

同じ除草剤を毎年撒き続けると、収穫量が通常の半分になることがあります。
田んぼに毎年しつこく生えてくる「ホタルイ」は、カヤツリグサ科に属する水田雑草です。正式には「イヌホタルイ」と呼ばれる種類が全国の水田で最もよく見られ、除草剤の適用草種表記では「ホタルイ」にまとめて分類されています。
見た目は細長い円柱形の茎が特徴で、草丈は最大60cmほどに成長します。稲よりも背が高くなることはないものの、水田の中で密生すると稲の生育に深刻な影響を与えます。稲が本来取り込むべき窒素・リン酸などの養分をホタルイが吸い上げてしまうからです。
これは見過ごせない被害です。
シンジェンタジャパンの資料によると、イヌホタルイが非常に密に発生した場合、通常の半分程度しか米がとれなくなってしまうこともあると報告されています。田んぼ全体の反収が半減するということは、家族の収入や食卓に直接影響する問題です。
さらに、ホタルイの小穂はカメムシを誘引してしまうため、斑点米被害の原因にもなります。斑点米が増えると米の等級が落ち、出荷価格が下がるという二重の損失につながります。厳しいところですね。
ホタルイが除草剤に対して特別に手強い理由のひとつは、種子の寿命が土の中で10〜20年にも及ぶことです。一度大量の種子が水田に落ちると、その後毎年地上部を処理し続けたとしても、深い場所で休眠していた種子が数年後に発芽してきます。「去年しっかり除草したのにまた生えてきた」という状況は、まさにこの種子の長寿命が原因です。
加えて、ホタルイは越冬株からも春に萌芽します。越冬株から発生したものは種子由来の株よりも生育が旺盛で、除草剤の効果も出にくい傾向があります。つまり種子と越冬株の両方から繁殖するということですね。
参考:水田雑草「イヌホタルイ」の繁殖の条件と除草剤抵抗性について
「毎年同じ除草剤を使っているのに、今年はなぜかホタルイだけが残って大繁殖してしまった」——そんな経験がある方は、SU抵抗性雑草の問題を疑う必要があります。
SU(スルホニルウレア)系除草剤とは、現在販売されている水稲用一発処理除草剤の多くに主成分として配合されている成分です。幅広い種類の雑草に効果があり、人畜・環境への影響が少ないことから長年にわたって重用されてきました。ところが、このSU系成分を含む除草剤を同じ水田で毎年連続して使い続けることで、ホタルイがSU系成分に対して「抵抗性(耐性)」を獲得するケースが報告されるようになりました。
日本でSU抵抗性雑草が初めて確認されたのは1995年のことで、それ以降、各都道府県で続々と確認事例が増えています。しかも抵抗性は次世代にも遺伝するため、一度発生したほ場では翌年以降もSU剤が効かない状態が続きます。意外ですね。
SU抵抗性ホタルイの厄介な点は、見た目では抵抗性のある個体と普通の個体を区別できないことです。ラベル通りに散布し、水管理や散布量も適切なのにホタルイだけが残ってしまった場合、それはSU抵抗性の可能性が高いといえます。
さらに近年では、SU抵抗性に続いて「ALS阻害剤」に対する抵抗性を獲得したイヌホタルイも確認されています。除草剤への抵抗性獲得は、ホタルイの生存戦略として着実に広がっているのです。
SU抵抗性かどうかを確認したい場合は、都道府県の農業試験場や農業指導機関(農業改良普及センターなど)に相談するのが確実です。各都道府県の農業技術センターが「SU抵抗性雑草の疑いチェック」を公開している場合もあります。SU抵抗性かどうか確認することが最初の一歩です。
参考:ホタルイが除草剤で駆除できない理由を解説!(生活110番)
https://www.seikatsu110.jp/library/garden/gd_mowing/160579/
除草剤の種類だけでなく、散布するタイミングもホタルイの防除成否を大きく左右します。これを知らずに「説明書通りに撒いたのに効かなかった」と悩んでいる方は少なくありません。
ホタルイに対して除草剤が有効な時期は、ホタルイの「葉期(ようき)」で判断します。葉期とはホタルイの葉の枚数による成長段階の数え方で、本葉が1枚伸びた状態を1葉期、2枚で2葉期と数えます。一般的に2葉期までが、ほとんどの除草剤がホタルイに対して有効な期間です。
問題はこの2葉期の草丈がわずか3cm程度しかないことです。はがきの短辺(約10cm)の約3分の1ほどの高さで、水面下に隠れていたり、稲の苗に隠れて見えないことも多いのです。
ノビエ(ヒエ)対応の除草剤を使っているのでホタルイも大丈夫と思っている方は要注意です。農業専門家の間でも指摘されていることですが、「ノビエ2.5葉期まで有効」と表示された除草剤でも、ホタルイに対しては2葉期までと有効葉齢が異なる製品が多くあります。
つまりホタルイは「先に大きくなる」のです。
田植え後10日頃から発芽を始め、20〜30日間にわたって長期間発生し続けるホタルイは、散布が少し遅れるだけで2葉期を超えてしまいます。一発処理除草剤の残効期間は通常15〜25日程度のため、発芽期間の長いホタルイをカバーしきれないケースが多いのです。
また、除草剤は発芽後に茎葉から吸収させるタイプが多く、散布後3日間は入水・かけ流しを控えることが必要です。雨の前後や強風の日に撒くと薬剤が流れてしまい、効果が著しく落ちます。これが基本です。
散布後の水管理を適切に行うことが、除草効果を最大限に発揮する条件です。田んぼの水深を3〜5cm程度に保ち、散布後数日間は水を動かさないようにしましょう。
参考:水稲初期一発除草剤の効果を高めるには(minorasu)
https://minorasu.basf.co.jp/80228
ホタルイの防除で最も重要なのは、1種類の除草剤だけに頼らず、複数の除草剤を組み合わせた「体系処理」を行うことです。この考え方がわかると、なぜ今まで効かなかったかが見えてきます。
体系処理の基本的な流れは次の通りです。
| 段階 | 散布時期 | 目的 | 代表的な製品例 |
|---|---|---|---|
| 初期剤 | 田植え同時〜直後 | ホタルイの発生を事前に抑える | マーシェット1キロ粒剤など |
| 初中期一発処理剤 | 移植後7〜14日 | 広範囲の雑草を一括防除 | イネキングジャンボなど |
| 中・後期剤 | 移植後15日以降 | 取りこぼしたホタルイを追加防除 | バサグラン粒剤、クリンチャーバスMEなど |
バサグラン(ベンタゾン系)は、SU系の一発処理除草剤では効かなかった場合の追加防除として広く使われている後期剤です。有機リン系の全草吸収型ではなく、広葉雑草・カヤツリグサ科雑草に特化した茎葉処理型のため、稲への影響が少ないのが特徴です。ホタルイが生育の進んだ段階でも効果を発揮し、発生盛期から増殖中期の散布が適期とされています。これは使えそうです。
SU抵抗性が疑われるほ場では、初期剤の段階からSU系以外の有効成分を使う必要があります。「プレチラクロール」「ペントキサゾン」「ベンゾビシクロン」などの非SU系成分を含む除草剤を選ぶことがポイントです。
ローテーション(成分の輪番使用)も、抵抗性の発達を防ぐ重要な手段です。同じ成分を3年以上連続して使わず、毎年または2年ごとに有効成分の異なる製品に切り替えましょう。除草剤を選ぶ際はラベルに記載の成分名(一般名)を確認して管理するのが確実です。
除草剤の選択で迷ったときは、お近くのJAや農業資材店に「ほ場の状況とこれまで使ってきた除草剤の成分」を伝えると、適切な製品を提案してもらえます。SU抵抗性が疑われる場合は、都道府県の農業改良普及センターに相談すると専門的な指導が無料で受けられます。
参考:ホタルイの効果的な除草対策(minorasu/BASF)
https://minorasu.basf.co.jp/80792
農薬だけに頼り続けることには限界があります。除草剤ローテーションと組み合わせることで相乗効果を生む「耕種的防除」は、長期的にホタルイの密度を下げるための独自の視点として知っておく価値があります。
耕種的防除の中で最も効果が高いとされるのが、稲刈り後の秋耕・春耕(耕うん)です。稲刈り直後に田んぼを耕うんすることで、地表に残ったホタルイの種子や越冬株の基部を地中深くに埋め込むことができます。種子が深く埋まると休眠状態になって発芽しないため、翌年の発生密度を大幅に減らすことが期待できます。
また、田植え前に「おとり代かき」という手法も効果的です。これは本代かきの前に1〜2週間前倒しで湛水代かきをあえて行い、ホタルイをわざと発芽させた後、本代かきで土中に埋没させて枯殺する方法です。種子を「消費させる」発想で、繰り返すことでほ場内の種子バンクを減らしていきます。
水管理の面では、深水管理(水深5〜7cm程度)を維持することがホタルイの出芽を物理的に抑制します。ホタルイの発芽適水深は地面から1cm以内で、深すぎると酸素不足で発芽が阻害されます。ただし深水管理は稲の生育にも影響するため、初期〜活着期に限定して行うのが一般的です。
これらの耕種的防除は、化学農薬の使用量を減らしたい方にも効果的です。
京都農販日誌(農業資材の専門業者)では、水田の物理性改善と適切な中干し管理を組み合わせた取り組みで、数年後に除草作業が0回になった事例も報告されています。一度試してみる価値はあるでしょう。
| 耕種的防除の手法 | 実施時期 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 秋耕・春耕(耕うん) | 稲刈り後〜春先 | 種子・越冬株を深く埋め込み、翌年の発生を抑制 |
| おとり代かき | 田植え2週間前 | わざと発芽させて本代かきで埋殺す |
| 深水管理 | 田植え後〜活着期 | 水深5〜7cmでホタルイ出芽を物理的に抑制 |
ホタルイの根本的な撲滅には数年単位での取り組みが必要です。「今年の除草剤」だけで完結させようとするのではなく、秋の耕うんを習慣化することが長期的な土台となります。毎年の積み重ねが条件です。
参考:除草剤に頼らない水田雑草対策(井関農機)
https://www.iseki.co.jp/einou/weed-management/
参考:ホタルイ等の水田雑草の防除について(京都農販日誌)
https://kyonou.com/diary/398

珍味 詰め合わせ チーズ カズチー ホタチー エビチー ホッキチー 珍味 おつまみ 箱包装 チーズ カズチ 2袋 / 帆立 ホタチ/海老 エビチ/ほっき ホッキチ 計5袋 箱入 おつまみ ちんみ ギフト プレゼント 魚介類 水産加工品 数の子