い分けは、料理慣れしている人ほど効きます。おひたしを作る日に「がくは別容器へ」だけ決めておくと、自然に一品増やせます。
さらに、食用菊の“色”を生かしたいなら、下ゆで時に酢を忘れないことが重要です。酢を入れ忘れると色がくすみやすく、見た目の満足度が落ちてしまうので、ここはルーティン化する価値があります。
食用菊のおひたしは、栄養やレシピ以前に「色・香り・歯触り」を楽しむ料理なので、工程の意味を理解しておくと再現性が安定します。
参考:がくの佃煮(捨てがちな部位の活用)、酢を入れる理由(色素の安定)
新潟市PDF:かきのもとのがくの佃煮・酢の役割