
赤ナマコは、その名の通り赤褐色の体色をしており、特に腹部が赤いことが特徴です。外洋に面した岩礁地帯や礫底に生息していることが多く、この環境が赤ナマコの身質に大きく影響しています。岩場に住んでいるため、身が引き締まっており、歯ごたえが強いのが特徴です。
赤ナマコの見分け方としては、ナマコを裏返してみると腹部が赤くなっていることで判別できます。体表面には突起があり、全体的に赤褐色をしています。
赤ナマコは三種類のマナマコの中で最も商品価値が高いとされており、市場では高値で取引されています。これは食感と風味の良さが評価されているためです。特に関西地方では赤ナマコの需要が高く、三重県鳥羽産の赤ナマコが人気を集めています。
食味の特徴としては、柔らかさの中にもしっかりとした歯ごたえがあり、風味が上品でさわやかだと評価されています。刺身や酢の物として食べると、その特徴がよく分かります。
青ナマコは、暗青緑色から黒に近い体色をしており、突起は黄色っぽいのが特徴です。主に内湾の砂地や泥底に生息しており、砂を吸い込んでは微生物を消化して吐き出すという生活をしています。
この生息環境の違いが、青ナマコの身質に影響しており、赤ナマコと比べるとやや柔らかい食感になっています。関東地方では、この柔らかめの食感が好まれ、青ナマコの需要が多いという地域差も見られます。
青ナマコは赤ナマコに次いで市場価値があり、比較的安価で取引されています。しかし、地域によっては青ナマコの方が好まれることもあります。例えば、境港周辺では年配者を中心に柔らかい青ナマコが好まれているようです。
食味については、赤ナマコと比較すると若干柔らかめですが、同様にコリコリとした食感と磯の香りを楽しむことができます。ポン酢や三杯酢で食べると美味しく、特に大根おろしやもみじおろしを添えると相性が良いです。
黒ナマコは、青ナマコの中でも特に黒色に近いものを指すことが多く、明確な分類上の区別があるわけではありません。ただし、沖縄以南には標準和名で「クロナマコ」という別種も存在するため、混同しないよう注意が必要です。
黒ナマコも砂泥底に生息しており、生活環境は青ナマコと似ています。しかし、黒ナマコは赤ナマコや青ナマコと比べると身がやや硬めで、生食よりも加工用として利用されることが多いのが特徴です。
特筆すべきは、黒ナマコは日本国内での生食用としての流通はあまり多くなく、その多くが乾燥させて中国に輸出されていることです。中国では「海参(ハイシェン)」と呼ばれ、「黒いダイヤ」とも称される高級食材として珍重されています。
中国料理では、乾燥ナマコを戻して煮込み料理などに使用します。滋養強壮や精力増強に効果があるとされ、漢方としても重宝されてきました。日本では馴染みが薄いかもしれませんが、中国では古くから重要な食材として位置づけられています。
赤ナマコと青ナマコの味や食感の違いについては、一般的に以下のような特徴があります。
赤ナマコは岩礁地帯に生息していることから身が引き締まっており、歯ごたえがしっかりしています。風味も上品でさわやかさがあり、コリコリとした食感が特徴です。一方、青ナマコは砂地に生息しているため、赤ナマコと比べるとやや柔らかめの食感になっています。
しかし、実際に食べ比べてみると、素人にはその違いがわかりにくいという声もあります。同じマナマコという種類であるため、基本的な味わいは似ており、どちらもコリコリとした食感と磯の香りを持っています。
食べ比べた感想としては、何度も繰り返し食べることで、赤ナマコが柔らかく風味の点で一番さわやかで上品に感じられるようになるという意見があります。青ナマコも美味しいですが、黒ナマコは赤ナマコと青ナマコと比較するとやや硬めと感じる人が多いようです。
なお、ナマコの食感は筋肉に与えた刺激の度合いやスライスの厚さによっても変化します。より薄くスライスすることで、食べやすくなり、味わいの違いも感じやすくなります。
ナマコは見た目からは想像しにくいかもしれませんが、実は栄養価が高く、健康に良い食材です。体の90%近くが水分であるにもかかわらず、多くの栄養素を含んでいます。
ナマコに含まれる主な栄養素は以下の通りです。
特に注目すべきは「サポニン」で、これは滋養強壮作用や抗酸化作用、血流改善などに効果的だとされています。このサポニンは漢方である朝鮮人参にも多く含まれている栄養素で、そのためナマコは「海の朝鮮人参」とも呼ばれています。
コラーゲンも豊富に含まれており、これがナマコの独特の歯ごたえの源でもあります。コラーゲンは美肌効果があるとされ、特に女性にとっては嬉しい栄養素です。東南アジアでは美容に良いということでナマコブームが起きており、ナマコゼリーやジュース、ジャムなども登場しているそうです。
赤ナマコと青ナマコの栄養価の違いについては明確なデータはありませんが、どちらも栄養豊富な食材であることに変わりはありません。
ナマコの調理は意外と簡単です。ここでは、生のナマコを使った基本的な下処理と調理法をご紹介します。
【基本の下処理】
【おすすめの食べ方】
赤ナマコと青ナマコでは若干食感が異なりますが、どちらも上記の調理法で美味しく食べることができます。地域によって好みが分かれるようですが、自分の好みに合ったナマコを見つけてみるのも楽しいでしょう。
ナマコの内臓を塩辛にした「コノワタ(このわた)」は、「ウニ」や「カラスミ(ボラの卵巣)」と並ぶ日本三大珍味の一つとして知られています。「コノワタ」という名前は「コ(ナマコ)」の「ワタ(腸)」からきており、かつては徳川幕府にも献上された由緒正しい日本固有の珍味です。
コノワタの作り方は、ナマコから取り出した腸を塩漬けにするというシンプルなものですが、その風味は独特で、磯の香りが強く、人によって好みが分かれます。良く言えば磯の香りが豊かで、悪く言えばかなり生臭いという評価もあります。
赤ナマコのコノワタは特に高級とされ、その風味の良さから珍重されています。青ナマコや黒ナマコの内臓も同様に加工されますが、一般的には赤ナマコのものが最も評価が高いようです。
かつては各家庭でコノワタを作る人もいましたが、現在では専門の業者が製造することがほとんどです。日本酒のおつまみとして少量ずつ楽しむのが一般的で、その独特の風味と旨味が日本酒の味わいを引き立てます。
また、ナマコの卵巣を塩辛にした「海鼠子(このこ)」や、これを干した「干このこ」「くちこ干し」「干口子(ひぐちこ)」も高級珍味として知られています。特に「くちこ干し」は超高級品で、酒の肴として最高の一品とされています。
ナマコは一見地味な見た目ですが、実は驚くべき生態と防御機能を持っています。その特異な生態について見ていきましょう。
まず、ナマコは体に刺激を受けると腸を全部お尻から出してしまうという驚くべき特性を持っています。これは「自切(じせつ)」と呼ばれる防御機能の一つで、危険を感じた時に体の一部を自ら切り離す行為です。トカゲの尻尾切りと同様の防御戦略ですが、ナマコの場合は内臓まで出してしまうという徹底ぶりです。
驚くべきことに、この状態から1〜3ヶ月程度で内臓は再生するとされています。さらに、ナマコを横に真っ二つに切って自然界に戻すと、やがて二匹のナマコとして再生することもあるそうです。まるでファンタジー作品に登場する再生能力を持つモンスターのようですね。
また、「ニセナマコ」と呼ばれる種類は「キュビエ器官」という特殊な器官を持っており、触ると白い粘液糸を出します。この粘液は手につくとなかなか取れず、魚などの天敵に対しては動きを止める効果があるとされています。さらにニセナマコには毒があり、食用には適しません。
マナマコ(赤ナマコ・青ナマコ・黒ナマコ)にはキュビエ器官はありませんが、その強い生命力は古くから滋養強壮に良いとされ、特に中国では精力剤として珍重されてきました。
ナマコは水温が16℃以上になると、冬眠ならぬ「夏眠」に入るという特徴もあります。秋も深まり水温が下がると目覚め、活動を始めます。そのため、ナマコの旬は冬となり、「冬至ナマコ」という言われ方もします。
このような驚くべき生態を持つナマコは、見た目からは想像できない不思議な生き物なのです。
ナマコの旬は冬で、「冬至ナマコ」とも呼ばれています。これはナマコの生態と深く関わっています。ナマコは冷たい海を好み、水温が16℃以上になると「夏眠」と呼ばれる休眠状態に入ります。秋が深まり水温が下がると目覚め、活動を始めるため、冬が漁期となります。
地域によって漁期の開始時期は異なりますが、一般的には11月から12月頃に解禁されることが多いようです。この時期になると市場にナマコが並び始め、年末年始の料理に欠かせない食材として重宝されます。
興味深いのは、ナマコは通年漁獲が可能であるにもかかわらず、需要は冬のみという