

クレジットカードで12回払いを選んでも、医院への入金は翌月に一括で行われます。
「患者さんが12回払いを選んだら、医院への入金も12ヶ月にわたって分かれるのでは?」と思っている方は少なくありません。これは原則として誤りです。
クレジットカードの分割払いとは、患者(カード会員)とカード会社の間の契約です。患者がカード会社に対して月々返済する仕組みであり、歯科医院(加盟店)に対してカード会社が支払う金額は、基本的に翌月または翌々月に一括で入金されます。つまり、患者が何回払いを選んでも、医院のキャッシュフローには原則影響しません。これは覚えておけばOKです。
ただし、入金サイクルは契約しているカード会社や決済代行業者によって異なります。多くの場合、月末締めの翌月15日〜末日払いが一般的ですが、サービスによっては早期入金オプションを利用することも可能です。医院経営の資金繰りを考えるうえで、契約前に入金サイクルを正確に把握しておくことは非常に重要です。
手数料について整理すると、1回払いと2回払いは患者側に手数料がかかりません。3回以上の分割払いになると、実質年率12〜15%程度の手数料が患者側に発生します。たとえば、60万円のインプラント治療を12回払いにした場合、手数料だけで約3〜4万円超が上乗せされる計算になります。医院側の加盟店手数料(1.5〜3%程度)とは別物であり、混同しないよう注意が必要です。
JCB公式:クレジットカードの分割払いとは?手数料や利用方法、メリットを解説
歯科医院にとって、分割払い対応の最大の恩恵は自費診療の成約率向上です。
令和5年実施の第24回医療経済実態調査によると、全国の歯科診療所における自費率は平均21.4%にとどまっています。この数字は、多くの患者が高額治療を「費用面で断念している」現実を示しています。実際、後払い・分割払いを導入したクリニックでは自費比率が40%から60%に改善した事例も報告されており、支払い方法の充実が治療提案の成約率に直結することがわかります。
患者が治療提案を断る理由の多くは、「一括で用意できない」という心理的・経済的ハードルです。これは使えそうです。インプラント1本が30〜50万円、矯正治療が50〜100万円という相場感の中では、分割払い対応があるかどうかで患者の意思決定が大きく変わります。
さらに、分割払い対応は未収金リスクの実質的な排除にもつながります。カード決済が完了した時点で支払いは確定するため、「後で払います」「次回まとめて払います」という口頭約束によるトラブルが起きません。医院側が後日回収に頭を悩ませるコストも、ゼロに近づけることができます。
歯科治療費の後払いを導入して患者満足と売上を両立する方法(Nent)
医院側が負担するのは、加盟店手数料(決済手数料)です。これが原則です。
加盟店手数料の相場は、カードブランドやサービスによって異なります。医療機関向け特別料率として、Visa・Mastercardが約1.45〜1.9%、JCBが1.9%〜という設定をしているサービスもあります。一般の小売店向け(3〜5%程度)と比べて低く設定されているケースが多く、これは歯科業界にとって有利な条件です。
80万円の自費治療を例にとると、加盟店手数料2%の場合は1万6,000円の負担です。現金による未収金リスクや、釣り銭管理・入金業務に要するスタッフの人件費コストと比較すれば、十分に見合うコストと言えるでしょう。また、注意しなければならないのは、加盟店手数料を患者に上乗せ請求することは、加盟店規約上の違反になるという点です。これは必須の知識です。
導入コストについては、初期費用・端末代金・月額料金が発生するサービスもあります。一方で、日本歯科医師会の会員向けに「初期費用・月額費用0円、決済手数料のみ」という特別プランを提供しているサービス(SB Payment Service等)も存在します。コスト試算の際は、単純な手数料率だけでなく、固定費との合計で比較する視点が欠かせません。
SB Payment Service:歯科医院向け決済サービス(日本歯科医師会限定プランあり)
実は、クレジットカードの分割払いとデンタルローンは「競合関係」ではなく「補完関係」にあります。それぞれの特性を正しく理解することが、患者満足度と医院収益を同時に高めるカギです。
まず比較の前提として金利差を見てみましょう。クレジットカードの分割払い手数料は、実質年率12〜15%程度が一般的です。一方、デンタルローン(医療ローン)の金利は年率3〜8.8%程度が相場で、クレジットカードの半分以下になるケースも珍しくありません。厳しいですね。
| 比較項目 | クレジットカード分割 | デンタルローン |
|---|---|---|
| 金利(実質年率) | 12〜15%程度 | 3〜8.8%程度 |
| 最大分割回数 | 24回が多い | 最大120回まで |
| 審査 | カード与信の範囲内 | 別途審査が必要 |
| 手続きの簡便さ | ◎ すぐに利用可能 | △ 申込・審査に時間 |
| 医院へのメリット | 加盟店手数料あり | 加盟店手数料なし(サービスによる) |
クレジットカードは即時性と利便性に優れており、数万〜十数万円程度の治療費に向いています。一方のデンタルローンは、インプラントや矯正などの高額治療で、より月々の負担を抑えたい患者に最適です。医院によっては加盟店手数料ゼロのデンタルローン専用サービス(エポスのデンタルクレジット等)を導入しているケースもあり、コスト面でのメリットがあります。
治療費に応じた使い分けの目安を患者に丁寧に説明できる歯科医従事者は、患者からの信頼度が段違いに高まります。「お支払いはカードでも分割でも」という一言だけでなく、「この金額なら◯回払いで月△円になります」「より長期で払いたい場合はローンもご案内できます」という具体的な提案力が、現代の歯科医院には求められています。
エポスカード:エポスのデンタルクレジット(歯科医院向け・加盟店手数料不要)
一般的な記事ではほとんど触れられていませんが、歯科医院特有の会計構造として「保険診療と自費診療の同一会計処理」の問題があります。意外ですね。
多くの患者は、1回の来院で保険診療(定期健診・虫歯治療など)と自費診療(ホワイトニング・セラミッククラウンなど)の両方を受けることがあります。この場合、保険診療分と自費診療分を同一のレシートやカード決済にまとめることは、保険請求上のルールに抵触するリスクがあります。分けて会計するのが原則です。
保険診療についてはクレジットカード払い自体を「不可」としている医院も多く存在します。これは保険診療の制度上の制限や、医院側の会計処理の煩雑さを避けるための判断です。患者へ事前に「当院では自費診療のみカード・分割払いに対応しています」と案内しておくことで、会計時のトラブルを防ぐことができます。
また、医療費控除の観点も見落としてはなりません。クレジットカードで分割払いをした場合でも、医療費控除は「実際に支払った年度」ではなく「治療を受けた年度」で計上します。ただし分割払いの場合は各回の支払いが実際に行われた年を基準にするなど、細かいルールがあります。患者から質問を受けた際に正確に答えられる準備をしておくと、医院への信頼感がさらに高まります。
決済端末の選定においては、電波が届きにくい診療室でも安定稼働できるよう、Wi-FiのみならずモバイルSIM回線にも対応した端末を選ぶことも実用的な視点です。レセコン(レセプトコンピュータ)との連携機能を持つ決済サービスを活用すれば、会計業務の効率化とミス削減を同時に実現できます。
Square:歯科医院でのキャッシュレス決済・レセコン連携についての解説